創作世界設定_魔力球技

概要

運動量が魔力に変換されるボールを、ルールに従って運ぶことで、魔法陣を描いたり、魔物を倒したりする、そんなファンタジーな何か。

魔力球技、略して球技。

魔物が普通に街中に湧いてる世界観。

世界設定

・魔力

 単にエネルギーとも呼ばれる。

 この世界の人類は、潤沢なエネルギーである魔力を使って急速な発展を遂げた。

 世界各地に高エネルギー地帯、通称「魔力場」(または「スポット」)が存在している。現代で確認されている魔力場の場所に関連性はなく、都会から田舎まで、平野から山まで、ありとあらゆる場所に点在している。これは、人間の居住地は必ずしも魔力場がある場所に相関しないことを示している。

 なぜなら高エネルギー地帯にはデメリットもあるからである。その最たるものが、魔物の存在である。

・魔物

 エネルギーが高くなると発生する非生物。自然現象であり、人間に害をなす。

 非生物とはいっても、なんらかの意思があるように振る舞い、その最たるものとして、各々生物に似せた形をとること「擬態」があげられる。

 擬態の理由についてはいまだにはっきりしたことはわかっていないが、近年の研究によると、魔物は古代の生物の死骸で出来ていることがわかった。

 魔物は生物の遺伝子の利用、または外見のトレースで擬態を行っているのではないか、という説が有力である。

 魔力場、スポットと呼ばれる高エネルギー地帯には魔物が湧く。このせいで、魔力場に積極的に居住することが困難になっている。

 人口が少なく御せなかった時代の魔物は巨大化し、各地に伝説として残されている。

 現代は人口の増加と共に魔法学が発展し、伝説に残されているような魔物は見かけなくなった。専ら、薄っすらと輪郭を持っているような魔物や、小動物のような見た目の魔物を見かける。

・魔力球技

 魔法使いと呼ばれる魔法学のエキスパートによって研究され続ける、一般人が魔物を御するための技術。

 出来てすぐは、魔力で球体を生成、それを加速度を付けて魔物にぶつけることで、魔物を倒すものだった。

 しかし球体を作るだけの魔力を注いだ後で加速度を付けられる運動をこなせるのは魔法使いくらいだった。

 もちろん、魔法使いから一般人にボールをパスする考えもあったが、大量の魔物や巨大な魔物を相手にする場合は、魔力球をぶつけるだけでは不十分であり、一般人を危険にさらすわけにはいかない、として、長らく硬直状態が続いていた。

・魔法陣

 魔法陣を描く技術自体は魔法球技が出来るよりもずっと前から存在した。時間と手間を犠牲にして強力な反応が得られる技術として浸透していた。魔力球で魔法陣を描く費用対効果は、この時まだ未知数だった。

 全ての魔法使いが運動が得意というわけではない。渓谷のワイバーンを倒した伝説の魔法使い「東洋の魔女」がいた一方で、普通の魔法使いは魔力球を作るだけで精一杯という現状。これを打開した一人の天才がいた。

 ある日彼は、作った魔力球を地面に落とし、バウンドして地面に残った魔力の残渣を見て、これを利用して魔法陣が描けると踏んだ。

 魔法使い協会の強い後押しもあり、魔法陣を描く技術の研究が熱心に行われた。

 魔力球の中でも、運動エネルギーを魔力に変えられる特殊なボールを用い、複数人が一定の動作でボールを回すことで、魔法陣を描く。

 従来一人の魔法使いが行っていた魔物討伐を、複数人の一般人で兼任できるようにした点。魔法使いの高度な技術を以てしても描くのに手間がかかっていた魔法陣を、運動エネルギーを魔力に変換することで簡単に描けるようにした点。

 この歴史のターニングポイントのおかげで、現在も親しまれ愛される魔力球技が生まれることになる。

球技一覧

・野球

 様々な魔力球技の派生から生まれた、魔力球技の集大成ともいうべき球技。

 魔力板のことをベース、または塁と呼び、球を魔力板に戻す者を野手と呼ぶ。

 魔法陣の描き方には、ラリー型、ゴール型、ドロップ型の三種類があるが、野球はこの三つの内ラリー型とゴール型の複合からなる野球型という独自の手法をとっている。

 ラリー型は、魔力球をプレイヤー間で往復させることで、描いた軌跡で魔法陣を形成する方式。
 ゴール型は、ゴールに魔法使いが監修した魔法陣を描くスイッチが備え付けてあり、ゴールに魔力球を運ぶと、高度な魔法陣が形成される仕組みである。

  • 投手から高速で投げ出された魔力球を打ち返すことでさらに魔力を高めるラリー型

  • 打ち返した打者が魔力板を一定の方向に踏みながら四つの塁を回ることで、それをスイッチにして、魔力球なしで魔法陣を形成する、変則ゴール型

  • 打ち返された球を三つの塁の野手とピッチャー、そしてキャッチャーの間で直線上に投げ合う五点ラリー型

  • 観客席に魔力球が落ちた際に観客席で起動するゴール型の魔法陣。その後打者が四つの塁を踏むことで、こちらでも最大四連の魔法陣を形成する

 特に五点ラリーの描く幾何学的な軌道が美しいとして、魔法使いからの評価が高い。

 西洋ではベースボールと呼ばれる球技であるが、国内では野球と呼ばれている。

 野球の野は野手の野だいう説があるのは、魔力ロスを抑えたい、というもったいない精神の現れだとも。

 毎年夏に復活する甲子園の魔物という強力な魔物を復活前に再封印するために、甲子園球場に集められた高校球児達が封印の魔法陣を描く一か月。

・ボウリング

 根源的で強力でありつつも、間口を広くとった究極の魔力球技。

 術者が魔力球を練り、目標目掛け、投げる。という基本の動きから生まれている。

 まず、人数を問わない。一人から出来る。

 次に、間口が広い。魔力球技の中でも特に学校で教えない球技でありながら、ほとんどの若者が一度は行ったことがある魔力球技である。ボウリング場が、魔力場の中では比較的エネルギーの低い場所に作られており、大勢の子どもと少数の引率でも安全に楽しむことが出来るためだといわれる。

 そして、目標を問わない。魔力球を投げた先で魔法陣の形成をするのも良し、魔物に直接投げ、直接魔物をせん滅するのも良し。

 レーンの上にボールを転がすだけでも一定の効果が得られるので、現代のボウリング場に魔物が湧くことは年に数回しかない。

・バレーボール

 間口が広く、広い世代に親しまれる魔力球技。

 正式には六人で行うとか九人で行うとかあるが、ビーチボールが二人用の球技であることも鑑み、素人がやる分には人数は問わない。

 練った魔力球を複数人で地面に着かないように打ち上げ続けることによって、魔力を増幅させていく。

 現代では専ら魔法陣を描くために行われる。

 ネットの向こうに勢いよく叩き出す行為は、増幅させた魔力で魔物を退治するために使われていたものを、現代風にアレンジしたもの。

 古代行われていた、渓谷のワイバーンを退治する逸話から、バレーボールと呼ばれるという説もある。

・ゴルフ

 大人になってからでも始められる一方で、魔道具と魔法陣を描くエリアが高価になりがちというデメリットがある。

 古くは打ったボールを魔物にぶつけて倒す魔力球技だった。

 現代では、打ちっぱなしとコースの二通りが存在する。打ちっぱなしは、魔物が湧く結界に術者を集めて湧き潰しを行うもの。コースは、遠距離に設置したゴールに魔力球を運ぶことで、ゴールに仕掛けられた魔法陣を描くスイッチを起動するもの。

 打ちっぱなしは一方向に打つので、一人からでも出来るが、コースに関しては魔法陣が山奥にあり、さらには道中魔物と遭遇する危険を含むため、複数人でパーティーを組んでおくことを推奨する。

・サッカー

 魔力球を手以外で蹴ることに限定したことで、野球にも匹敵する魔力を生み出すことに成功した魔力球技。間口が大変広く、発展途上国でも広く行われている。

 大勢で魔力球を回すことで魔力を増幅させ、ゴールで魔法陣を形成させる形式。

 ゴールキーパーは例外的に手で魔力球を扱うことを許可されている。ゴールにやすやすと魔力球を通さないことで、さらに魔力を増幅させる方式。

 かつては魔力球を蹴って魔物を倒していたと思われがちだが、実はサッカー自体の歴史は浅い。

 ちなみに魔力球を蹴って直接魔物を倒すこと自体は、加速度などから考えて、非常に有効な手段とされる。なぜなかったのかというと、疲労が激しいからという理由が考えられる。

・卓球

 小柄な体格の人が多い東洋で盛んな魔力球技。

 小さな台の上を、ネットを挟んで一口サイズのピンポン球を打ち合うことで、魔法陣を形成する。小さな道具と小さなスペースは体格を重視しないため、小柄な人々にも愛される。

 初心者でもラリーを続けやすい特性から、魔法陣の形成に向いている。勢いを付けてボールを返すスマッシュは、近距離の魔物を倒していた技の名残。

 温泉はエネルギーが高く、魔物も湧きやすい。通常、温泉で魔物は浄化され、人に危害のないレベルに落とされるが、まれに浄化されなかったはぐれ魔物が来ることもある。

 温泉旅館に卓球台があるのは、定期的に魔法陣を形成し、はぐれ魔物を退けるためだとされる。

・バスケットボール

 制約を多く課し、強力な魔法陣を形成することに特化した、魔術的な魔力球技。

 魔力球技が発展を始めてすぐの段階で、既にバスケットボールの原型があったとされる。

 魔力球を床に打ち付け続けるという独特の動きは、偶然地面に落ちた魔力球を見て、魔力球技に魔法陣を導入することをひらめいた、一人の天才によるもの。

 魔力球を床に打ち付けることで、魔法陣を点描で描く。

 出来るだけ多く床に魔力球を打ち付けたいので、魔力球を持ったまま二歩以上歩いてはいけない、という制約がある。

 部活動のバスケットボールは、素人目から見て足の速さを追いきれない。