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砂絵 #49_6

「人は懐かしむことができるから、今があるんじゃないのか。写真を撮ることだって・・・」 
「あの花火の写真。一瞬で消えていく光の粒を追いかけていく飛行船。今までのわたしだったんです」
「というと?」
「母の残していったカメラ、わたしが写真を始めたきっかけでした。サブリミナル、ですか?あれで母の姿を見た時、それ以来何かが違ってきた・・・」 
「何かって?」     
 砂絵は答えずに静かに受話器を置く。

⌘二十二 椎恵
 椎衣は、自転車を押し通りを行く。あたりを見回し、度々立ち止まる。
 椎衣は、バス停を通り過ぎる。バスを待つ老婆が椎衣を見つめる。 
「椎雨ちゃん?」老婆は声を掛ける。