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【かぜたみ日記】1枚のトーストと、それを取り巻く完全にどうでもいい諸々の話

こんにちは、かぜのたみです。
早いもので一年の1/3は終了しようとしているようなのですが、皆さま健やかにお過ごしでしょうか。

今回も、なんか最近私が気になった「思ったわぁ」をあつめてお送りしたいと思います。

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「これ、何枚切り?」

いつだったか、オープンしたての喫茶店の注文で並んでいたら、前からこんな声が聞こえてきたので、思わず自分のオーダーはそっちのけで、声があった方向を見てしまいました。

声の主は70代前半とおぼしき男性で、カウンターに置かれた皿の上のトーストを指差し、「これ、何枚切り?」とスタッフさんに聞いていたのでした。

(5枚切りくらいってとこですかね)

と私は心の中でつぶやき、ちょっと声の主を見てみたのですが、私の5枚切りテレパシーは通じず、主はオロオロするスタッフさんを前にしても引き下がりません。

主「だから何枚切り?って」
スタッフさん「じゅ、13枚切りです!」
主「えっ、な……」
スタッフさん「じゅ、13枚切りです!」
主「えっ……う〜ん……」

とはいえ、忙しい店内なのは主も認識されているのか、腑に落ちない感じでトーストを受け取りテーブルに向かわれました。

私自身、オーダー待ちの列の先頭としての任務「私も後ろも待ってます」アピールをすべく、じっと主とスタッフさんのことの始終を見てしまっており、おそらく注文待ちの列に並ぶ全員が主のことを無意識にでも見つめていた可能性もあり、かなりの圧が生じていたことでしょう。

ではここからは、忙しいスタッフさんに変わり、もう声が届かぬ主と、別にこの件を知らなくてもいい皆様へ向けて、私の妄想で補足したいと思います。

おそらく、喫茶店のパンは一斤単位だから主含めてみんながよく食している『超熟』とかの立方体の食パンの単位とは違うため、スタッフさん曰くの「13枚切り=私たちの立方体食パン」で置き換えると枚数的にはっきり出すのは難しくって、でも私の見立てだと分厚さを基準にして置き換えた場合は、ざっくり5.5枚切りとか4.2枚切りとかになるんじゃないでしょうか、知らんけど。いやほんま、知らんけど。

です!

忙しすぎて誠実すぎた店員さんに幸あれ……。

にしても、私も日頃から結構謎に思ってたのですが、こうしたパンの枚数とかもですし、食材の原料とかを文字や言葉で見たり聞いたりで「それがあるからこそ納得できる!」という、思考第一な人が増えてる気がします。気のせい? それともネットだから可視化されてるだけ?ですか。

感覚90パーセントで生きてる私などの人間は、「喫茶店のトーストって分厚くていいよね〜」と思って、ただそれだけで美味しく食していたりしますが、思考第一な人は「5枚切り!ヨシっ!」「小麦は北海道産!ヨシっ!」みたいな感じのことを美味しさのトッピングとして食べてはるんでしょうか。

しかし主がなぜ、「何枚切りか」をそれほどお知りになりたかったのかを確かめたい感じですが、真実はわからないまま濁流の向こうへ流されていってしまいました。

もしかしたら、私がすっかり仕立て上げてしまった”思考第一な人”なんかではなく、仲間内で「喫茶店のトーストは5枚切りやで!ほな1000円賭けたるわ!」みたいな話で来店されており「なんやて?枚数わからんのか〜〜い」みたいな結末だったり、奥様と来ていて「喫茶店のパンは1斤単位だろうから何枚切りとかじゃないと思うけど?そこまで気になるなら聞いてみたら?」でモヤモヤされたのかもしれません。真実はいくつも存在する可能性もあります。

いや完全にどうでもいい話ですが・・・!

どうでもいい話ついでに書いてしまうのですが、喫茶店のモーニングのトーストについて、みんななんかしら注文が多いのも、結構謎です。

ゆで卵への細かな注文は不可能ということが全認識されているのか、卵の茹で方のオーダーまでは聞いたことがないですが、トーストへの執念はみんなすごい気がします。

私が喫茶店でバイトしていた時も、自分がお客としてオーダー待ちの列で待っている時にも、必ず一日2〜3件は遭遇する「あ!トースト、ちょい焼きね!」みたいな補足は、「つゆだくで!」「氷抜きで!」「塩抜きで!」「アーモンドミルクで!」と同じなんでしょうか。一億総欲張りさんかよ!

ならいっそのこと、『パン切りセルフカフェ』とかを大々的に作って、”1ミリ単位で好きな分厚さにパンを切れる×好きな焼き加減でトーストできる”、その上トースターも、バルミューダからなにから10種類から選び放題!という、自分のこだわりを完璧に実現できる喫茶店があったら、流行る気もしましたが、

「ちゃうねん!そういう自分でやるとめっちゃめんどくさいことを、誰かが事細かにやってくれるってことに幸せ感じるわけやん、しかも朝から。この気持ちわかるかな〜〜わからんやろな〜〜」

っていうのがお客様本来の欲求である気もし、人の欲求を満たすとは……に想いをはせました。

これが私の妄想ではなく事実なら、ほんま店員さん、大変やわ、です。どっかの職員さんじゃないからほんま!職員さんでもやらんし!ほんま!もう自分で気に入ってるパンを持ち込んで焼いてもらったらええやん!ほんま!てか家で食べたらいいやん!ほんま!

これら一連のことが目に入るのも、自分が喫茶店でバイトしていた時の「(めんどくさ〜)」という不満感が長年の時を経て、噴出してしまってるのかもしれません。

ちなみに私のバイト先では、厨房へ通すオーダー表に「月村さん(仮名)」と常連さんの名前を明記しておけば、勤務歴が長い厨房の人が自動的に「月村さんね……パンはサラッと焼き、卵は塩なしっと!」で”いつもの”を提供すべく、きちんと全対応してくれたりして、月村さんの執事かなと思ったのを思い出しました。

私はホール担当でしたが「月村さんってお名前とお顔までは覚えた……トーストセットまではギリ把握済み……でもミルクなしでいいとかっていうその先からはあやふや……念のため直接確認したい……でもそれすると”いつもの”じゃなくなっちゃうから、オーダー表に(月村さん)と明記する」で、他のスタッフに相談の上、丸投げしてしまっていた完全なる「給仕や執事に不向き」なタイプです。全然仕えれない。執事や給仕にも、その人本来の性格って絶対必要だと思います。

私自身は「今日はちょい焼きでお願いね!(マダム風)」と言いたい欲求が1ミクロンもなく、「今日はよく焼きにしようかな!」で自分でよく焼いて満足する”完全なる自己完結”タイプなのですが、「いつもの!」を実現するには、誰かしらか相手がいないと叶えられなくて、それって割と大変そうだけど、どうなん?と、完全なる大きなお世話なのですが、ふと考える時もあります。

自己完結タイプにはなかなか見えてこない世界観なのですが、あらゆる場所には「やってもらう幸せ」「やってあげる幸せ」がたくさん存在していて、互いにその幸せを持ち寄ったり、交代したりしてこそ出来上がる”完全なる幸せ”が完成される世界もあるのかもですね。

そしてさらにトーストといえば……で思い出しのが、最近読んだ”モラ夫の寛解”をテーマにした『99%離婚』(龍 たまこ (著), 中川 瑛 (原著))というコミックがあるのですが、その中で主人公(夫)が妻に対して、「(僕のお気に入りのジャム)なんで買ってないの?(僕が)食パン食べれないよ?」という1コマがあって、なぜかいつも私はそこで、お若い人には通じないであろう「むせび泣く冬彦さん※」を思い出して笑ってしまうのですが、そういう「いつもパンを出す側」「いつも出してもらう側」だけでも、なんか謎のややこしい関係性が強固になってしまうこともあるのか興味深いな……とも思います。

※むせび泣く冬彦・・・マザコンでオタクという冬彦の変態キャラクターが注目され、“冬彦現象”とも呼ばれるブームを巻き起こしたTBS恋愛ドラマ『ずっとあなたが好きだった』の1シーン。佐野史郎の演技は、視聴者に相当の衝撃を与えた。出演は賀来千香子、野際陽子ほか。制作1992年。
かぜたみ注)ちなみにむせび泣いていたのは妻への狂おしいほどの愛情表現で怒りや不満ではないよう。長年、どんな不満の表現かと思ってましたけど違いました。ドン引きしてる賀来千賀子さんの表情しか思い出せません。

いつもはトーストを出してもらう側が、出す側に回ることは屈辱的なのだろうか。それとも、役割を交代し続けることが我々が平和に過ごせる秘訣なのだろうか。
(この我々というのはどこを指すのかはご想像にお任せするとしましょう)

そんなふうにモヤモヤと考えていましたら、また別の喫茶店で遭遇した「このお店感じええね!私好きやわ〜」とスタッフさんにさらりと伝えてるおばさまが最強のコミュニケーション強者な気がして、見習いたくなりました。

自分がスタッフさんに「このお店感じええね!私好きやわ〜」と言えるようになるまではまだまだ年月が必要で「日々是精進」と思い返しました。

なんかトースト1枚なのに、なんだか色々思うこと多いわぁ、です。

パンを巡る冒険は、まだまだ続きそうです。

それでは本日もあんじょう!


<かぜたみ後記>
あとから「何枚切りか」の件のやり取りについて、”コミュ強”のおばさまなら、どう表現されたのかと思いをはせました。
おばさまならきっと、帰りしなか、スタッフさんがテーブルを片付けにきたタイミングなどに、「トースト美味しかったわぁ、4枚切りくらいかしらね?」と答えやすいパターンで尋ねたりするよねきっと、と想像しました。なんなら「そこらで売ってるのと一緒にしたあかんよね〜ごめんね忙しいのに」も付いてきそうです。
逆にスタッフさん側の立場であったなら、「あのね……企業ひ・み・つ」くらいはさらりとお伝えされるのでしょうか。内側の全てを表現できる、コミュ強の世界は奥深いです。

そしてもし私がスタッフならば、ですが、場所と相手の方の雰囲気みいみい、「昨日までは5枚やったんですけどね〜」くらいの返答はキメたいところ。転ぶと割と痛いものの、チャレンジしたい小技の一つです。

いやしかし、相手に罪悪感を残さないコミュニケーションが、つまり最強なんじゃないかと思う今日のこの頃であります。