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百年前のパンデミックと比べてみた(2020年06月末時点)

 2020年7月になった。新型コロナは、終息の目途がまだ見えない。
 四国の実家にいる祖父は1920年8月の生まれで、来月には親類一同で百歳の誕生日会をするはずだったのだけれど、このご時世ということでキャンセルになってしまった。祖父の従軍記録など調べてまとめていたのだけれど、当面は発表できる場がなさそうである。

 祖父が生まれたころにも、「インフルエンザ・パンデミー」は世界を席巻していた。いわゆるスペイン風邪だ。当時六千万人ほどの人口だった日本で約四十万人が、この原因不明の難病で命を失った。当時、ウイルスは不可知の病原体だったようだ。
 現代のイタリアは、百年前の日本と同じくらいの人口らしい。欧州でいちはやく今回の流行を受けたイタリアの死者数と、スペイン風邪に襲われていた当時の日本の死者数とは、同じ尺度で比較することができるのでないかと思い立ってから、自分用のまとめもかねて、毎月グラフを更新してみている。

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 先日NHKで、イタリアで最初にCOVID-19の被害を受けたベルガモという町のドキュメンタリーをやっていた。人工呼吸器を老人から外して壮年の患者に付け替えた・年配で持病がある患者ほど救急隊は病院へ運ばず在宅治療を勧めた・助かるものを助けるという基準を作った医療担当者は非難の声に対し「現実を見ろ」と強いまなざしで返していた・新型コロナ以外の救急処置が間に合わず命を落としたものも多かった・等々、阿鼻叫喚とはこのことかと思われた。
 百年前の日本は、それよりも悪い状態であったらしいことが、記録のうえの数字からは見て取れる。

 日本のスペイン風邪は大きく二回の流行があり、二回目のほうが病状は苛烈で、一回目の流行で被害のなかった地域が二回目の流行の餌食になっていったという。先に流行を受けていたほうが、免疫ができていたのだろう。
 イタリアの新型コロナは現在、落ち着きを見せているようには見えるけれど、それでも6月の1ヶ月だけで1,000名以上が命を落としているのは、普通の状態ではない。現在の流行の中心は南北アメリカ大陸で、1日平均で3,000名弱の死者を数える。日本も死者数は桁違いに少ないけれど、それでもまだ怖くて誕生日会を開くことさえできない有様である。新型コロナに第二波が来るとしたら、第一波をしのいだ日本のほうが危険ということだって、あり得る。

 百一歳の誕生日会には、じいちゃんにこの孫の顔を見せられると、よいのだけれど。