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忘れっぽい詩の神 #青ブラ文学部

*なんとなく参加させていただきます。☔😊



*曾孫のPCの前で


今更と思える病名から余命を数か月と宣告されて、永過ぎた自分の人生にもようやくお別れができるのだと安堵していたある日、曾孫のPCでGoogle Earthを暇つぶしに眺めていて目に留まったのは、かつて自分が若いころに暮らしていた地域だった。

そこに意識を向けて拡大すると、他の地域とは明らかに異なる色に気付く。《緑》が無いのだ。緑に染まる地球から切り取られたようにその地域だけが【茶】色に覆われていたのだ。

今は【ポク人民共和国】と呼ばれている国だが、当時は併合されていた自国の一部だった。自分の意識が吸い込まれるように翔ぶのを感じた・・・☆


☆☆☆


平和を装う軍事開発に巨額の予算を投入する反動で餓死者が続出している国である。食料としての雑草でさえ大地から根こそぎ収穫されたかのような
見渡す限りの茶色の景色が広がっている・・・
大きな山の麓だろうか、そんな場所に自分の意識が立っていた。

禿山を見上げながら、(せめて・・・?)と、不意に思った。
この国を良くしたり餓死者を減らすことは望めまい・・・だとしたら、せめてこの山を覆うほどに植林したいと思った。そんな方法があるのだろうか?

自分が《神》にでもならない限り無理だと思う。
だが、そう結論付けるのはまだ早い。希望さえ持てば絶望でさえ扉が開く☆
未来はその為にこそあるのだ。


☆☆☆


気付くと・・・曾孫のPCの前に座る自分がいた。

・・・ん?

茶色に覆われていた筈の【ポク人民共和国】の一部が《緑》に変化していた。何が起こったんだ?

もうすっかり忘れっぽくなっている自分を顧みた・・・
自分が何かしたのだろうか?


《タイムスリップ》したかのような若い自分の姿を見た気がした。
山の中腹で何かをしている・・・? 


植林をしているのか?!


なにかブツブツ言っている・・・

僅かな時に神のフリをして、自分の想いを詩に変えて
大地を緑に変える歌を唄いながら
・・・


自分の意識が遠のいてゆくのを感じながら
少しだけ、ほくそ笑んだ・・・・・☆



【了】



*このお話はフィクションです。


#青ブラ文学部



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