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砂絵 #45_61

「椎雨、わたしの妹・・・」 
「椎雨のこと、須恵さんから聞いていなかったかね?」
「ええ、何も。それに母は耳が・・・」
「椎雨と遊んだ子供の頃の記憶は?」
「いえ」椎衣はコーヒーをゆっくりかき回す。カップの中の自分の顔が歪む。
「そうか・・・」 
「母は、ここに住んでいた時から耳が?」
「いや。この街から出ていく前、あんたの父親といろいろあってな。あの時は燃料危機の真っ只中で、世の中も荒れていた。まあ、あんたの父親のことは悪く思わん方がいい」 「父親のこと?今まで思いもしなかった」 「それで、須恵さんはどうしてる?」 
「それが、この街に・・・」 
「どういうことかね?」
 久下にことの経緯を打ち明ける椎衣。久下は黙って頷く。