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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #93_284

「利益交換《ギブ・アンド・テイク》と言ったはずだ。新政府は民主主義を標語《モットー》にしている。承知の通り、私は決定権《キャスティングボード》を持ってる身だ。昔のよしみだ。君たちの意志に任せよう。ただ、市街地には残れない。知っての通りだ」
 劉は薫陶を見る。薫陶は首を横に振る。
「協力はしない」
「結構。では、移動先を改めて手配しよう。ひとつ忠告する。逃亡行為は強制的に排除される」立ち上がり徐は兵士に頷く。
「聞いておきたいことがある」
「なんだ?」
「電脳病毒、あれは一体何だったんだ?」
「たかが網絡を支配したところで、国が支配できるとは思っていないだろう?」
「ああ、当然だ」
「電脳病毒は人心を支配する手段だ。そのうち、わかる」そう言い残し、徐は去る。