『生き写しバトル』① #毎週ショートショートnote
*巌流島の戦い
このバトルがどうして実現したのか。
どちらが本当に凄いのかの興味が願望となり、やがて社会現象のように膨れ上がり、本人の思惑とは関わりなく実現したとしか言いようがない。
それ程までにそれぞれが描く絵は常軌を逸して人々の心を強く惹きつけていたのだ。
宮本山 武蔵。剣豪にも似たその名前は《 魂を描く奇跡の画家 》として
その名前を知られている。その技術を凌ぐものはいないとさえ言われている。
佐々木 虎児美。 女性でありながら描くタッチは大胆に荒々しく、しかも繊細な表現で描かれた絵は《 神の手を持つ画家 》とまで謳われている。
二人の対決の場は『 巌流島 』である。
それぞれの前には等身大のキャンバスが立てられ、互いの姿を描くことが
バトル条件である。そして、全国に中継される完成画への評価数によって勝敗が決する。
さぁ、戦いは始まった・・・!!
武蔵は二本の筆を、まるで剣が舞う如く走らせる・・・!!
虎児美は竿と見紛うばかりの長い筆を、飛ぶツバメを払うかごときの速さで
キャンバスに躍らせる・・・!!
たった二人だけの巌流島の対決の様子は、あらゆる角度からの中継で全国に届けられている。その注目度は80%の視聴率が証明している!!!
武蔵と虎児美、その二人の必至の表情は『 相手を生き写す 』ことのみに集中している。 魂の真剣勝負なのだ!!
無限とも思える永い時が過ぎてゆく・・・・!!!
審判員さえいないたった二人だけの巌流島で・・・
勝負は意外な形で決着した。
宮本山 武蔵と佐々木 虎児美の姿はどこに・・・?!
互いの描いたそのキャンバスの中に・・・互いが描いた相手の姿として
残されているのみである。絵の完成と同時に二人は消えたのだ。
暫くすると・・・それぞれのキャンバスからヒョッコリと出てきたのは
宮本山 武蔵と佐々木 虎児美だった。
希代の天才二人は文字通り・・・
互いの全てを写し終えたのだった。
【 完 】
*魂を分かち合った武蔵と虎児美の
この先の恋物語は 別の機会に・・・
*文字数過多・・・失礼しました。
*この物語はフィクションであり、実在の人物・出来事・場所
名称・事件等とは一切の関係がありません。
〇たらはかに様の企画に参加させていただきました。
今回のお題は「生き写しバトル 」。
裏お題が「口移しサドル」でした。
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