ユニコーンの角
昔書いたオリジナルのショートショートです。
pixivに文庫メーカーで作成したものを掲載しております。
ユニコーンの角
僕らユニコーンは、汚れてない乙女だけに姿を現すものだけど、僕がリズに恋したと言ったら、仲間達は笑った。
だってリズは娼婦だから。毎晩街角に立って、知らない男と寝るふしだらな女だから。でも僕にはわかる。リズの心は汚れてない。
誰に対しても優しいリズは、事故で両目が見えない。けれどそれでも明るさを失わない。そんなリズだから、僕は好きになった。
リズはいい娘だ。だから知らない男の「ユニコーンの角を粉にして目に塗れば治る」という言葉もたやすく信じた。
きっとユニコーンの角で儲けようとしているんだ。
僕はリズのために何でもする。彼女のためなら、ユニコーンの命の角をあげたっていい。それで僕が死ぬとしても。
でも、君をだました奴は許さない。
そして僕は、君の前に現れた。思った通り、奴も一緒だ。
リズを使って、僕をおびき出し、僕の角を一人占めしようとしているんだ。
だけど僕は負けない。
奴が飛びかかってくるのを素早くかわし、前脚で一撃を与える。奴はあっけなくのびた。
振り返ると君は、にっこり微笑んでいた。
君がのこぎりを出してきても驚かなかった。僕はそのつもりだったもの。
でも僕は聞いてしまったんだ。君の声を、薄れる意識の中で。
「これで金持ちになれる。見えないフリをした甲斐があった」
終わり
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