大浦滞在記

大浦は、高齢化率100%。
人口約10人の小さな集落です。

集落に住む人間より、山にいる猿の方が多いというなんとも不思議な集落。

周囲を山に囲まれているのに海が見え、山道を下ると海に出ることができる。

たまに、他所から釣り人がやってきて糸を垂らします。

田んぼとツワ畑が広がり、水の音が響く。
雨の日には雲が山にかかり、神話のような世界が広がります。


突然やってきた彼女に「こんな田舎に何しに来たのね」と大浦の人は優しく尋ねます。


彼女は、逃げてきました。


うまくいかなかった就職、カードやローンの支払い、恋人との初めての同棲、家事の負担、経済的な心配、職をもっていないことの不安、堂々と連絡もできない母への思い、将来の夢に対する疑い。

ぜんぶひっくるめて楽観的にふるまうこともありましたが、それは不安の先延ばしで、何一つ根本的な解決には繋がっていませんでした。


「逃げたい」


誰も、彼女が大浦に来た本当の理由を知りません。
彼女自身、本当はわかっていなかったのかもしれません。

これは、23才の彼女が大浦で過ごした数日間の物語。


短い旅が教えてくれた「彼女自身の物語」です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?