他の方の『シン・エヴァ』感想

ネットでいろいろ感想調べていたら、ハライチの岩井さんという芸人の方がシン・エヴァを批判しているのを見つけた。

「迫力あって作画が綺麗で感動的でわかり易くて最悪だった。」

作品名を名指しはしていないけど、twitterの投稿時期的には間違いないだろう。初めて知ったが岩井さんは結構なアニメファンで、エヴァも大好きだった方のようです。評論家含めいわゆる有名人で批判している人は、彼が初めてだと思う。よくぞ言ったと思う。

まあ、それだけエヴァが大好きだったんだろうね。その気持ちはよく分かります。名指し出来なかったのは芸能人として影響度が大きすぎるからで、仕方ないのでしょう。名指し出来ないなら言うべきではなかったのかもしれないが、言わずにはいられなかったんだろうね。そりゃそうですよ。私だって久しぶりに『シン・エヴァ』の批評記事書こうと思ったぐらいだから。私は今でもエヴァは好きだけれども、『シン・エヴァ』は終わらせ方が失敗で駄作だと思いましたから。

他の方の批評を見てたら、よく終わらせたことが凄い、終わらせたことに意味(価値)がある、みたいなことを書いている方がいるのだけれど、物語を終わらせるのは当然ではないか、と思う。

そりゃ仕事として見れば、映画制作、アニメ制作はとても大変でしょう。庵野監督は経営者の立場もあるから、経営者と製作者の二足のワラジ、まあ尋常じゃないほど大変でしょうよ。でも、エンターテイメントを受け入れる側(観客)からすれば、終わらせるのは当たり前のこと(大前提)だと思う。終わらせた上で、その上で、作品の評価というジャッジを下すわけだから。

新劇場版はいろいろな事情(庵野監督が鬱になったり)があったにせよ、終結まで時間がかかりすぎたのが、悪い方向に働いてしまったよね。世間も期待しているからプレッシャーが半端なかったのは間違いない。鬱だったのは可哀想だと思うし、時間がかかったのも仕方がないのかもしれない。でも評価されるということは、そういうことだと思うんだよね。

一方、同業者の新海誠監督が「果ての果て、遠い場所まで連れていってもらえました。良かったー。」とtwitterで呟いていた。良かった、ということはいい評価、ということなのだけれど、これがねえ、なんというかいろいろ勘ぐりたくなるんだよね。

いや、勘ぐるのは人が悪いのだろう、新海誠監督は間違いなく本心で言っている、それは断言できる。彼はとても正直な人だと思う。空気を読まない、と言ってもいいかもしれない。私の感覚だと、ライバルの作品なのだから、たとえ見たとしても普通は感想いったり評価したりしないのが普通だと思っていた。TVシリーズのエヴァがヒットしたときに、宮崎駿も富野由悠季も絶対エヴァ見ていたはずだけど、見てない、とか言ってたし、一切評価しなかった(心の中では評価していたのかもしれないけど)。そこをあえて言っちゃうのが新海監督らしいと言えばらしい。

アニメ業界の衝撃的な出来事は、エヴァQ(2012年)の後、2016年に新海誠監督の『君の名は。』が大ヒットしたことだと思う。2015年に細田守監督の『バケモノの子』がエヴァQの興行収入を僅差で抜いたけど、『君の名は。』はその比ではなく、数々の宮崎駿作品を抜き去り、千と千尋まであと一歩のところまで迫った。日本の劇場アニメ映画で、オリジナルで大ヒット出せるのって宮崎駿(ジブリ)だけだったんだけど、まあ宮崎駿は神のような存在だから仕方がないとしても、新海誠が殴り込みをかけたのは同業者にとって衝撃的だったのではと思う。その後の『天気の子(2019年)』も成功した。庵野監督としても、同じ年に『シン・ゴジラ(2016年)』が成功していなかったら、シン・エヴァの制作はもっと苦しんだものになったのではと想像する。

で、振り返って、新海誠監督のあのつぶやきである。もし『シン・エヴァ』が『君の名は。』の興行収入を抜きそうな存在なら「良かったー。」なんて言葉は出ないと思うのだ。つまり、そういうことなのだ。

庵野監督はもう還暦ではあるが、まだヒット飛ばせる人だと思う。私は今回の『シン・エヴァ』を見て、庵野監督はもうアニメ作りをすることはない、と感じた。もうアニメ作りに興味がないのだろうなと思った。「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」という台詞があるが、エヴァは庵野監督にとってアニメーションと同義だと思うから、庵野監督としては、アニメ作りにさようならした、ということだと思うのだ。実写でよいので、庵野監督には是非『シン・ゴジラ』のような面白い映画をまた作ってほしいと思っている。

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