シン・エヴァの庵野監督の舞台挨拶でびっくりした件

先日、シン・エヴァをまた見てきた(2回目)。僕もこりないよね。2回目は1回目と違い冷静に映画を見れたので作品の捉え方が変わってきた(良い方向に)。それに2回見たんだから、本当に言いたいこと書いても文句言われないよね、という思いもあった。感想については、また別途書きたいと思うが、今日は、ちょっと違う話。

4/11に庵野監督が大ヒット御礼で舞台挨拶したんだけど、そのときの発言についてだ。

「(現在興行収入70億で、80億を超えると自身が監督したシン・ゴジラを超えることを踏まえて、さらに)100億いってくれると、アニメ業界の活性化にいいんですよ。鬼滅とか新海さんのところが100を超えるのは当たり前なんすよ。100を狙って当然の作品群なんですよ。まあジブリもそうですけど。宮さん(宮崎駿監督)とかも100いくでしょ。(でも)エヴァってロボットアニメなんですよ。有名なロボットアニメの中でガンダムっていうのがあるんですけど、ガンダムですら100はいってないんですよ。こんなニッチなロボットアニメで100を目指せるということはほんとありがたいことだと今思います。」

これ個人的にはショックだった。何というか鬼滅とか新海作品に触れないでほしかった。そりゃ興行収入は敵わないかもだけど、庵野作品は特別だと思っているから。富野監督みたいにね、TVの取材で「鬼滅潰す、エヴァ潰す」とか喧嘩を売るのはいいけれど(まあ富野さんの芸風ですが)。今回みたいに庵野監督が真っ正面から触れたことに、特に新海作品(鬼滅と違って完全なオリジナルアニメだ)に触れたことはびっくりだった。この発言は、庵野監督による「敗北宣言」だと私は思った。映画の価値、作品の価値は興行収入だけで決まるわけではないとはいえ。

僕は先日、新海監督のシン・エヴァに対する発言について取り上げたけど、この庵野監督発言を聞いてしまうと、映画のラストでシンジ役に神木隆之介を採用したこともいろいろ深読みしてしまう。それは神木隆之介が新海作品「君の名は。」「天気の子」に出演していたからだ。良いように捉えれば、庵野監督から新海監督へのエールという意味が込められているのだろう。

あと、具体的な数に触れていたことも、びっくりだった。裏を返せば、予想よりもシン・エヴァの興行収入が少ないという危機感があったのかもしれない。100億は当然、と思っていたのかもしれない。でもそれが難しいかもという話になってきたから、ああいう発言が出てきたのかもしれない。

それでふと思ったことがあって、それは押井守監督の「イノセンス」についてだ。「イノセンス」は「攻殻機動隊」というアメリカでも高い評価を受けた映画の続編として制作された。ハリウッドもお金を出すことになったが、押井監督の方針とハリウッドの考えが相容れず、一度は出資が危ぶまれた。結局、押井監督は(ハリウッドの介入を押しのけて)自分がやりたい映画を作った訳だが、結果的には興行が失敗した。映像は確かに綺麗だ。でも映画としては極めてつまらなかった、これは押井監督の脚本の失敗だと思う。制作費20億に対して興行収入10億だった。一般に興行収入の1/4がアニメスタジオに還ってくると言われるので、15億の大赤字だ。

シン・エヴァは、自主制作で、自分たちで制作費を出しているから、他の映画に比べてスポンサーからの介入を避けられ、自分たちの作りたい映画を作ることが出来る。押井監督がハリウッドと揉めたような事態にはならない。収入も1/4よりもっと還ってくるだろう。1/2とまではいかないが、1/3ぐらいは還ってくるのではないか。シン・エヴァの制作費が仮に20億とすると興行収入70億なので既にペイしているが、30億とするとまだペイしていないことになる。エヴァであれば、ディスクや関連商品の売り上げも相当あるだろうからトータルで確実にペイはするのだろうが、意外と大変なのかもしれない、と思った。あのスタジオジブリですら、興行収入が120億の宮崎駿監督「風立ちぬ」でも、興行収入だけではペイラインに届いていないぐらいだから。

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