mokuren

僧侶・心理療法家・母子精神保健医

mokuren

僧侶・心理療法家・母子精神保健医

マガジン

最近の記事

統合失調症という、脳の病気のおはなし

 久しぶりのnote、今回は統合失調症という病気についてお話ししたいと思います。  25年前にはじめて担当した患者さんのことを、今でも思い出さない日はありません。15歳のまだあどけなさが残る男の子でした。 入院した彼は私にしがみついて、ふるえながらこう問いました。 「先生、僕、治る?」 私はとっさに 「治るよ、ぜったい、治る」 と答えました。 そのことを指導医の先生から叱られました。 「治らない病気なのに、安易に治ると言ってはいけない」 たしかにそうなのかもしれないけど、あ

    • 私はあなたに何をもたらすことができるのだろうか

      「自分の果実」について考える。 私という木に、たわわになった果実。それは、誰かの空腹を満たすためにある。 遠い昔、赤ちゃんにおっぱいをあげていたとき、赤ちゃんが飲んでくれないとおっぱいがひどく困っていたのを経験した。 お乳は赤ちゃんの栄養になる。 私の果実もまた、誰かの栄養にならないだろうか。 私の果実を必要とするひとは、どんな方なのだろう。 2021年は「果実」がまだもひとつよくわからなかった。対人援助職の特にすぐれた方々にお会いしてお話ししてきた中で、少しずつわか

      • はじめる。

        皆さま、あけましておめでとうございます。 お立ち寄りいただき、ありがとうございます。 久しぶりのnoteです。長い間、書けませんでした。 でも、先ほど尊敬するやまがたてるえさんのインスタライブを拝見して、背中を押していただいたので(というか、蹴り飛ばしていただいてw)書くことにしました。書けるのかな…こわいけどとにもかくにもやろう。 さて「はじめる。」とは、何を? 2021年にやりたいと思いながらできなかったことを始めます。 できなかったのか。 いえ、やらなかったのです。

        • タロットと自分の奥底へ

          昨晩、はじめてタロットの会を開催しました。タロットはあやしいもの、占いはあやしいもの。でもあやしいものがなくなった世の中って、たぶんあまりおもしろくない。とはいえ、こわい要素はとり除いて「タロットと遊ぼう」をご提案したつもりです。タロットは心を遊ばせてくれます。それは知ってたつもりでしたが、他の人と一緒にやってみて、想像していた以上にすごかったので驚きました。一番楽しんでたのは私だったかもしれません。 タロットで遊ぼうっていうより、タロットが私たちと遊んでくれて、遊ばせてく

        統合失調症という、脳の病気のおはなし

        マガジン

        • 日記
          1本
        • パートナーシップ
          0本
        • 教育とは
          0本

        記事

          親離れと子離れと

           京都にひとりで出かけた息子から、写真が送られてきました。期末考査1週間前を切っているけれど、もう高校生なんだから自分に必要なものは自分でわかるでしょう?と送り出しました。  「京都に行きたい」とこの夏からずっと言ってて、ようやくそれが叶いました。体力の回復と気持ちもだいぶ立て直してきたかな。「行きたいところへ行って、人に気兼ねせず、いい景色を自分の中に取りこみたい」それはなによりもいい薬になると思う。そんな言葉を交わしながら、見送りました。  留学が延期になっていたのが先日

          親離れと子離れと

          明るいところを見る

           大阪も感染者数が増えてきました。ICUに入院されていた重症患者さんが亡くなられたそうですが、ご家族も入院されていて連絡がなかなかつかなかったとのことで、何ともやりきれない気持ちでいます。世界のあちこちできっとこんな悲しいできごとが起こっていて、明日は自身が経験するかもしれません。  「生老病死」生まれてくることは苦である。老いてゆくことは苦である。病気になることは苦である。死ぬことは苦である。この仏教の教えをひっくり返してみたいと思っています。こう考えるに至ったのは、真宗大

          明るいところを見る

          自分はどのような木でありたいのだろうか

           今日から大学の授業が再びリモートになりました。久しぶりのGoogle meetにもたもたしましたが、無事に繋がってホッとしました。ケースカンファレンスに参加させていただいて、いつもながら心理士の先生方の深いお言葉に感銘を受けました。  「バウム(テスト)は自己紹介だから」とコメントされた一人の先生のお言葉を反芻しています。  先日「(バウムは)書けない」といったケースについて伺いました。その子は画用紙に小さな小さな家の絵を描いていました。もう一枚は小さな小さな人の絵。それを

          自分はどのような木でありたいのだろうか

          就職が決まらなくて。

           ふぅ。なかなか就職先が決まりません。 世間では医者が足りないと騒がれてるのに、なぜ?  1997年に働き始めて(おぉ歳がモロバレ)、精神科指定医とか専門医とかを取りまして、現在産業医の資格取得中の、何があっても穏やかで看護師さんにあちこちでお菓子もらったりするタイプのわりかし使い勝手のいいおばちゃん医師だと自分では思ってるんですけども、なぜか働き口がない。  原因はわかってます。「リエゾン精神科医になりたい」しかも産科病棟があるところ、というオーダーがどうもあかんみたいです

          就職が決まらなくて。

          オンライン授業に関してたくさんの経験者の方々がさまざまなTipsをシェアしてくださっていることにめちゃくちゃ感謝しています。私もそうできるようになれたら。 ツツジがきれいに咲いている大阪からでした。

          オンライン授業に関してたくさんの経験者の方々がさまざまなTipsをシェアしてくださっていることにめちゃくちゃ感謝しています。私もそうできるようになれたら。 ツツジがきれいに咲いている大阪からでした。

          はじめてのオンライン授業

          大学院で精神医学を教えています。 って書いたら、すんごい偉い先生みたいな感じしますけど、その辺にいるふつうの臨床医です。 そんなふつうのひとが、なんでそんな偉いひとがするべきお仕事を引き受けたのか。 「恩返し」。それ以上でもそれ以下でもありません。 これまで多くのひとが私を育ててくれました。まあひどい若者でしたのに、ここまで「更生」したのはたくさんの恩人のおかげです。 なかでも、とある臨床心理士の先生には、ぺしゃんとつぶれてしまうくらい衝撃的な言葉をいただきました。

          はじめてのオンライン授業