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砂絵 #19_32-33
「待って。笹薮の奥で何かが・・・。光が拡がって笹藪を照してる」緊張する砂絵の声。 「光?」
「輪になって、くるくる回りながら近づいてくる。のみ込まれそう」
「終了するよ!」
「待って!光の輪の向こうに、透明な膜が。シャボン玉の膜みたいに、つやつやして破れそう。虹みたいな表面に、雲のような模様がぐるぐる回ってる。膜の向こうに・・・」
「存在しないものを、きみは見てる」真っ暗なモニターを見て木川田は呟く。
「存在しない?」
「そんなデータ、書き込んだ覚えがない」
「人?膜が揺れてるから、よくわからない。確かに人が・・・。かあさん!」砂絵のかすれたような叫び声。砂絵は椅子の上にのけぞり、身体を小刻みに震えさせる。落ちた凧に糸が絡まるように、センサーをつなぐ結線が砂絵の身体に巻き付く。
木川田は砂絵を抱き起しゴーグルを外す。砂絵は薄目を開けているが、瞳は動いていない。木川田はグローブと結線を外し、砂絵を抱え上げ部屋の隅にある長椅子に横たえる。