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コミュニティとその変遷(その2)

「コミュニティとその変遷(その1)」では、地縁型のコミュニティが高度経済成長、グローバル化の過程で解体されてきたことを述べました。人間は個人に還元され(アトム化)、空間は機能に分割されました(細分化と機能純化)。

それでも、地域コミュニティが解体される局面で、(そのことに対するオルタナティブとして、)嗜好や価値観を共有し、人と人の信頼関係でつながる共益団体やNPOなどの新たなコミュニティが勃興しています。市場原理やグローバリズムがもたらす競争社会、無縁社会が進展するなかで、コミュニティの価値が再認識されるようになったのです。絆、共感、共有、シェアなどの言葉が頻繁に使われるようになったこともその現れです。
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が2001年に採択した「文化の多様性に関するユネスコ世界宣言」もこうしたコミュニティ圏域の形成を促すものと捉えることができるでしょう。

そして、近年では、自治会、小学校区といったコミュニティ階層を単位として生活機能の再生に取り組む地域コミュニティが散見されるようになりました。市町村などを単位として、地域独自の生活文化や特産品の復興、工場跡地の再生、公共交通への転換、食料自給、エネルギー自給など文化創造、環境適合、インディペンデントを指向する地域コミュニティが散見されるようになりました。
今後、このような「自律的で個性的な地域コミュニティ群」という世界像が、グローバル社会という世界像のオルタナティブとして注目されることになるでしょう。(下図)

コミュニティ図6

さらに、こうした小規模で自立的・創造的な地域コミュニティの勃興とともに、そのネットワークが形成されつつあります。ネットワーク化により、衣食住に関する地域資源の相互補完、互いの技術やノウハウの融通、非常時の支援などによって地域コミュニティの自律性・創造性がより高まって、より豊かな生活空間が実現すると考えられます。さらには、複数の地域コミュニティが協力連携して、余剰の生産資材や加工品、食材や食品を商品化することも考えられます。
ユネスコが推進している「創造都市ネットワーク(Creative Cities Network)」も、市町村を単位としたクリエイティブな地域コミュニティをネットワーク化する運動であると捉えることができます。

ここでひとつ注意が必要なのは、私たちが回帰しようとする地域コミュニティは、近代以前の家父長制的なツリー型の人間関係からなる地縁共同体(ゲマインシャフト)とは別モノだということです。
私たちは、信頼と互酬性に基づくフラットな人間関係からなる市民共同体(新しいゲマインシャフト)に回帰しようとしているのです。

社会類型の変遷

このような世界像の実現のためには、まず、市民社会を構築することが重要だと考えています。地域コミュニティの構成員が地域の価値や地域社会の将来像を共有すること、そして共に豊かに暮らすためのコモン(地域共有財)を次々と空間化していくこと。誰もがそのコモンにアクセスできること、民主的なガバナンスが成立していること。

合わせて、ローカルな市場の形成が重要だと考えています。グローバル資本主義から逃走できるということ。日常の生活圏のなかに、信頼関係に裏付けられた取り引きが行われるコモン(場)を空間化していくこと。

そして、地域の文化財群(指定・未指定、有形・無形、自然、風景等を含めた広義の文化財群)に関する調査とこれらの総合的な活用計画を策定することが重要だと考えています。地域の豊かな未来を指し示すものは、結局のところ、こうしたコモン(文化財)だということ。それを計画し、空間化していくこと。

果たして、そのようなオルタナティブな世界は、グローバリズムと拮抗できるほどに、現実となしうるものでしょうか。

(次回は、これら2つの世界の関係性を整理し、国土計画へと当てはめてみたいと思います。)

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