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砂絵 #39_55

 向かいのテーブルの男子学生が立ち上がり振り向く。散らばった印画紙を気のないように眺める。顔を上げ、砂絵と目が合う。
 夕方、砂絵の自室。壁に貼った写真を剥がし、砂絵は一枚づつ破り捨てる。階段を上る足音が聞こえてくる。
「帰ってたか?」部屋の前の廊下から泰造の声。部屋の扉を開ける砂絵。 
「模様替か?」泰造は砂絵の部屋を覗き込む。 
「うん・・・。父さん、ちょっと酒臭いよ」
「話があるんだ。片づいたら降りておいで」苦笑いを浮かべる泰造。 
「階段、気をつけて」 
 部屋に戻る砂絵。床に散らばる破れた写真。写真の剥がれた壁が白々しい。
 食卓につく砂絵。
「どうかしたのか?顔色、悪いぞ」
「そう?今日、ずっと暗室にこもっていたから」