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『忘刻の時に 』① チクタク水兵さん  #毎週ショートショートnote・裏お題

*曾孫の娘に


闘病していた父が亡くなり遺品の整理をしていた。
父が宝物を入れていた桐箱を開けると父が生きていた昔の匂いがした。
一番上に綺麗な昔の模様の風呂敷で包まれた桐箱が出てきた。
何だろうと開けてみる・・・

やはり、高級感のある小さな箱には【懐中時計】が入っていた。

その下には曽祖父が昔の海軍にいた当時の数枚の写真があった。
船上での水兵さんたちの笑顔が並んでいた。
その中に・・・やはり水兵だったという曽祖父の姿もあった。
父が曽祖父から聞いたという話を思い出した・・・

曽祖父と仲がよかったというその男の実家は時計屋だったという。
いつも大事そうに懐中時計を手入れしながら、戦争が終わったら
時計屋を継ぎたいといっていた友人のあだ名は『チクタク』・・・
確か、そんな話だったと思う。

魚雷を受けて海に放り出された友人が、最期に曽祖父に託したという
【懐中時計】。それが何故か、父の遺品として遺されていた。
どうしてなのかその理由は聞いていない・・・


ネジも巻かれていないのに不意に・・・?!

【懐中時計】がまるで鼓動のように・・・
失った時を刻み始めた。

チク タク チク タク・・・・チク タク チク タク・・・・・・


【了】




*このお話はフィクションです。実際にあった出来事とは一切
関係しておりません。


*こちらに参加させていただいてます。
今回のお題は 『告白水平線』
裏お題が・・・『チクタク水兵さん』でした。

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