雑談:広告可能な歯科専門医が増える件

2021.7.8の厚労省ワーキンググループによる検討会で、歯科で広告可能な専門医を増やす方針で検討しているとのことで、今回はそれに関する雑談です。


検討内容

従来の専門医
・口腔外科(日本口腔外科学会)
・歯周病(日本歯周病学会)
・小児歯科(日本小児歯科学会)
・歯科麻酔(日本歯科麻酔学会)
・歯科放射線(日本歯科放射線学会)

に対し下記の専門医の追加が検討中です。
・歯科保存
・歯科補綴
・矯正歯科
・インプラント歯科
・総合歯科

名称は仮称で学会も未定です。


もともと麻酔と放射線はいらなかったような‥‥

いやもちろん歯科麻酔という専門性にも歯科放射線という専門性にも大きな意味はあるんですよ。

でも「広告」っていうのは、一般人である患者さんが診療の質を推し量るためのものでしょ。
歯科麻酔の専門医や歯科放射線の専門医がいる歯科医院を選ぶ意味って‥‥なくないですか?

せいぜい「静脈内鎮静が対応可能かどうか」という情報があれば事足りるような気がします。


歯科医院が麻酔や放射線の専門家を雇うときには情報としては意味があると思いますが、患者さんが選ぶときに判断基準として推奨される分野じゃない気がしませんか?

や、まあ別に広告可能でも悪いとは言わないですが。
他の分野を差し置いてこの2つだけ入ってたのはな気がしましたね。

必要性がないんだからそもそも検討しない、他を先に検討する、っていうやり方が妥当な気が‥‥。


歯内療法がないし、保存歯科があるのはおかしい

保存って
・保存修復
・歯内療法
・歯周病
の3分野でしょ。

で、今まで歯周病があったのに、歯科保存が追加。

これおかしいですか? 重複してますよね。

歯科保存学会の認定基準がそうなってるのは知ってますけど、それが妥当だと考えるのはおかしいですよ。


明らかにこう分けるべき
・保存修復
・歯内療法
・歯周病


まず歯内療法の専門医の追加を検討すべき。(→歯内療法学会)

そして次に保存修復だけの専門医を用意すべきですよ。
日本歯科保存学会とかに働きかけて。


患者さんへの適切な情報提供って考えたら間違いなくそうでしょう。


補綴も分けるべき

同じように、補綴も本来は下記の3分野だけど、きちんと分けるべきですよね。
・義歯
・クラウンブリッジ
・インプラント


これも学会の実態に合わせてひよってるんだろうけど、明らかに分けるべき。

義歯で補綴の専門医とった人は別にクラウンブリッジの専門性は特別高いわけじゃないし、クランブリッジの人は義歯なんて全然できないですよ。

それなのに「補綴の専門医です!」って義歯の人がクラウンブリッジできるって言い張ったり、クラウンブリッジの人が義歯できるってうそぶいたりしてるのが現状じゃないですか。
これって適切な情報提供がなされていないですよね。明らかに。

ちゃんとあるべき姿を提示しましょう。


PDとFDも別っちゃあ別だけど、それはさすがに分けなくてもいいかなと思います。患者さんの目線に立って考えたら、そこまで専門性を分割するのはかえって混乱を招くように思うので。


インプラントはハードルが低くてフェアじゃないかも

「インプラント歯科」はまず間違いなく日本口腔インプラント学会の専門医になると思うんですが、ここの専門医ってちょっと異質なのが実態ですよね。

他で候補に挙がってくる専門医って、大学病院で本当にきちんと研鑽を積んで、開業医とは桁違いなスキルを持ってる人です。

でも日本口腔インプラント学会はインプラントっていう性質もあって、別に大学で専門的にやってるわけでもなく、開業でそこそこインプラントの経験を積んだ人たちが持っているというイメージ。


だからここの専門医を専門医として認めてしまうと、他に比べてちょっとどうなのかなという気が正直してしまいます。

先生方には申し訳ないんですが。


専門医は年代によって質が違うことも課題かも

いま専門医の広告が可能な学会の中にも、「昔は経験年数だけで専門医が取れた」ような学会がありますよね。
だから昔専門医を取った人のほとんどはまともなスキルを持っていなかったりします。

そういう人も一緒くたに専門医として広告可能にしてますが、それも非常にゆゆしき問題なので、きちんと取り組むべきだと思います。


総合歯科は難しそう

少なくとも今歯科医学界連合に入っている学会の中には、総合歯科の専門医を認定できる学会ってないように思います。

そもそも学会の位置付けとして、総合的な診療を志している学会がない。


可能性があるとしたら、我らが日本ヘルスケア歯科学会だけだと思ってます。


認定衛生士も広告できてほしい

たぶん医科がスタートだからこの発想がないんだと思うんですが、認定衛生士も広告可能であるべきですよ。

だってまず歯周治療なんて衛生士さんの仕事じゃないですか。
その質が十分に高くて、きちんと適応選んでたら歯周外科なんてほとんど発生しないですよ。
だから、それこそ歯周病専門医の方が広告できなくてもいいくらいだと思っています。


下手したら歯科医師の診療の質よりも再発防止に効いちゃう、カリエスリスクのコントロールも衛生士さんの仕事。

健康の維持に絶対必要な資料採りも衛生士さんの仕事。


看護師さんは医師のサポートであって治療の質を決めるのはあくまで医師、っていうのが医科の理解なのかもしれませんが、それとは違って、歯科衛生士さんのスキルは本当に直接的に患者さんの命運を握るメチャクチャに重要な要素ですよ。

それを正しく推し量るため、認定衛生士の広告は絶対に可能であるべきだと思います。


でも認定衛生士が認定できる学会は‥‥

認定衛生士といえば一番ブランドが強いのは間違いなく日本歯周病学会ですが‥‥。

認定の中に、上に挙げたようなカリエスリスクのコントロールや資料採りが含まれていないから、歯科衛生士さんに必要な能力が網羅されているとは到底いえないですよね。

実際のところ、コネやその他黒いウワサまであって、認定基準に対して適切な審査が行われているかどうかも正直疑わしいという気もします。


少なくとも網羅性という点では同じく日本ヘルスケア歯科学会の認定衛生士に軍配があがるので、採用するとしたらそちらかなと思います。


もっというと院長・医院としての認定がほしい

上に書いたように、歯科は医科と比べてちょっと特殊で、歯科医師と歯科衛生士が直接的に診療にあたるから、両方のアウトプットが大事なんですよね。

そして異なる専門職両方のアウトプットが大事ということは、両者がきちんと連携し一貫性をもって運用されているかどうかが、ものすごくクリティカルなんですよ。

最近になって医科で総合診療が出てきたのもそういう流れでしょ。
入り口をきちんとして、科同士の連携もきちんと交通整理するのが大事だよね、っていう考え方。


だから、それらを実現できる院長として(ドクターという要素ではなく、マネージャーとしての要素)の質、医院としての質、っていうのが大切。
なので、それを認定し明示することが患者さんにとって大切になってくる。

これも広告可能にしてほしいですよね。

これまた日本ヘルスケア歯科学会のヨイショになっちゃうけど、ここの認証医院みたいな制度ですよ。
これがあるべきだと思います。



長くなりましたが、今回は以上です。


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