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砂絵 #50_66

「いえ・・・」椎衣は立ち止まる。 
「そう、朱雨は死んだ」
「朱雨は・・・」椎衣はプールに浮いた姿を思い起こす。
「あんた、朱雨にそっくりだ。当然だな。それに二人とも、恵にそっくりだ」
「恵?」
「朱雨の娘だ。あんた方と同じように、わしがとりあげた」 
「産婆さん?」 
「ああ」
「その子は、どこに?」
「猿海先生、港の診療所におる」 
「病気なんですか?」
「いや、朱雨の亭主が頼み込んでな」
「なぜ?」
「わしが預かればよかったんだが、如何せんこの歳じゃ自分のことも儘ならん」
「その診療所はどこに?」