まのいいりょうしのできるまで #5
前回からの続き…
「マイホームツアー」に出る直前、妻が妊娠していることがわかった。このうえもない喜びだったが、同時にツアーに出られるのかという不安が鎌首をもたげた。妊婦生活のほとんどを、車内で過ごすことになるからだ。加えて、僕は免許を持っていなかったので、運転は妻がすることになっていた。
ある夜、僕は、ツアーを諦めよう、と言った。しかし妻は絶対に嫌だと首を横に振った。何があってもツアーには行く、という。ならば、産婦人科の担当医の先生に相談してみよう。我々夫婦はその先生のことが好きであり、信頼していた。
妊婦検診当日、先生にすべてを説明した。僕の仕事のこと、ツアーのこと、車で生活すること、そして僕には免許がなく、ずっと妻が運転するということ、妻の意志は固い、ということ。すべて説明した上で、先生が少しでも難色を示そうものなら、妻がなんと言おうとも、僕はツアーを断固中止するつもりでいた。
先生はだまって僕の話を聞いていた。説明が終わると、ゆっくりと口を開いた。
「...そうですか。でしたら、どうしても気をつけなければならないことがあります。それは」
僕は瞠目した。
「...事故です。事故だけには気をつけてください。」
というわけで、産婦人科の先生にもお墨付き?を頂き、無事に五枚目のアルバム『home』も完成し、事故に気をつけながら、「マイホームツアー」を行うことになった。
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