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参考文献:かずまき音楽理論夜話

クラシック音楽の楽典に関する文献

『究極の楽典――最高の知識を得るために』青島広志、全音楽譜出版社、2009

※私が入手したのは上記の版ですが、現在、下記の新装版が出ているようです。

本書は、数ある楽典の本の中でも、最も「生きた日本語」「血の通った日本語」「人間臭い日本語」で書かれており、かつ専門書としての水準も保っている、優れた書物であると思います。楽典というと、どうしても「小難しくて分かりにくい、取っ付きにくい」という人が多いと思いますが、本書は、きちんと考えながら読めば、「なぜそうなるのか」が納得できるようになっており、読者の知的好奇心を満たす良書です。

本マガジンにおいて、クラシック音楽の楽典に関して記した内容のほとんどは、私が本書で勉強したことに基づいています。ただし、私自身、クラシックピアノの習い事を4歳から18歳までしていましたので、そこで学んだ内容も自然と含まれているかと思います。なお、本書は青島広志先生の著作ですが、唯一、音律に関する節だけは、数学的な正確性を期すために安藤應次郎先生が執筆しています。

『音楽理論入門』東川清一、ちくま学芸文庫、2017

本書は、音楽学者でありJ.S.バッハ研究の大家でもある東川清一氏が、いわゆる通り一遍の、ともすれば表面的な知識の羅列となりがちなクラシック音楽の「楽典」というものに対し、彼なりの視点から独自のアプローチを試みたものです。読者がなるべく歴史的、体系的で、かつ一歩進んだ深い理解が得られるように、との配慮に溢れています。1994年に音楽之友社より刊行された同氏の『だれも知らなかった楽典のはなし』が元となっており、文庫化にあたり改題・改訂されました。

お話好きなおじさん(失礼!)が熱心に語りかけるような語り口で、好き嫌いは分かれるかも知れませんが、極めて充実した内容です。前掲の青島氏の本とは異なるアプローチで書かれていますので、「楽典」について立体的な理解をするための二冊目としてお薦めです。

本マガジンの関心事項からすると、第4章「いわゆる『調号』の理論、あるいは均記号と均」および第6章「旋法と調」の内容が特に重要です。本マガジンでも彼が提唱する「均」の概念を大いに活用しています(2.5節以降参照)。

なお、いわゆる「階名」「移動ド」について、東川氏は明らかに賛成派で、ドレミファソラシというイタリア音名を階名ではなく音名として用いることには原則として反対の立場です。この点は「移動ド」に対して比較的冷淡な青島氏とは立場が異なっています。また、東川氏が本書で音名として用いているのは主に日本式(ハニホヘトイロ)のため、慣れない人は若干そこで苦労するかもしれません。

ジャズ理論に関する文献

『ジャズ・スタンダード・セオリー~名曲から学ぶジャズ理論の全て』納浩一、リットーミュージック、2014

新たなるジャズスタンダード本、いわゆる「黒本」を世に送り出したベーシスト、納浩一さんが手がけたジャズ理論書。書名のとおり、ジャズのスタンダード曲のアナリーゼを通してジャズ理論を学べる構成になっています。記述が少し理屈っぽ過ぎる印象はありますが、良書だと思います。

なお、第5版までにはかなり誤植があるようですので、古本屋等で入手される場合はご注意を。

『実践! 本気で学べる究極のジャズ理論』彦坂恭人、自由現代社、2015

手ごろな値段で本格的なジャズ理論が体系的に学べる良書です。かなり専門的な内容なので、初心者には厳しいかと思いますが、非常に密度の高い知識を得ることができます。特に、ジャズ的なアドリブ能力を高めたい人には、第3章3節の「ジャズ・フレーズの作り方」が非常に参考になるかと思います。

『ザ・ジャズ・セオリー』Mark Levine、愛川篤人訳、ATN、2004(原書:"The Jazz Theory Book", Mark Levine, Sher Music, 1995)

押しも押されもせぬジャズ理論書の金字塔と言ってよいでしょう。値段は張りますが、挑戦する価値はあります。優れたジャズ演奏家たちの実際の演奏を譜例にしたものも多数収録されており、ジャズ的な演奏をしたい人やジャズ的な作曲をしたい人には非常に参考になります。

ただし、本書の圧倒的なボリュームに負けて消化不良を起こさないようにしましょう。いきなり全ページを理解しようなどと背伸びをしないことです。本書の一部だけでもきちんと理解し、徐々に体得していくことのほうが大切です。

本書は明らかにジャズ理論の中級者以上向けであり、基礎体力がない状態でいきなり本書に臨むのは得策ではないでしょう。また、「サブドミナント」という言葉がほとんど出てこない、トライトーンを減5度や増4度でなく「4.5度」と呼んでいる、など、一定の偏りのある記述になっていますので、他の理論書も合わせて読んだ方がいいでしょう。

『ピアニストのためのスケール&ソロ・フレーズBOOK』堀越明宏、リットーミュージック、2011

ジャズでよく使われるスケールを中心に、かなり珍しいスケールも網羅しており、スケール辞典として非常に有用です。このnoteマガジンでスケールの話をするときは、本書の分類法や考え方を大いに参考にさせていただきました。

一か所、基本的な誤植がありますので、お手に取られる方は十分注意してください。

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