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SHIMA-NAGASHIプログラム for CHRO

SHIMA-NAGASHIプログラムとは

早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授・入山 章栄(いりやま あきえ)さんに監修頂いている研修プログラムです。その名の通り、島根県隠岐諸島にある人口約2,300人の離島・海士町(あまちょう)への"島流し"を通じて、「そもそも自分は何がしたいのか?」を言語化することで自分のビジョンを腹落ちさせることが目的です。

なぜ、自分のビジョンを腹落ちさせる必要があるのか?

日本企業の課題は、自分のビジョンと会社のビジョンが腹落ちしていないこと。これからの時代、ジョブ型雇用が増える中で「そもそも自分自身、何がしたいのか?」が問われる。また、人材流動化が加速すると会社のビジョンに魅力がないと人が採用ができない。会社のビジョンの腹落ちは、自分のビジョンの腹落ちがあって初めて起きる。

続けて入山さんは、自分のビジョンを持つ必要性を次のように語ります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むことで、より人でないとできないことが求められる。その最たるものは新規事業やイノベーション。これらは自分のビジョンが起点となって起きること。

では、自分のビジョンが腹落ちするためにはどのようなプロセスを踏むといいのか?本プログラムでは3つの理論を土台にしています。

この3つの理論のサイクルを回すことが、自分・会社のビジョンを言語化するプロセスとなります。ポイントを整理すると以下となります。

このサイクルが回るイメージとしては、①越境を通じた知の探索をすることで暗黙知が広がり、②暗黙知を形式知化するために内省をし、③形式知化=言語化することでビジョンが腹落ちする。という形です。

SHIMA-NAGASHIプログラムでは、離島・海士町という舞台に「越境」し、「内省」をして「腹落ち」するというプロセスを踏んでいきます。入山さんからも海士町を舞台にする意義・意味を下記のように解説頂いています。

企業は忙しすぎてこのサイクルを回しにくく、ビジョンを言語化する暇がない。海士町は、資本主義ではない価値観が色濃くあり越境体験として最高の場所。また、ビジョンを持つ人の密度が高く、会う人会う人が面白い。加えて、何もない離島だからこそ内省が進むため、このサイクルを回す場所として適している。

SHIMA-NAGASHIプログラム for CHROレポート

2022年4月、このSHIMA-NAGASHIプログラムを人事責任者であるCHRO向けに2泊3日で実施しました。今回、その報告レポートをお伝えします。

主催は「風と土と」ですが、案内人(海士エバンジェリスト)である入山 章栄さん(早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授)、島田 由香さん(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役 人事総務本部長)、原田 英治さん(英治出版 代表取締役)と共に実施しました。

導入は入山さんの青空教室!

海士町から船で10分の隣の島・西ノ島には国賀海岸という高さ257メートルの断崖絶壁「摩天崖」があります。ユネスコ世界ジオパークにも認定されている隠岐の大自然を感じながら、みんなで傾斜の急な下り坂を歩く!

降りたところで、ホワイトボードを使って入山さんの青空教室!

先ほどお伝えした、自分や会社のビジョンを腹落ちさせるためのプロセスである3つの理論の中でも「SECIモデル」と「センスメイキング理論」の箇所をさらに詳しく解説頂きます。

まずは、「なぜ、ビジョンの腹落ちが必要か?」という点について言及。

現代は不確実性が高い社会になっている。変化が激しくて、正解がない。それでも腹を括って意思決定をしていく必要がある。しかし、一般的には組織が大きくなってくるとできない。特に日本社会は長い間、終身雇用制だったので平たく言うとチャレンジする人、自分の意思で前に進む人が少ない。

続けて、

だからこそ経営学の観点だと、目の前のことだけじゃなくて、色々と遠くのものをみてチャレンジする"両利きの経営"あるいは"知の探索"が求められる。その時に大事なのは、正解はないけど「自分は何をしたいのか?」「自分は何を大事に思っているか?」が腹落ちしているかどうか。面白いからやる、やりたいからやる、という感じ。自分のやりたいことが腹に落ちてないとチャレンジはできない。

ここから、「SECIモデル」と「センスメイキング理論」の詳しい解説へ。

では、腹落ちするには何が必要か?言葉にすることなんですね。経営理論で言うと「SECIモデル」で、暗黙知と形式知を往復する。人間は圧倒的に暗黙知が多い。つまり、気持ちや感覚の部分です。言葉って実は情報量が大したことなくて、身体で感じていることのほうが圧倒的に豊か。一人ひとりが感じたことを、絵とか言葉で表出化されていくとコミュニケーションがとれる。実は暗黙知間でもコミュニケーションはできます。言葉になっていないけど、お互い感じ合う。これが"共感"です。

自分が大事にしていること、これからやりたいこと、本当に好きなもの、モヤモヤしている感覚を、拙い言葉で言語化する。言語化することが腹落ちにつながり、腹落ちするともっと知の探索ができる。そうすると、暗黙知と形式知がどんどん大きくなっていきます。

参加者も気持ちいい風を感じながら、真剣に聞いています!

ここから、「SECIモデル」と「センスメイキング理論」を繋ぐための、3つのキーワードがあると話は展開されました。

まずは身体知について。

言語化されていない暗黙知って自分の内面、つまり身体にある。なので、身体知。まさに今、魔天崖まで上ったり、国賀海岸まで下りる中で、普通のビルでは感じられない足裏の感覚がありますよね。人間って圧倒的に身体に情報を持っている。この後の釣りもそうだと思いますけど、身体知を改めて感じてみてください。

続いて内省について。

身体知を感じたら、それを内省する。自分は何を感じたとか、自分の心に聞いてみるとか、感じてみることがすごい大事。だから、今回、ぼーっと歩いて考えてもらうだけでいいんですけど、身体で感じたことを内省して、一人になって深く考えてもらう。

最後に対話について。

もう一つ重要なのが対話(ダイアログ)。経営学でも心理学でも、誰かと語ることがすごい重要であることが分かっている。僕はこれをすごい大事にしています。人間ってしゃべらないと自分が何を考えているのか分からない。しゃべって初めて分かる。深く対話をすると、「自分はこういうことが言いたかったんだ」となりますよね。みなさん、だいたいしゃべると思いつくでしょ。しゃべることで、暗黙知が対話を通じて少し外に出る。そうすると相手との共感が進んで暗黙知と形式知がグルグル回る。そう考えると対話はとても重要。

この「身体知」「内省」「対話」を回すことが、自分とは何か?仕事を通じて本当は何がしたいのか?を腹落ちさせる上で大切で、結果的に「SECIモデル」と「センスメイキング理論」を繋ぐことになるという解説で締めくくりました。…と思いきや、ここからさらに話が展開!

このサイクルは実はサウナと一緒ですね。サウナは3段階あり、①まず熱いサウナに入る、②その後水風呂に入り、③外気浴しながら対話する。これを3セットは繰り返す。"整える"という意味でも心のサウナ。これは"サウナ理論"です!

青空教室はみんなの笑顔で締め括られました!

初日のタイムスケジュール

ここからは、各プログラムの詳細というよりは、どんな様子だったのかを写真とみなさんのコメントを中心にご紹介します。

魔天崖の後は、3隻の船に乗り込みいざ釣りへ!

参加者コメント一部抜粋。

・釣りが初体験だったので、「魚がかかったら分かるよ」と言われながらも体感覚がなかった。でも実際に魚がかかると、ビクビクと振動がきて「こういうことか!」と体感覚と共に納得感が湧いた。
・糸を50m下まで垂らした時に、仕掛けが岩にコツコツ当たっているのか、魚がつついているのかを探っていた。そうしたら、手の感覚が糸を伝って50m下まで意識が伸びるような感じになった。

ちなみに釣果はイトヨリダイ、チダイ、蓮子鯛などあわせて10尾以上。その日の夜に釣った魚を捌いて美味しく頂きました。

その後に海士町の町長・副町長との対話。町長からは「自分たちが引っ張ってきたから次が育たなかった。次が育つスペースをつくりたい。今は20代が育ってきているので、彼らの成長を後押ししたい」というコメント。

副町長からは「海士町にある資源、文化も含めてどう楽しく続いていくかが大切。危機感だけでは長続きしない。結局、すべてのことは心を一つにすれば不可能は可能になる。真面目にやるのも時には大事だが、ついていけない人がいる。そうすると溝ができて、社会が前向きな良い状態にならない。心が一つになっていれば、次に何かをする時の原動力になる」という話がありました。

参加者コメント一部抜粋。

・親から子って大体30年ぐらい空く。継承を考える際には、次の世代にどういう出番をつくってクリエイティビティを発揮してもらえるかは重要。
・結果の質からではなく、関係性の質から始めているから上手くいっているのだと思う。組織課題にも全く同じように当てはまる。
・サーバント・リーダーシップを発揮してみなが考えることは重要だが、企業に当てはめてみると、"考えない"のはある意味幸せ。言われたことをただやっていれば生きていける。ここをどうするか。

その後は、一日の越境体験を個人で内省するためにマインドフルネス(瞑想)で振り返り。一日過ごした体験を順番に思い出しながら、呼吸を整え、主に身体知に目を向けながらそれぞれが感じた感覚を言葉にしていきます。

参加者コメント一部抜粋。

・今日、一番印象に残ったのは来る時の船で感じた風とか揺れ。普段、生活の中であまり感じないこと。何か特別な感情が湧いてきたかというとそうではないが、単純に新鮮ですごく楽しいという感情が出ている。「自由」だったことが楽しかったのかもしれない。
・すごく美しい景色とか爽やかな空気とか風とか思い出していたけど、一番フラッシュバックしてきたのは海士町のみなさんの笑顔。何かを成し遂げる時は個人の強烈なパッションで物事は動く。みんなすごいなと。すごく楽しそうだし、町を愛しているんだなと思った。本当に何とかしたいというエネルギーがひしひしと伝わってきた。自然のエネルギーよりも人のエネルギーの強さを感じた。
・船の上で感じた風が東京より寒くて冷たかったけど、気持ちよくて、寒いんだけどここにい続けようと思っていたら、その寒さや冷たさが自分のものになった感覚。マイナスのものではなくて。あと、島に向かう過程がトンネルみたいな、何か扉が開いて変わっていく感じ。最後にお迎えが見えた時に映画のワンシーンみたいに思えた。開いた扉の向こうに誰かがいるような。違う場所に自分は至れり、という納得感があった。

内省が終わった後は夕食!島前高校魅力化を推進しているリーダー・大野佳祐さん(Iターン)、島の電気屋を若くして継承し挑戦を続ける社長・波多誠さん(海士町出身)をお招きして対話を楽しみました。

2日目のタイムスケジュール

朝には案内人(海士エバンジェリスト)の一人である原田英治さんと1対1での散歩。原田さんは「親子島留学」という制度を使い、約1年間、海士町滞在経験があります。海士町で感じた記事はこちらをご参照ください。

続いて、2019 年に地元へ U ターンをして海士町役場へ入庁した20代の若手リーダー・青山達哉さんとの対話。青山さんは「教育魅力化プロジェクトがおこなわれている隠岐島前高校の卒業生たちが 地域へU ターンしたくなる島づくり」の実現に向けて、2020 年 9 月に新たに立ち上がった「大人の島留学」事業に従事しています。

青山さんからは、「幼い頃にたくさんの移住者が家に遊びに来ていたが、数年もすると島を出ていく人が多いことに寂しさを感じていた。島の人口を増やすためにはUターンも大事だが、元々人口が少ないので人数に限りがある。ではどうするか。定住を求めるだけではなく、一時滞在者を増やせば良いと思った。そのためには、一時滞在する理由が必要。東京は学校や職場が一時滞在する理由となっているが地方にはそれがない」という話が。

続けて、「3ヵ月~1年、一時滞在できる大人の島留学という制度を作った。この制度で来島する理由をつくり、常に若者がいる状態を作り続けることが大事だと思っている。また、それだけではなく島の受け入れ態勢が変わってくることも併せて大切」と率直な想いを語りました。

青山さんはこういった想いを持ち、「大人の島留学」を2022年度は合計200名集める取り組みをしています。そして、ちょうどこの日、大人の島留学生60名が来島し、受け入れ準備をしていました。

参加者コメント一部抜粋。

・社会全体を踏まえて、既存の枠ではなく大きなスケールで物事を見ていることに驚いた。何かできることがあれば応援したい。
・行動力もさることながら合理的にストーリーを語れることがすごい。実行するだけではなく、全体像を捉えて動いていることが素晴らしい。
・勝手に地方の若者は情熱はあるけどビジネススキルがないと思い込んでいたが全くの誤解だと分かった。大企業にもこんなに優秀な人材は少ない。

その後、島の南に位置する崎地区へ移動。桜が綺麗な旧崎小学校に到着。地元の人たちがお出迎え。

さて、何をするかと言うと…綱引き!

綱引きは海士町の各地区対抗で盛り上がる一大イベント!海士町の熱量や活気の源でもある行事で、今の町長・副町長が20年前に立ち上げました。

海士町で5連覇中の崎地区チームに圧倒的大差で負けながらも、本気の綱引きでの身体知は言葉にできないほどのインパクトがありみんな大興奮!

島田由香さんからは、

綱引きと企業組織の活性化は繋がるところがすごくいっぱいある。例えば、企業では8人ぐらいいると自分だけがちょっと力を緩めても大丈夫だろうと思うことが普通。でも綱引きでは、一人の心がガクンと折れると、全員にガクンが伝播する。それを身体で感じることが組織の中ではない。

これを受けて入山さんからは、

・学術的にはチームのエネルギーは公共財。公共財にはチームでやる時に手を抜く人が現れるフリーライダー問題がある。例えば、グループワークを4名1組ですると誰かが手を抜くイメージ。ただ、綱引きでは自分がちょっと気を抜いた瞬間に全体がズルズルっていく感覚がある。だから「あー、俺が頑張らなきゃ!」となる。
・崎地区の人に言われてなるほどなと思ったのは、自分がズルズルってなった時に、自分が一番声を出すということ。それは、自分への鼓舞でもあるけど、同時に仲間への鼓舞でもある。自分がズルズルいきそうな時は、他の仲間も心が折れかけてズルズルいきそうな時だからこそ声を出す。
・「チームビルディング(Teambuilding)」よりもっと違う感覚。暫定的には「チームプリング(Teampulling)」。新しい言葉がつくれると思う。

綱引き後は、みんなでお昼を食べながら、どういう想いで綱引きをやっているのか、綱引きにはどのような意味があるのかをワイワイと対話。

最後は、綱引きポーズで集合写真をとってお見送り頂きました。

興奮冷めやらないまま、次に向かったのは「隠岐國学習センター」。海士町を一躍有名にした、隠岐島前高校(※)の生徒の実に7割以上が通う公立塾で、一人ひとりの進度に合わせたカリキュラムを組む、現代の寺子屋のような場所です。
※隠岐島前高校は統廃合寸前という危機的状況から、今や日本全国、また世界各国から生徒を集めるようになった高校

お話を聞かせてくれたのは島前高校卒業生で現役大学生・山下弥桜(やました みお)さんと、現役高校2年生・諸泉実(もろいずみ みのり)さんです。

事前に打ち合わせをしている中で、2人から出てきた言葉は「私たちの話は少しにして、むしろCHROのみなさんに聞きたい問いを出しながら対話を深めたい」という要望が。当日は「働くってどういうことですか?」という問いを切り口に対話を深めました。

参加者コメント一部抜粋。

・今、企業に求められている"問いを立てる力"を彼女たちが持っていることに驚いた。普段から問いをたてることを習慣化しているからこそだと思う。話しているこちらが深く考えさせられる。
・「なぜ働くんですか?」という本質的な問いを自分自身はしていなかった。働くことは当たり前と考えていたから。一般的な高校進学をせず、自ら決断をして、チャレンジをして島前高校に来た彼女の口から出てきた言葉から、自分が大事にしていたことに触れられた素敵な時間だった。

海外では経営トップが20代のメンターをつけて学ぶことも少なくないという話も聞きながら、「隠岐國学習センター」を出発しました。

内省と対話をするために、図書館に向かう予定だったが、「天気がいいからここでしよう!」と急遽予定を変更して海辺でマインドフルネス。みなさんの主体性を大事にするので偶発性も大歓迎!昨日の自分ではなくて、今日の自分だから感じたことををそれぞれ振り返り。

参加者コメント一部抜粋。

・会社の現実的な場から離れていることで、改めて「人事って何だろう」という問いを自分で立てて、考える時間ができた。そして、人事と呼ばれている仕事の無限の可能性を感じた。人が覚醒したり、気づいたり、笑顔になったり、何か達成したり、そういうお手伝いをするのが好きなんだなぁと。
・綱引きは印象に残っている。自分ひとりの力で動かしていないものに、逆に自分が動かされている感覚。何かに似ているなと。何かは分からないけど。あとは、綱引きが終わった後に相手チームとゴハン食べる中で感じたのは安心。なんか安心した。いいものとして自分の中に残った。
・今、目の前にいるイワシの群れが去っていった。と思ったら、まだ最後のイワシの集団が残っている。一番最後の集団はなんか迷っている感じ。大量にいたのにだんだん細々として、最後に遅れた2つの集団が重なった。リーダーは誰なんだろうと?遅れてしんがりになった役割は何かなと。社会構造の中で人口の少ない海士町があることの意味を考えさせられた。

その後、自由時間をとって一日の締めくくりは島唯一のイタリアンレストラン”Radice”(ラディーチェ)へ。島前高校のV字回復をずっと支え続けていた濱板健一さん、綱引きを行った崎地区のリーダー・楠見星彦さん、記憶に残る学校給食をつくっている海士町給食センター栄養士・小田川啓子さんをお招きして美味しいゴハンを食べながら対話を重ねました。

3日目(最終日)のタイムスケジュール

いよいよ最終日!まずは、歩きながらマインドフルネスをする"マインドフルウォーク"。いつもは無意識で行っている"歩く"という動作を、ものすごく意識して一歩一歩を感じながら歩きます。

例えば、最初に出す足は右足か左足か?踵から地面につくのか別の場所か?最後に離れるのは親指か小指か?などを意識します。歩くのに慣れてきたら、一歩一歩を時系列になぞらえてこの二日間を思い出していきます。

その後、この2泊3日でそれぞれが感じたことをシェア!

参加者コメント一部抜粋①。

マインドフルウォークがすごく良かった。これまで歩くということをじっくり感じたことがなかった。歩くことを意識すると、今までは縦にまっすぐ進んでいくイメージを持っていたが、横に動いていく感じ。そして、歩くというのは片足で立っていることの連続。不安定なことをやっているんだなと感じた。片足立ちをずっと続ける、不安定な状態が"歩く"ということだと気づけた。
今、人事中期経営計画を立てているが、何かが空回っている感覚。自分の中には、今の延長線上ではできないという直感があったが、それが何かは分からない。今回のプログラムにそのヒントがあるのではないかと感じて参加した。結果として、想像をはるかに超える気付きと安心、気付けて納得している自分に出会えた。もっともっと、人を信頼して、迷わず安心を手に入れに行ったらいいんだと思えた。

参加者コメント一部抜粋②。

正直に言うと、参加前と今とで参加する目的が変わってきている気がする。みなさんと接したり、自ら問う場をたくさん設けて頂いたおかげで「CHROとは何か?」と考えるようになっていった。
私の価値観を変えた本に『貞観政要』という帝王学の本がある。その中の有名な一説に"三鏡"というのがあって、一つ目の鏡が他人の鏡、二つ目が歴史の鏡、三つ目が本当の鏡。この三つの鏡を君子たるもの大事にしなければならないということを伝える本なんですが、今回のプログラムがまさに三鏡じゃん!と思った。
「他人の鏡」は今まで出会ったことがない他人を知ることで自分を知ることができた。「歴史の鏡」はみなさんが持つ経験談が歴史と言えるので、そこから学べた。「本当の鏡」は、自分が他人からどう見られているのかを自分で確認しなさいと、ということなんですが、これはみなさんがとっている写真から自分の表情や変化を見ることができた。
離れ小島にいたら「自分」は分からない。脚が速いのか遅いのか、身長が低いのか高いのか、他人と交わらない限り自己理解はでき得ない。
今回のプログラムを通じて、CHROは人を気づかせたり、動機づけしたり、覚醒させたりという面もあるが、もう一面はCEOのパートナーであることがすごい大事ということに気づいた。その意味では気配りしたり、さりげなくサポートしたり、常にいつも前向き、しかも謙虚。出しゃばらないことが必要な要素だと思った。

参加者コメント一部抜粋③。

ここ半年から1年ぐらい、自分が望んでない仕事だけど役割上やらなきゃいけないことが増えたことにモヤモヤしていた。実は、今の仕事じゃない仕事をしたい自分がいるんじゃないかと思っていてモヤモヤと。
一方で、山ほど面倒なことがある仕事でも、すごい楽しかったプロジェクトもあった。未来をつくることにワクワクして、自分がいなければ出来なかったと思える仕事で、ものすごい楽しかった。
ふと一人で考えていた時に、忙しくなった環境を言い訳に、自分がやりたいこととか、チャレンジしたいことが出来ていなかったことが問題なんじゃないかと気づいた。自分のアクションの問題。もっと未来に向けて、自分自身がやりたいこと、やりたい仕事にしかけていけばいいじゃないと。
明日から会社をより良く、働く人にとってもより良い会社にしていくというのがやるべきことかなと。綺麗事みたいですけど、真面目にやろうとしてます。

みなさんから出る心と声がまっすぐ繋がっている言葉が、とてもしなやかで力強く、あたたかい空気に包まれました。

最後、この3日間を振り返って入山さんからコメント。

今回、分かったのは「安心」ってすごいキーワードということ。禅でも人間は元々繋がっているという思想がある。本来は木のように根っこで繋がっているんだけど、木の海面が上昇すると繋がっているのが見えなくなって、一人ひとりが個別に見えてしまう。解脱というのは、海面を下げて、根っこで繋がっていることを見せること。これってまさに安心に繋がる。根っこで繋がるのが見えるから安心して自分の全部を出せる。
海士町は、後鳥羽上皇の配流の島という歴史があり、これまで多様で多くのよそ者を受け入れてきた事実がある。だから人を受け入れる風土が根付いていて、どんな人でも受け入れてくれるんですよね。「危機感」からではなく「安心」から自分を出せる環境が海士町らしさなのだと思う。

最後、みんなで集合写真を撮って無事に終了しました。ありがとうございました!

<海士町の紹介動画はこちら>

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