SHIMA-NAGASHIプログラムとは
早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授・入山 章栄(いりやま あきえ)さんに監修頂いている研修プログラムです。その名の通り、島根県隠岐諸島にある人口約2,300人の離島・海士町(あまちょう)への"島流し"を通じて、「そもそも自分は何がしたいのか?」を言語化することで自分のビジョンを腹落ちさせることが目的です。
なぜ、自分のビジョンを腹落ちさせる必要があるのか?
続けて入山さんは、自分のビジョンを持つ必要性を次のように語ります。
では、自分のビジョンが腹落ちするためにはどのようなプロセスを踏むといいのか?本プログラムでは3つの理論を土台にしています。
この3つの理論のサイクルを回すことが、自分・会社のビジョンを言語化するプロセスとなります。ポイントを整理すると以下となります。
このサイクルが回るイメージとしては、①越境を通じた知の探索をすることで暗黙知が広がり、②暗黙知を形式知化するために内省をし、③形式知化=言語化することでビジョンが腹落ちする。という形です。
SHIMA-NAGASHIプログラムでは、離島・海士町という舞台に「越境」し、「内省」をして「腹落ち」するというプロセスを踏んでいきます。入山さんからも海士町を舞台にする意義・意味を下記のように解説頂いています。
SHIMA-NAGASHIプログラム for CHROレポート
2022年4月、このSHIMA-NAGASHIプログラムを人事責任者であるCHRO向けに2泊3日で実施しました。今回、その報告レポートをお伝えします。
主催は「風と土と」ですが、案内人(海士エバンジェリスト)である入山 章栄さん(早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授)、島田 由香さん(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役 人事総務本部長)、原田 英治さん(英治出版 代表取締役)と共に実施しました。
導入は入山さんの青空教室!
海士町から船で10分の隣の島・西ノ島には国賀海岸という高さ257メートルの断崖絶壁「摩天崖」があります。ユネスコ世界ジオパークにも認定されている隠岐の大自然を感じながら、みんなで傾斜の急な下り坂を歩く!
降りたところで、ホワイトボードを使って入山さんの青空教室!
先ほどお伝えした、自分や会社のビジョンを腹落ちさせるためのプロセスである3つの理論の中でも「SECIモデル」と「センスメイキング理論」の箇所をさらに詳しく解説頂きます。
まずは、「なぜ、ビジョンの腹落ちが必要か?」という点について言及。
続けて、
ここから、「SECIモデル」と「センスメイキング理論」の詳しい解説へ。
参加者も気持ちいい風を感じながら、真剣に聞いています!
ここから、「SECIモデル」と「センスメイキング理論」を繋ぐための、3つのキーワードがあると話は展開されました。
まずは身体知について。
続いて内省について。
最後に対話について。
この「身体知」「内省」「対話」を回すことが、自分とは何か?仕事を通じて本当は何がしたいのか?を腹落ちさせる上で大切で、結果的に「SECIモデル」と「センスメイキング理論」を繋ぐことになるという解説で締めくくりました。…と思いきや、ここからさらに話が展開!
青空教室はみんなの笑顔で締め括られました!
初日のタイムスケジュール
ここからは、各プログラムの詳細というよりは、どんな様子だったのかを写真とみなさんのコメントを中心にご紹介します。
魔天崖の後は、3隻の船に乗り込みいざ釣りへ!
参加者コメント一部抜粋。
ちなみに釣果はイトヨリダイ、チダイ、蓮子鯛などあわせて10尾以上。その日の夜に釣った魚を捌いて美味しく頂きました。
その後に海士町の町長・副町長との対話。町長からは「自分たちが引っ張ってきたから次が育たなかった。次が育つスペースをつくりたい。今は20代が育ってきているので、彼らの成長を後押ししたい」というコメント。
副町長からは「海士町にある資源、文化も含めてどう楽しく続いていくかが大切。危機感だけでは長続きしない。結局、すべてのことは心を一つにすれば不可能は可能になる。真面目にやるのも時には大事だが、ついていけない人がいる。そうすると溝ができて、社会が前向きな良い状態にならない。心が一つになっていれば、次に何かをする時の原動力になる」という話がありました。
参加者コメント一部抜粋。
その後は、一日の越境体験を個人で内省するためにマインドフルネス(瞑想)で振り返り。一日過ごした体験を順番に思い出しながら、呼吸を整え、主に身体知に目を向けながらそれぞれが感じた感覚を言葉にしていきます。
参加者コメント一部抜粋。
内省が終わった後は夕食!島前高校魅力化を推進しているリーダー・大野佳祐さん(Iターン)、島の電気屋を若くして継承し挑戦を続ける社長・波多誠さん(海士町出身)をお招きして対話を楽しみました。
2日目のタイムスケジュール
朝には案内人(海士エバンジェリスト)の一人である原田英治さんと1対1での散歩。原田さんは「親子島留学」という制度を使い、約1年間、海士町滞在経験があります。海士町で感じた記事はこちらをご参照ください。
続いて、2019 年に地元へ U ターンをして海士町役場へ入庁した20代の若手リーダー・青山達哉さんとの対話。青山さんは「教育魅力化プロジェクトがおこなわれている隠岐島前高校の卒業生たちが 地域へU ターンしたくなる島づくり」の実現に向けて、2020 年 9 月に新たに立ち上がった「大人の島留学」事業に従事しています。
青山さんからは、「幼い頃にたくさんの移住者が家に遊びに来ていたが、数年もすると島を出ていく人が多いことに寂しさを感じていた。島の人口を増やすためにはUターンも大事だが、元々人口が少ないので人数に限りがある。ではどうするか。定住を求めるだけではなく、一時滞在者を増やせば良いと思った。そのためには、一時滞在する理由が必要。東京は学校や職場が一時滞在する理由となっているが地方にはそれがない」という話が。
続けて、「3ヵ月~1年、一時滞在できる大人の島留学という制度を作った。この制度で来島する理由をつくり、常に若者がいる状態を作り続けることが大事だと思っている。また、それだけではなく島の受け入れ態勢が変わってくることも併せて大切」と率直な想いを語りました。
青山さんはこういった想いを持ち、「大人の島留学」を2022年度は合計200名集める取り組みをしています。そして、ちょうどこの日、大人の島留学生60名が来島し、受け入れ準備をしていました。
参加者コメント一部抜粋。
その後、島の南に位置する崎地区へ移動。桜が綺麗な旧崎小学校に到着。地元の人たちがお出迎え。
さて、何をするかと言うと…綱引き!
綱引きは海士町の各地区対抗で盛り上がる一大イベント!海士町の熱量や活気の源でもある行事で、今の町長・副町長が20年前に立ち上げました。
海士町で5連覇中の崎地区チームに圧倒的大差で負けながらも、本気の綱引きでの身体知は言葉にできないほどのインパクトがありみんな大興奮!
島田由香さんからは、
これを受けて入山さんからは、
綱引き後は、みんなでお昼を食べながら、どういう想いで綱引きをやっているのか、綱引きにはどのような意味があるのかをワイワイと対話。
最後は、綱引きポーズで集合写真をとってお見送り頂きました。
興奮冷めやらないまま、次に向かったのは「隠岐國学習センター」。海士町を一躍有名にした、隠岐島前高校(※)の生徒の実に7割以上が通う公立塾で、一人ひとりの進度に合わせたカリキュラムを組む、現代の寺子屋のような場所です。
※隠岐島前高校は統廃合寸前という危機的状況から、今や日本全国、また世界各国から生徒を集めるようになった高校
お話を聞かせてくれたのは島前高校卒業生で現役大学生・山下弥桜(やました みお)さんと、現役高校2年生・諸泉実(もろいずみ みのり)さんです。
事前に打ち合わせをしている中で、2人から出てきた言葉は「私たちの話は少しにして、むしろCHROのみなさんに聞きたい問いを出しながら対話を深めたい」という要望が。当日は「働くってどういうことですか?」という問いを切り口に対話を深めました。
参加者コメント一部抜粋。
海外では経営トップが20代のメンターをつけて学ぶことも少なくないという話も聞きながら、「隠岐國学習センター」を出発しました。
内省と対話をするために、図書館に向かう予定だったが、「天気がいいからここでしよう!」と急遽予定を変更して海辺でマインドフルネス。みなさんの主体性を大事にするので偶発性も大歓迎!昨日の自分ではなくて、今日の自分だから感じたことををそれぞれ振り返り。
参加者コメント一部抜粋。
その後、自由時間をとって一日の締めくくりは島唯一のイタリアンレストラン”Radice”(ラディーチェ)へ。島前高校のV字回復をずっと支え続けていた濱板健一さん、綱引きを行った崎地区のリーダー・楠見星彦さん、記憶に残る学校給食をつくっている海士町給食センター栄養士・小田川啓子さんをお招きして美味しいゴハンを食べながら対話を重ねました。
3日目(最終日)のタイムスケジュール
いよいよ最終日!まずは、歩きながらマインドフルネスをする"マインドフルウォーク"。いつもは無意識で行っている"歩く"という動作を、ものすごく意識して一歩一歩を感じながら歩きます。
例えば、最初に出す足は右足か左足か?踵から地面につくのか別の場所か?最後に離れるのは親指か小指か?などを意識します。歩くのに慣れてきたら、一歩一歩を時系列になぞらえてこの二日間を思い出していきます。
その後、この2泊3日でそれぞれが感じたことをシェア!
参加者コメント一部抜粋①。
参加者コメント一部抜粋②。
参加者コメント一部抜粋③。
みなさんから出る心と声がまっすぐ繋がっている言葉が、とてもしなやかで力強く、あたたかい空気に包まれました。
最後、この3日間を振り返って入山さんからコメント。
最後、みんなで集合写真を撮って無事に終了しました。ありがとうございました!
<海士町の紹介動画はこちら>