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砂絵 #51_67
「この子が、こちらにお世話になっていると聞いて」恵の顔を覗き込む椎衣。恵は安心したように眠っている。
「朱雨さんは気の毒だった。信じられない」
「なぜ、朱雨は死んだんですか?」
「亭主の元へ、朱雨の喉仏の入った小箱と配給券が送られてきた。朱雨に何が起こったのか、知らされなかった」
「猿海さん、どうして、この子を預かることに?」
「海に出るから暫く預かってほしいと、亭主に頼まれた。他に身よりがないと。暫く、顔を見せてない」
「わたしが引き取ります。この恵を」椎衣は汗ばんだ恵の頭を撫でる。
「でも、初対面なんだろう?恵とは」
「恵にとって、わたしは母親」
「だがね」猿海は恵の寝顔に目をやる。恵は安心しきったように眠っている。
「いいだろう」