二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第四話 ミレーネ(1-4)
王宮の端にある飾り気の無い一室で、ミレーネとメルシアは王宮のお抱え魔術師から白魔術の講習を受けていた。
講師はハリアーという名の大魔術師で、もじゃもじゃの白眉毛と顎髭を蓄えた顔は、童話に出てくる魔法使いそのものだ
「ミレーネ殿下、ろうそくに火を灯せますかな?」
十五歳になるというのに、ミレーネに出される課題は幼児と同じレベルだ。
それなのに、ミレーネがいくら頭の中で炎を思い浮かべてろうそくに導こうとしても、ろうそくの芯は燻ぶりさえしない。
ミレーネは幼い頃神童と言って期待されたが、成長するにつれて魔術が使えなくなり人々を失望させるのを感じて、肩身の狭い思いをしていた。
両親やアイリスからは、魔術量が枯渇したのではないかと心配され、名高い魔術師が呼ばれて、ミレーネは診断を受けた。
結果、原因不明の魔術量の減少だということで、魔術師たちから日替わりで魔力の注入が行われたが、底の抜けた鍋のように一瞬だけ満たされた魔力量は、あっという間に体内から消えてしまう。
食事療法を行い、妖精たちに祈りを捧げたが無駄だった。
挙句の果てに、何者かがミレーネを呪ったのではないかと噂が広まり、大魔術師に水晶でミレーネにかかった災いを覗いてもらったが、何も映りはしなかった。
「ミレーネ殿下、集中してもう一度やってみてください」
ギュッとお腹に力を入れて、ろうそくの芯を睨む。空中に光が集まりポッと小さな炎が浮かび上がり、ろうそくの芯へと移動した。
講習中に何か事故があった場合に対処できるように控えていた医師や侍女たちから、わぁっと歓声があがる。
「ミレーネ殿下の魔術量がお戻りになった」
「まぁ、なんて生き生きとした炎でしょう」
このくらいなら王族の誰もができるのに、ミレーネを励まそうとして、みんなが喜ぶ姿に申し訳なさを覚える。
炎はミレーネが出したものではない。隣にいるメルシアが見るに見かねて、ミレーネに手をかそうとしたのだろう。
みんなに真実を告げなければ。自分の魔術ではないと。
本当は黙っていたい。でも、できたフリをしたって、細工が露見した場合には、余計にみんなを落胆させるだけだ。
それどころか、卑怯者のレッテルを貼られてしまったら、それこそ立ち直れなくなりそうだ。
次のお話をお楽しみください(*´▽`*)
二人のプリンセス 愛と憎しみの魔法 第四話 ミレーネ(2-4)|風帆美千琉 (note.com)
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