Kazuya Komon
Earth Day 2022 Special: 日本版炭素排出量計算エンジンAPI 「Carbnc」 デモ公開
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Earth Day 2022 Special: 日本版炭素排出量計算エンジンAPI 「Carbnc」 デモ公開

Kazuya Komon

4月22日はEarth Dayです。環境保護活動の功績を称えるとともに、長期的な持続可能性への取り組みに対する意識を高める日です。昨年よりこのタイミングでいくつかの環境系のテクノロジーを紹介してきましたが、これらのプロダクトをヒントに日本版の炭素排出量計算エンジンAPI「Carbnc」を開発したので、その背景も含めてご紹介したいと思います。

脱炭素系サービスの概況

個人的には昨年あたりから脱炭素系サービスの存在感が加速してきたと思います。企業の行動変容としては既に多くの企業が取り組んでおり、各社のサプライチェーンにおける排出量の計測・可視化においては様々なソリューションも出てきています。一方で、個人向けも様々なサービスが出てきています。下記チャートは主に米国でのサービスを整理したものです。

脱炭素系サービスの例

より求められる排出量計算のリアルタイム性

上図のように整理すると、それぞれのサービスで使い方の特徴も分かれてくることが見えると思います。例えば企業向けは、年に1〜数回の報告時期にデータが揃っていれば良いので、それほど排出量の計算等におけるコストも気にするところではなく、むしろその精度の方が重要と言えるでしょう。一方で個人向けは、刻一刻と変わる自身の生活や消費に対応するべく、リアルタイムでの排出量の把握が必要となりそうです。

DISで行ったリサーチによると、個人向け脱炭素系サービスでよくあるフィーチャーは以下です。①まずユーザーの生活行動・カード決済情報などをもとにして排出量を可視化し、更にサービスによってはそれらを削減するためのアクティビティがあり、②そこからオフセットや③送客と言ったアクションへと続きます。このように、排出量の計算とそこからの可視化やアクションは、企業向けに比べるとよりリアルタイム性が求められるようになります。

個人向け脱炭素系サービスのよくあるフィーチャー

ペインポイント

そこで課題となってくるのが、排出量計算に必要な係数です。現状は、これらの分野がまだ新しいからなのか、データ自体もあちこちに散らばっていたり、係数の種類分けや単位が揃っていなかったりします。

日本国内においては、いくつかの省庁や大学・団体などが分野に応じて排出量の係数を公開していたりします。例えば、環境庁はこちらのサイトにて、排出量を算定するための原単位を一覧にまとめたデータベースを公開しています。しかし、下図のようにデータベースとはいえxlsや版によってはpdfであったりするために、アプリ等でリアルタイムに利用するには向いていません。また、原単位の種類分けや単位も、サービスによって使いやすさにバラツキが出るでしょう。そして、これらが国によって更に異なる訳です。

排出原単位データベース Ver.3.2 より引用

海外でのソリューション

この問題に対していくつかソリューションが出てきています。それぞれ係数をDB化し、アプリで使いやすいAPI化しているものです。では以下で具体的に見ていきましょう。

Carbon Interface

既に以前取り上げたので、詳細はこちらを参照頂ければと思います。

シンプルなAPI形式とわかりやすいフリーミアム型ビジネスモデルで、尚且つ主要なユースケースに絞られており、非常に使いやすいものだと思います。

Climatiq

こちらは当noteでは初掲載となりますが、ドイツはベルリンのスタートアップで、2021年創業で$3.2Mをシード調達しています。環境情報のWikipediaを目指すことを標榜しており、非常に幅広いデータを集めています。下記のキャプチャにあるように、なんとコンピューティングリソースからや各種交通手段やゴミからも排出量が計算できます。

ClimatiqのAPIリファレンス

また、利用は無料で誰もがオープンソースのような形態でデータ貢献できることも興味深い特徴です。確かに、欧州は環境意識が高くこれらデータのニーズがある一方で、各国の基準や係数が異なるために、こう言ったデータソースがまとめられていることは非常に意味がありそうです。

日本版排出量計算エンジン: Carbnc

さて、そのような訳で、私たちDISも日本版のものを作ってみました!

実際、DISでもいくつか脱炭素系サービスの開発に既に取り組んでいますが、毎度これら係数を探してDB化するのも手間でした。先の環境省ものをはじめ、いくつかをDB/API化し、アプリから簡単に使えるようにしてみました。

開発コードネームはCarbon Calculatorの略でCarbnc(カァ〜ボン)と呼んでやって下さい。まだアルファ版なので、正式名称は追々考えます。

エンジン全体像としては以下をイメージしていますが、これから順次データの拡充やAPIとしの実装を進めていきたいと思っています。

Carbnc 全体イメージ

Carbnc 活用デモ

なかなかAPIの説明は伝わりにくいので、CarbncのAPIを活用したサービスのデモをお見せしたいと思います。こちらは食事からの炭素排出量を計算するもので、レシピサイトを見るとその料理からの炭素排出量を即座に見られるようにChrome Extentionで作ってみました。以下、クラシルのサイトにて試してみました。

出典:クラシル

原材料をベースにCarbnc APIを参照することで、二酸化炭素排出量を計算しています。全体の排出量に加えて、インパクトの高い材料のトップ3を表示し、二酸化炭素排出量の多い素材を発見し入れ替えたりできることを想定しています。まだあまり食事での排出量など皆さん考えたことがないかもしれないですが、例えば牛肉と鶏肉での違いなどそれなりに大きいものです。美味しく脱炭素をしましょう!

出典:クラシル

まとめ

今回は、個人向けを中心とした脱炭素系サービスの最近の特徴と、それらを開発していく上での課題・ソリューション、そしてDISで行っている研究開発のご紹介を行いました。

特にCarbncについては、これから様々な企業とコラボレーションしながらデータを拡充し、日本での脱炭素系サービスの発展と、ひいては日本の脱炭素に貢献していきたいと考えています。

Carbnc APIを活用したサービス開発やデータ連携にご興味ある方は、info@dentsu-innovations.comまでご連絡下さい。

また、今回はご紹介できませんでしたが、人に着目した脱炭素系の行動変容を促すサービスの開発に現在取り組んでいます。企業のサプライチェーンからの排出は、昨今多くの取り組みがなされておりますが、これからは私たち一人一人の「人」も行動変容していく必要があると思います。小さな変化でも皆で足せば大きなものになるとの想いで、開発をしています。こちらもCarbncが裏で使われています。近々アナウンスができると思いますので、ご期待下さい。

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Kazuya Komon
サンフランシスコ・ベイエリア在住。Dentsu Innovation Studio Inc. COO。日系SIer米国法人VPを経て、現地にて事業売却・新会社設立。エンジニア→ミシガン大学MBA。技術と経営の両立を目指しています。