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『文字が躍る』読む時間 #シロクマ文芸部

*不思議な秘密


読む時間・・・
それは私にとって大切な時間です。
ピアニストとして。音楽家として読む時間は
私にとっての魔法の時間です。

そしてそれは・・・
私だけの内緒の時間でもあります。
そのことを誰かに言っても
たぶん、信じてもらえないから。

本との出会いはとても重要です。
その本ごとの世界はあまりにも多様です。
ですから、私は自分の感性と同調できる本を
読むことにしています。

☆☆☆

私がピアノ始めたのは6歳のときでしたが
同じころからいろいろな本と出会って
読書も好きになりました。

そんなある日の出来事でした。

読むことにちょっとだけ疲れて
ボヤ~~ッと本を眺めていた時でした。

本の文字が、なんだかユラユラしているのです。
えっ?と、そのまま見ていたら・・・

文字たちはますます動き始めて・・・
まるで踊るようにその形を変えていきました?!

起きている出来事が理解できませんでしたが
次第に・・・そのことが自然に思えてきました。
私の気分もなんだか楽しくなってきて・・・♬

文字たちは自分の形を音符に変え始めました。
五線譜ではなく白い下地の上にでしたが
私にも読み取れる並びに・・・

文字だった音符はそれぞれに自分の位置を
決めていきました。

その本はついに全ての文字を音符に変えて
まるで成し遂げたかのように得意そうに
私の前に整列していました。

私もなんだか嬉しくなって・・・
音符に合わせてピアノに向かい・・・その曲を
弾き始めました・・・♬

とても楽しい時間が過ぎてゆきました・・・♬

☆☆

ピアノの演奏を終えると
それぞれの音符は 元の文字に還っていました。

その時の本は『マッチ売りの少女』でした。
その時の私の様子を見ていたママに
文字が音符に変わったことを話しても
信じてはもらえませんでした。

ピアノに向かっている時にだって
『マッチ売りの少女』の本のままだったと言うのです。
その日の出来事は私とママだけの秘密にしました。

☆☆☆

それからも幾つかの本は
その文字を音符に変えて・・・
まるで要求するように私の前に現れました。
当然、私もそのたびに演奏するのですが
ママはいちいち録音保存していました。

そしてそのことは、やがてパパにも知られることとなりました。
なので、私とママとパパ・・・三人の秘密となりました。
録音はやがてパパの役目になりました。

それらの曲は私たちのの秘密でしたから
人前で演奏することはありませんでした。

☆☆☆

私が音楽の道を志して、プロのピアニストとして
デビューしてからも秘密のままでした。

数々の『本の曲』をお披露目することはありませんでした。
それでも全ての曲は私の心にも記録にも残っています。

どんな形になるかはわかりませんが
その『本の曲』たちと私の新しいデビューの日が来るのは
避けられない運命だと思っています。

☆☆☆


もし、コンサートが決まりましたら・・・
その時には宜しくお願いいたします☆



【♬】



*このお話はフィクションであり、実在の人物、施設、出来事等とは一切の関係がありません。

*こちらに参加させていただいてます。
「読む時間」から始まる小説・詩歌・エッセイ
締切は9/24(日)21:00。 #シロクマ文芸部

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