春休みの日記

 思ったより私には会うべき人がいて、毎日のようにおしゃれをして出かけてゆく。みんなは愛をくれるけど私はそんなに器用じゃないからちょっとずつしかあげられない。でも実際は広義的な意味で、私は彼らを彼ら以上に愛しているのだ。世界でいちばん顔のかわいいあの子、素敵な声を持っているあの子、カルチャーに包まれたあの人…。本当は彼らに嫌がられるくらい、私は彼らを愛している。そのことをわかってほしかった。リアルタイムのコミュニケーションはいつも難しくて私はいつも、本当に自分が言いたいと思っていることの半分も言えずにいるし、反対に本当は自分が言いたくないことの全てを言ってしまう。確かに言語は伝達手段としての絶対的な欠陥を抱えているけれど、伝達する私にも大きな欠陥があるのだと思う。私は彼らと別れた後、中央線に揺られながらその日の私の失敗を思い出して涙をこぼしそうになる。かばんに入っている文庫本を読む気にだってなれない。でも、それは心地の良い後悔でもある。結局は私は愛を享受してしまっているからだ。彼らの言葉や微笑みを私は反芻する。

 彼らは寛大だ。本当のところ、彼らは私を愛してはいないのかもしれない。でも彼らは、私が彼らを思い切り殴ったとしても、最後には許してくれるような人々なのだ。それを個人的に愛と呼称しても構わないと思う。

 私はまだ不寛容さを捨てきれないでいる。流行の洋服なんて着たくないし、うんこ色の髪の毛にだってしたくない。そんなことをするくらいなら全裸で坊主になって踊っていた方がマシだと思う。久々にオナニー的文章が書けてすごく気持ちがいい。


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