2021年3月に目に止まった本たち

2021年3月に発売された本で気になったり,目に止まったものを刊行順に紹介していきます.

『分子地球化学』
高橋嘉夫編
名古屋大学出版会
6,930円(税込)
2021年3月10日発売
HP:https://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-1018-4.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4815810184/ref=cm_sw_r_tw_dp_N9HV925GG9P5KS5X0S9E
地球科学における諸現象を原子・分子レベルから元素の性質を加味し考察していく1冊.編者である高橋嘉夫先生は,X 線吸収微細構造法による地球化学の専門家であり,その研究成果がまとまったものとなっている.たとえ,このような研究に興味がなくとも,化学から地球科学を考える視点というのは面白いと思うし,「序章 分子地球化学とは」,「第1章 元素の地球化学的分類と分子地球化学」,「第2章 化学熱力学」,「第3章 表面錯体モデリング」は地質学専門の学生にとっても勉強になるであろう.

『鳥類学は、あなたのお役に立てますか?』
川上和人著
新潮社
1,595円(税込)
2021年3月17日発売
HP:https://www.shinchosha.co.jp/book/350912/
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4103509120/ref=cm_sw_r_tw_dp_W2JMKYE0B7371MRNNHYP
『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』,『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』など数々の名エッセイを執筆され,NHKラジオのこども科学電話相談でも「バード川上」として有名な川上先生によるエッセイ.個人的に,西之島編は特に興味深かった.

『歴史のなかの地震・噴火 新刊:過去がしめす未来』
加納靖之・杉森玲子・榎原雅治・佐竹健治著
東京大学出版会
2,860円(税込)
2021年03月19日発売
HP:http://www.utp.or.jp/book/b555769.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4130637169/ref=cm_sw_r_tw_dp_CX0MGZESMP5MVGTZPFR5
過去日本であった地震・火山について,歴史学と地震学から迫る.東京大学の駒場キャンパスで開講されている授業の書籍化.これまでの災害について,歴史と科学の両観点から知ることができる.

『Python数値計算プログラミング』
幸谷智紀著
講談社
2,640円(税込)
2021年3月22日発売
HP:https://www.kspub.co.jp/book/detail/5227350.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4065227356/ref=cm_sw_r_tw_dp_R63V4SHKN54H5HJTB50M
数値計算に関する本は昔から多くあったが,そこで解説されている言語はC言語などが多かった.本書はPythonのコードとともに数値計算について解説がされており,プログラミング初心者でも手に取りやすくなっている.必要となる数学のレベルはやや高いので学部3, 4年生が読むのに良さそうなレベル感.

『学振申請書の書き方とコツ改訂第2版:DC/PD獲得を目指す若者へ 』
大上雅史著
講談社
2,750円(税込)
2021年3月22日発売
HP:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000147760
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4065231078/ref=cm_sw_r_tw_dp_XYHZW18CBW8AN83VT524
審査に通るような学振申請書の書き方の指南書.採用者の申請書も数多く掲載されており,実際に書く際に,サンプルとして役立ちそう.

『ゼロからのOS自作入門』
内田公太著
マイナビBOOKS
4,180円(税込)
2021年3月22日発売
HP:https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=121220
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4839975868/ref=cm_sw_r_tw_dp_7B85K5QEGBEESGTNE9TZ
OSを自作して理解する本.章構成は『30日でできる!:OS自作入門』を意識して(?)31章構成.C++でコードを書いてオリジナルOSである「MikanOS」をつくり,OSの仕組みを理解する.

『探究する精神:職業としての基礎科学』
大栗博司著 
幻冬社
1,056円(税込)
2021年3月25日発売
HP:https://www.gentosha.co.jp/book/b13614.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/gp/product/4344986148/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i6
素粒子物理学者である大栗さんによる科学をテーマにした随筆.幼少期からの半生が振り返られる.2021年2月には,同じ素粒子物理学者である橋本幸士さんによる『物理学者のすごい思考法』が発売されるなど,物理学者随筆・エッセイが相次いで発売されているのは個人的にとても嬉しい.

『デジタル細胞生物学:データベース化・ImageJ・R・コマンドライン・Git』
三浦耕太・塚田祐基翻訳
メディカルサイエンスインターナショナル
3,300円(税込)
2021年3月26日発売
HP:https://www.medsi.co.jp/products/detail/3791
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4815730121/ref=cm_sw_r_tw_dp_KW02KEQ31RAF9E713JK1
細胞生物学の研究を進める上で,コンピュータの活用をノウハウをまとめた本.実験の計画,記録,データ保管,解析,結果のまとめ方が網羅されている.ImageJやRなどのソフトの解説もされている.

『これならわかる機械学習入門』
富谷昭夫著
講談社
2,640円(税込)
2021年3月29日発売
HP:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000348001
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4065225493/ref=cm_sw_r_tw_dp_S54QHC37JDJQ9VE6D120?_encoding=UTF8&psc=1
物理学者による機械学習の入門書.基本的な数学の解説から始まり,最後には最新の論文と同じように解析ができることを目指す.機械学習の理解のために,物理の例が多数用いられるので,物理の素養のある人は特に相性が良さそう.

『熱力学の基礎第2版:熱力学の基本構造』
清水明著
東京大学出版会
3,300円(税込)
2021年3月29日発売
HP:http://www.utp.or.jp/book/b555767.html
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4130626221/ref=cm_sw_r_tw_dp_B8ZHF1R5VGG1S2MGZ8MM
日本は豊かな国で,熱力学を勉強するのに多くの優れた教科書が存在するが,清水明先生の『熱力学の基礎』はその中でも特に評判の高い本であった.今回発売され本は,2007年に出版されたものの改訂版である.改訂にあたり,I, IIと2巻に分冊化されている.新旧の目次を比較すると,Iでは第1版の3/4,IIでは残りの1/4と新たな内容が加筆されているようである.前書きを読むと,IIでは相転移について,一成分系のみならず、多成分系についても紹介され、化学熱力学への適用について多くのページを割いて,力を入れてくれたことが窺える.清水先生自身のHPの紹介もとても参考になると思う.
https://as2.c.u-tokyo.ac.jp/lecture_note/TDbook.html














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