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人魚の隠れ家

瑠璃色にも勿忘草色にも見える澄んだ色が広がる海。波音だけが静かに聞こえ、キラキラと輝きを放つ小さな貝や石が広がる入江。これは誰も知らない小さな島々が点在する南の海のおはなしです。


今日もまた、ひとりの人魚が小さな貝を抱えて入り江にやってきました。水面から顔を出し、誰もいないことを確認してからその小さな貝を置くと「これでいいわ」と満足げにうなずく彼女。

ここは、彼女が作った場所なのです。

この場所を見つけた頃は、入江の少し大きめの岩に腰掛けて波の音を聞きながら過ごしたり、水平線に沈む夕日を見ていただけだったのに、私のうろこのピンクがもっとそばにあればいいのに・・・って思ったの。うん。もう少しピンク色したものを探してこようっと。

どんどん素敵な場所になっていくから、みんなに自慢したくなってきちゃった。あと少しだけこの景色を独り占めしたら、みんなに教えてあげよう。

だって、ここには恐ろしい人間が来ないのよ? とっても静かに過ごせる場所なの。浅瀬で泳いでるお魚さんとも仲良くなれるし、仲のいい友達だけに教えてあげることにするわ。と笑顔で海の中に戻っていきました。


それから数日たったある日・・・

「ねえ、エイナ。どこまで行くの?」

エイナと呼ばれているのは、あのピンク色をした宝物を入江に運んでいた人魚。エイナは楽しそうにレナとソフィを誘って、あの秘密の場所に案内している途中なのです。いつも以上に楽しそうな雰囲気に、小さな魚たちも興味津々な様子で後をついて泳いでいきます。

「ん~と、誰も知らない秘密の場所。私の大切なものを集めた隠れ家ってところかな?」

彼女たちもピンク色が大好きだし、ほかの人魚たちの目が気になって話せないことも、あそこなら誰にも邪魔されないから大丈夫。きっとレナとソフィは気に入ってくれるはず。と、早くあの秘密の場所を教えたい気持ちをこらえつつ、先を急ぐエイナ。

「ほら、着いた。 ここよ。」

「えっ・・・」「なに・・・ ここ・・・」と、目の前に広がる素敵な光景に言葉をなくしたレナとソフィ。そこはいつも見慣れている瑠璃色の海・・・ではありませんでした。まるで宝石箱の中に迷い込んだかのような景色だったのです。

すぐにその場所は3人だけの『秘密の隠れ家』となり、時間を忘れておしゃべりを楽しむだけでなく、ただ静かに波の音を聞くときもあれば、星空を見上げながら夜更かししたり・・・と、かけがえのない友だちとの時間を過ごす大切な居場所となったのでした。




実際に海岸で拾ってきた貝殻に、レジンで小さな海を作っているときに「人魚の隠れ家」というキーワードが浮かんできたので、それを物語にしてみました。

夏のインテリア小物としてお使いいただけるよう、小さな海をテーマにした貝殻アート3個セットで販売中です。


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