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自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由 伊藤祐靖著

私はリアルなものが好きだ。麻生幾の地下鉄サリン事件の話も好きだが、これも引けを取らないぐらい面白い。

この本は著者である伊藤祐靖氏が自衛隊に入隊した経緯や、彼の人生を大きく動かすことになりうる能登半島沖事件について事細かに書かれている。
著者は大学を卒業後海上自衛隊に入隊、2年後に幹部候補生学校を卒業し防大の教官やイージス艦みょうこうの航海長等を歴任する。

そんな彼の人生を大きく変える出来事が起きた。能登半島沖事件である。
この能登半島沖事件は日本人の拉致の可能性が極めて高い北朝鮮の不審船を海上自衛隊と海上保安庁が追尾し、初の海上警備行動が発令された極めて異例の事件である。

そして、停止した不審船に対し立ち入り検査(武器を持って船に乗り組むこと)を行おうとするも当時の自衛隊では立ち入り検査を専門とする部隊が存在せず、乗組員の命の保証が出来ない危険な状態だった。
しかし、不審船は立ち入り検査をする前に逃げ去ってしまう。
この反省を踏まえ、海上自衛隊で初めてとなる特殊部隊、「特別警備隊」が組織される。
その創設のメンバーに伊藤氏も加わるのだが、海上自衛隊の組織間と彼の中で特殊部隊に対する認識のズレから彼は自衛隊を去ってしまう。

自衛隊や日本の国防についてよく考えさせられる本であり、何よりもリアルなので読み応えがある。
自衛隊に全く興味ない人にこそ読んで欲しい1作品である。