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つきまとう女

昔書いたオリジナルのショートショートです。
pixivに文庫メーカーで作成したものを掲載しております。

つきまとう女

 女につきまとわれ、俺は逃げるように引っ越した。生活全てを変え、友達にも何も告げなかった。ひっそり暮らせば、助かると思っていた。
 だがここも安住の地ではなかった。俺にはわかる。誰かが俺を見ている。あいつだ。あいつがここを見つけたんだ。
 俺はぞっとした。また逃げるのか? だが俺はその前に確かめたかった。本当にあいつなのか? どうやって俺の居場所を知ったんだ?
 俺はあいつのアパートに行ってみることにした。俺がいたアパートの隣だ。
 あいつは引っ越した後だった。俺は管理人に聞いた。あの女には会ってないと言う。引っ越しの手続きは電話ですませ、行き先は言わなかったらしい。頼んであいつの部屋に入れて貰った。だが手がかりは何もない。
 すると、ふふふと女の笑い声が聞こえた。部屋には誰もいない。いるのは俺だけだ。空耳か? だがまた声が聞こえた。
「あたしよ」
ぞっとするような声は確かにあいつだ。
「あたしから逃れようなんてだめよ。あたしはずっとあなたの後ろについてるわ。ずうっとね」
後ろ? 振り向くと俺の影がするすると立ち上がり、俺の目の前に立ってにっこり笑った。
「ついていくわよ、一生」

        終わり

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