「ロックバンド」というものについて
僕自身、長い間にわたってバンド活動をやってきた人間ではある。
そして、これまでの音楽活動で多くのミュージシャン/表現者に出会ってきたし、僕自身も周りからそう見られている部分もあるだろうし、事実そういう自覚もある。
最近になってまたバンドを新しく始めようとしているのですが、自分がバンドというものをどう捉えているかが、どうも他の多くの人と結構違っているように感じていて、じつは内心ずっと怯えている部分がある。
改めて「ロックバンド」って何だろう。
思えば、僕が初めてMTRで作った曲もロックだった。
最初こそベースを持ってなくてベースレスだったけど、ギターとドラムマシンで方向的には間違いなくロックを思わせる音だった。
構造が簡単で、作曲の入り口としてとっつきやすかった。
僕は17歳から曲を作り始めた。
軽音楽部には入らず帰宅部で、それこそ家で1人で勝手に始めた。
自分の曲を世に聴かせたくて、上京して20歳で初めてバンドを組んだ。
誰にも習わずに独学な自分でさえ曲が作れたのだから、きっと曲なんて誰にでも簡単に作れるんだろうなと思っていた。
なんなら、バンドなんて「自分の曲を発表するための単なる道具」ぐらいに思ってた。
しかし、いろんな人に出会うことで初めて「曲は誰もが作れるものではない」ということを知った。
「純粋にバンドが好きでバンドを組むという人もいる」というのを知った。
もっと細かく言えばミュージシャンと呼ばれる人間でも、部分的なパーツやリフだけなら作れる人、歌詞だけなら作れるって人もいる。
もちろん、全く作れない/思い浮かばないって人もいれば、あえて作らないようにしているって人もいる。それこそ十人十色。千差万別。
バンドもそう。
僕みたいに「自分の曲がやりたくてメンバー集めて組んだ」みたいにしてバンドを始める人は、実際かなり少数派。
肌感覚として、そんなバンドはシーン全体で5%もいないのでは、とさえ感じる。
大多数はサークル等の集まりで始まるか、あるいは友達同士で「俺達でバンド組まね?」と、憧れや勢い/なりゆき/遊びや快楽の延長でバンドを結成し活動している人のほうが圧倒的に多いように感じる。
そして世のミュージシャンと呼ばれる人の多数派は、そうした経験から活動キャリアが始まった人だと思う。
そして僕は、後者のようなバンド活動を経験したことがほとんど無い。
本音を言うと、そうしたバンドの魅力も活動メリットも感覚的には全く理解できない(もちろん、過去の活動に対して「思い出補正」込みの魅力はそれなりに感じてはいるが)。
これは決して冗談でも皮肉でも自慢のニュアンスで言ってるのでもなく、むしろ自分が関わる人達のおそらく多数派であろう「バンド好きのバンドマン」な人を羨ましいと思ってるし、その思想や思考パターンを理解したいとも思っている。
が、できない。
何故なら、バンドやロックについて何もかも知らなかった完全初心者の頃には、これから先の人生でどう足掻いても僕は戻ることができないからだ。
なので、多くの人の音楽に対する感慨を想像することができず、どんな作品を作ってても僕は内心めちゃくちゃ不安だったりする。
そして、多くの人にとって楽しいものであるはずの「バンド活動」。
今まで「メンバー全員で力を合わせて曲を作る」ということが、バンド単位で一度でも出来た事があるだろうか。
それでもって、唯一無二の個性を獲得できた事があっただろうか。
一度として、自分の理想を実現できた事があっただろうか。
自分の中の音楽的理想を追い求める探究の果てに、結局自分一人の試行錯誤で今の自分に辿り着いてしまった。
これはこれで並大抵の探求/鍛錬/努力ではないのかもしれないし、実際まだまだかもしれない。
しかし、たまに人からメチャクチャ褒められたり、メチャクチャ尊敬されたりもする。
それらは決して嬉しくないわけではないが、実感は全くと言っていいほど皆無。
実際、満足も納得もしていない。
自分にはもっと違った人生があったのだろうか。
今となっては知る由もない。
もはや岸も見えないほど、とっくに船は沖に来てしまった。
もはや前に進むしかないんだろうな。
「風録」をバンドにしたい。
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