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中古のペンタブ(wacom bamboo)を使い倒す話


#買ってよかったもの

 ずっとずっとペンタブが欲しかったんです。

 ペンタブを買わないまま、芽の生えないマウス絵で、燃え尽きかかった星屑のような状態を十年以上続けた人生でした。

 ずいぶんと長い遠回りをしてきた気がします。でも遠回りも先月で終わり。巨人の星の矯正ギプスやピッコロさんのマントを外したような、すがすがしい気持ち。何と言っても今の私にはペンタブがあるから無敵なのだ。
 だった気がする。

 今はまた停滞気味。でもマウス絵の十倍くらいの速度で描きあがる快感を味わったからには、もはや描き続けるしかあるまい。
 まだ漫画にも手を付けてないから、まだまだやることはある。

 さらに、wacom bamboo使いが陥る諸刃の剣、コピー紙貼りについて言及します。

 最後にはおまけの、ペンタブで出来るゲームレビューを付けています。

ペンタブを購入するまで

  •  ペンタブとは:ペンタブレットと呼ばれるパソコン周辺機器の一つ。パソコンに接続すると、「マウス」として検出される。板の四隅がパソコンの画面の四隅に対応している。付属のペンを隅から隅に動かすと、マウスポインタが瞬時に移動するのが、マウスと異なる点。

  •  ペンタブは、主に絵描きが絵を描くために使われる。ペンという入力方式が絵を描くのに適していることと、内部に機構を仕込むことで、「筆圧感知」という機能が存在していることなどが上げられる。例えば毛筆の置き始めが細くなるのを再現できる。 

 オタクの道を歩む限りは、遅かれ早かれ、ファンアートというイラストの領域に足を踏み入れることになります。その過程でペンタブの名を耳にしないことはありませんし、ペンタブと相対するマウス絵にも出くわすことでしょう。感動する出来栄えの皆さまのマウス絵に、マウスでも絵が描けるんだ! と勇気をもらう一方で、自分が描くマウス絵とネットで目にするペンタブ絵の根本的な出来上がりの差に絶望する日々でした。

  •  マウス絵とは:ペンタブを使わず、マウスで描く絵のこと。ペンツール、曲線ツール、消しゴムツール、塗り重ねを駆使して描き上げるため、半端ではない時間と手間がかかる。マウス絵が上手いということは計り知れない労力を費やしたことになる。

  •  なお、ドット絵もマウス絵に入ると思うが、こちらは上記の手間がかかるツールを使わないため、比較的やさしい。しかし、技術力と型にはまる力が必要。

 美術の成績が低く、絵が上手いと言われたことがないのと、親の前で絵を練習しないせいでペンタブを買ってもらえなかった学生時代の私が、家電量販店で見つけた新品が5000円以上するペンタブは、当時「高い」と思ってしまいました。

 よって、二十代半ばのこの歳になるまで、ペンタブは見たことも触れたこともありませんでした。

 これまではマウスで絵を描き続けていましたが、「描き続ける」と言えるほど毎日描いていたわけではありません。
(パソコンの授業が始まる前の休み時間に、右下にあるIMEパッドにちょこちょこと絵を描いては消していたことも。良い学生生徒はまねしたらダメ)
 月に一回か、半年に一回、ペイントを開いて、顔を描いて色を塗って、終わり、という感じでした。(手間がかかる割に上手い絵が描けないのは、自分が絵が下手なせいだ。下手なら描かないほうがいい。描いていないから腕が上達せずに手間と時間がかかるんだ)という悪循環に陥っていました。
 最近はドット絵にシフトしていましたが、ドット絵はドット絵で技術が要求され、一旦手を引いています。

ペンタブ購入のきっかけ

 漫画を描きたくなったが、マウスで描いた先人がいなかった。それだけのことです。

 まず漫画が描けそうな手持ちのフリーソフトを探し、見つけたコマの中にちまちまと構図を描き……、
「いや、おかしい! マウス絵に慣れた私でも、いくらなんでも労力がかかり過ぎるとわかる! アナログ絵を取り込めというのか……? 漫画のコマ割りをデジタルで探そうとしたくらいだというのに!?」

 今までだったら、マウスで描くのがしんどくなった段階でネット検索をかけ、指南ページを見つけるだけでしたが、マウスで漫画を描いた、というページは(2022年1月時点で)今度こそありませんでした。

購入

 今年の2月初めに、少し遠出の買い物に出かける機会があり、その時に中古PCショップでwacomのBamboo Comicのsmallサイズを見つけました。
 まずはタブレットに触れてみて、良かったら一回り大きな新品の購入を検討すればいいし、駄目だったらまたマウス絵か、アナログ絵に戻ればいい。そう思って衝動買いしました。
 価格は3000円。帰ってからペンタブの相場を確認しましたが、人気の高い液晶タブレット(液タブ)は50000円台からの販売が主で、到底絵が苦手な私が手を出せるものではありません。

実践

 やはり購入してすぐは、ペンタブの良さがわかるものではありません。

 初めから全速力で飛べる鳥がいないように、初めからプロ並みの絵を描こうとする発想には至れません。

 付属のインタラクティブマニュアルも、筆圧の調整前に始めるため、線が思ったように引けませんし、手持ちのフリーソフトも、筆圧を調整しなければマウスで描いた線と大差ありません。

 しばらく新規作成の白いページを、線やひらがな、図形で埋め尽くす時間が続きました。

 大体一時間くらいしてから、実践だ、と思い付き、マウスでトレースしていた絵の一つを、改めてトレースしました。

  •  トレースとは:紙に描かれた下絵の上に、薄い紙を置いたり、光を通してなぞれるようにした機構を用いて、下絵をもう一枚の紙に写し取る作業。

  •  主に上手いと思った絵や、公式から出された絵をなぞるのに用いられる。

トレースの実践

 ここで私ははっと気が付いた。

「これがペンタブだというのなら、私が今まで苦労していたのは何なのだ。何、何のために……。
 今までは矯正ギプスを付けていたとでもいうのか! 巨人の星は見たことないけど!
 三倍……いや、五倍……。否! 十倍は早いぞ……!」

トレース元には、EXP社のGeneration XTHシリーズの一枚絵から、屋上に六人並んでいる絵の中心の青年を、トレース先の絵には、世界樹の迷宮Ⅳのナイトシーカー(緑髪)を使用しました。
トレース紹介用画像。左から順に、元の絵、マウスでのトレース、ペンタブでのトレース
元の絵にない剣とか長い裾とかは、トレース先のキャラのものです。
あと、下書きだと思って描いたので、外套の後ろにある足とか、後ろにある剣とか消してません。お目汚しすみません。

 並べてみたはいいものの、あまり変わらない気がするのがつらいところ。

 一応、サクサク描けて調子が出て来たので、服のしわもなぞってる、っていうのはあるけど、そのくらい。

 ここまでで、所要時間は(マウスでのトレースをPaint.netで行ったのもあるけど)、体感十分の一。

 もうね。時間が節約できるだけで最高ですよね。

 今までどれだけ苦労してきたんだ、って。

 でもこれで報われる。

 ペンタブを買って本当に良かった。板タブでSサイズ、という世間一般では評価の低い組み合わせだけど、マウスだけで二十年くらい絵を描かざるを得なかった私のような境遇の人になら問題なく勧められると思います。


コピー用紙を描画面に貼り付けたレビュー

 ペンタブを使っていると、どうしても描画面にキズが付きそうで心配になります。検索をかけてみると、保護シートを貼ればいいというサイトがほとんどですが、板タブに関しては、なんと「紙を貼る」ことでもOKとのこと。紙を貼るのも、両面テープや接着剤だったら不器用な私には難しいかな……と思っていたら、なんとマスキングテープで気のすむまで貼り直し出来るとのこと。

 また、紙を貼ることで、まるでアナログで絵を描いているような描き心地が味わえるということ。

 これは試すしかない。早速A4コピー紙をペンタブの後ろに入り込まない程度に大きく切り、余裕をもってマスキングテープで貼りました。

 ……うん、何か微妙。

 bambooは元々が「紙に描いたような描き心地」を売りにしており、そのリアルさというのは、ペン先が引っかかって傷を付けていそうな感じがするほどでした。
 コピー用紙を貼り付けることで、傷を付けそうな罪悪感が減ってのびのび操作できるようになったのですが、貼り付け方がまずいのか、元々甘い接触判定がさらに甘くなってしまいました。

オリジナルの絵。やくざの幽霊とかそんな設定のキャラで、足から下がなく、オールバックの髪型で、左手に拳銃を持ったキャラクター。
オリジナルの絵。左がマウスでの下書き、右が下書きをペンタブでなぞっただけのもの。
コピー用紙を貼ってしばらくしてから慣れたうえでの作業です。

 このように、筆圧も、かかっているのかかかっていないのか微妙です。

 たぶんコピー用紙はそのうちはがすと思います。
 中古で買ったし、思う存分使えばいいかなって。

 以下は蛇足になります。

蛇足:ペンタブをゲームで使う

 ペンタブを買ったのは、専業絵描きの人がほとんどだと思うのですが、中には私のような、多趣味が高じてペンタブにも手を出した人がいると思うので、その人たちのために、マウスゲームでもペンタブが使えるよ、ということについて。

 ついでにお気に入りのゲームを一つレビューする。

 newgroundsの、Pack Your Bags。

 オリジナル曲に合わせてリズムを取ると、画面上のキャラが動く、リズムアクション(アドベンチャー)ゲームです。

 曲がいい以上に、ゲーム中の効果音がDJのような効果を果たしていて、とてもノリノリで楽しいゲームです。人気の白黒画風。リズム部分が緑色で、浮き上がって見やすいのもうれしい。
 暴力や血が含まれるTeens判定が平気そうな人はぜひやってほしい。

 クリック、スペースキー、タップでプレイが可能。このご時世にクリックのリズムアクションゲーってどうなんだ、と思いながら全クリしたあとでスペースキーでトライ。
 ……スペースキーだと、大きいキーならではの押して離すラグがあるので、難しいんですね。
 そしてスマホで検索もしたのですが、スマホ版に最適化されておらず、タイムラグでまともに遊べませんでした。たぶんタブレットなら遊べるんですかね。

 マウスはクリックが面倒、キーボードはラグる。残された道は、そう、ペンタブですね(何が)。

 コピー用紙を貼ったペンタブで、罪悪感なく、思う存分画面を突っつきましょう。
 楽しいです。ペンタブの機嫌次第ですが、クリアも十分狙えます。息抜きにどうぞ。


 以上、蛇足でした。普通の絵描きさんは、絵描きにペンタブを使ってください。


 ご閲覧ありがとうございました。

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