クルクル。

みはるは一途である。
自分で言うのもなんだが。

まだ幼稚園生くらいの時、母に聞かれた。

「みはるちゃんは大きくなったら何になりたいの?」

「バトンを回す人!」

「それじゃ、ご飯は食べられない。」

みはる、まだ4つかそこら。

なんだよ!ご飯が食べられないって!

幼心に、うわっ!何、コイツって思った。
この違和感を抱えたまんま、小学校に上がった。

みはる、再びの懇願。

「バトン!バトン習いたい!」

「何曜日?」

「木曜日」

「ピアノ、あるからダメだね。」

魔の木曜日。

ピアノは母がやりたかったことで、みはるはやりたいなんて1ミリも思ったことはない。

母はみはるを自分の夢の受け皿に使った。

苦しい。
これが、50代になった今でも消化出来ずにいる。

それでも必死に夢に喰らいついた。

小学4年生。

みはるはバトン部に入った。

普通のクラブはもっと短い期間だったと思うけど、バトン部だけは4年生で入ると6年生まで続くことになっていた。

当然、嬉しい。

クラブの最終目標は
6年生
小学校生活最後の運動会で、花形の演目となる鼓笛隊。
ここでバトンを回すことだ。

みはるは頑張った。
猛練習をした。

いよいよ、実技試験。

みはるは、いの一番に合格した。

やったー!

所が、全ての生徒のパート(バトン、フラッグ、ポンポン)が決定した段階で、音楽の先生がやって来て、みはるをバトンから外した。

背がちっちゃいからだ。

つまり、見栄えが悪いと、そーいう理屈だ。

悔しかった。

なんの為に3 年間、練習を欠かさなかったのか。

朝練でも。
クラブ活動の時間でも。

ひたすらクルクル回し続けた。

でも、背が小さいことは練習でどうにか出来るものではない。

みはるはポンポンで鼓笛隊に参加した。

みはるよりもバトンが苦手な子がバトンパートをやっていた。

こんなにも大好きなバトンなのに
こんなにも良い思い出がない。

やりたいなー。

そろそろ体も本格的に動かさないと、マズイところに差し掛かっている。

クルクル。
クルクル。

習えるところを探しているけど、対象年齢が中学生までだって!

悔しいな。

バトンは永遠に遠いままなのかな?

クルクル。
クルクル。

舞台になんか出なくていいから。
大会になんて出なくていいから。

キレイに回せるようになりたい。
もう一度、練習がしたい。

夢はかなえるために見るもんだ。

バトンに恋する真っ直ぐな想いは、幼い頃となんにも変わっていないんだから。

みはる

〜2020'3'21(土)

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