第5回/なぜドイツ代表は日本代表に負けたのか~戦術以外の要因から考える~

※本記事は日本VSコスタリカ、ドイツVSスペインの前に書きました。

W杯が始まった。
毎日フットボールを観ることが出来る喜びを感じつつ、寝不足の日々を送っている。
筆者は一介のサラリーマンの為、ライヴで追える試合は22時キックオフが限界。
以降開始の試合を観るとさすがに翌日の仕事に影響が出る。
出来ることならば全試合観たいところだが。。。

さて、既に皆様周知の事実かと思うが
日本代表はドイツ代表に2-1で勝利を収めた。
筆者はドイツ人の友人とスポーツバーで観戦していた。
周囲の雰囲気、試合の内容・展開も相まって
忘れることのできない試合になった。

劣勢必至の日本代表が逆転勝利を収めた要因については
概ね各メディアの分析と筆者が感じるところは一緒だ。
・劣勢の中、前半を最少失点で乗り切ったこと
・選手・配置を早めに代え、ドイツに対し先手を打ったこと
・ドイツ代表の油断
・ドイツ監督ハンジ・フリックの采配が精彩をを欠いていたこと
と、まぁこんな感じだろうか。

戦術面での分析は多くのプロの方が考察されているので
筆者は戦術以外でのドイツ敗北について考えてみたいと思う。

①ドイツ含めヨーロッパ各国のカタールW杯に向けたモチベーション

カタールW杯については
大会前から欧州各国から批判や、ボイコットの可能性も示唆されていた。
LGBTQや女性への人権迫害、W杯準備のために来ていた外国人労働者が命を落としたことなどが理由である。
とりわけ、LGBTQへの人権侵害は大きな問題として取り扱われ
イングランド代表や、ドイツ代表等では
"OneLove"という文字をキャプテンマークに入れることで
LGBTQを支持する姿勢を示そうとした(結果、これはFIFAに認められなかった)。
日本戦を前に、ドイツ代表イレブンは上記FIFAの決定に
集合写真で口に手を当て抗議を行った。
もはやサッカーどころの話でなくなってきていたのである。

口に手を当て抗議するドイツイレブン。https://msp.c.yimg.jp/images/v2/FUTi93tXq405grZVGgDqG8P2kwQarUOTC17WCg6dplRlcW_EY0l-nDMzZSWX8D0ZoZp557eMwsVeI15fsNt2EHBA4mSukwyymVudg2U1me5Nt1MFOKjsHShkxYr3uAbBa1f0NShxBv0AS20dq3izOunoGvo3_XbPOCFCo9ykGVo8pq06TEAEJjYl7Y_1k8PQToGxCbKidjJlqWcgB404qPnrqrXDVxgbbmfYvKU85Hl8DFFxVdGMYiz7klQ_st1s1EZctGVq0U1XN1UHiKg6vU43PkqaFN9lOG7qa2w_pzE=/121128_ext_04_0.jpg?errorImage=false

サッカージャーナリストの小澤一郎氏のyoutubeの中で
同じくジャーナリストの木崎伸也氏との会話があったが、
木崎氏は以下のように語っている。

「ドイツ国内でもW杯の批判で、集合写真でも口に手を当てて写真写ってましたけど、(中略)他の余計なことにものすごく気を取られていたのかもしれません」

「ヨーロッパの国が人権問題でサッカーに集中出来てないな、と。(中略)特にドイツはそうでしたし、イングランドももしかしたら大勝しましたけど、今後そういうのが出てくるかもしれませんし、そういう大会の傾向を感じてます」

「(ドイツ国内のメディアでは)ドイツ代表がどう戦うかよりも、もう人権問題しか出てない」

※一部文章に修正しているが、極力木崎氏が語った話そのまま文字にしている。

なお、日本戦翌日の英国紙"The guardian"のアクセス記事ランキングでは
日本がドイツを破った結果よりも、上記写真についての記事が上位となっていた(人権問題(ドイツ代表の集合写真)に関するアクセスが1位、2位。日本勝利の結果のみを伝えた記事は7位だった)。
イングランドでも結果より集合写真のことに人々は興味を持っていたようだ。

1位、2位ともにドイツ代表が集合写真で手を口に当てた記事についてであった。

このような状況では、いかに強豪チームであっても纏まるのは難しい。
結果論に過ぎないが、これも日本がドイツを破る要因の一つであったように思う。
なお、ベルギー代表のエデン・アザールはドイツ代表の行動に対し
「ああ、でもそれで試合に負けてしまったからね。そんなことしないで、勝った方がよかったんだ。僕らはサッカーをするためにここにいるのであって、政治的なメッセージを送るためにここにいるのではないし、そのためにもっとふさわしい人がいる。僕らはサッカーに集中したい」とコメントしている(出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/4eb7deb311244460bc273d07d9e8221585d1b952


②アジア・アフリカ勢のサポーターの多さ
複数の試合を観戦したが、カタール開催ということで
アジア・アフリカ圏のサポーターの数が多いように感じられる。
最初に気がついたのがチュニジアVSデンマーク戦。
チュニジアサポーターの数に驚いた。
南米は地理的に遠く、
ヨーロッパ各国は上記のように盛り上がりにイマイチ欠けている。
よって、今回のW杯でアジア・アフリカ圏のチームが躍進する可能性はあり、一方ヨーロッパ圏の国は思ったよりも苦しむ可能性がある。
ドイツはその影響をモロに受けてしまったのではないだろうか。
ちなみに日本VSドイツ戦はドイツ時間で14:00キックオフだったようだ。
さすがに仕事の時間帯。
国内の盛り上がりも欠けていた可能性がある。


③キャプテンキャラの不在
古くはローター・マテウス、オリバー・カーン、ミヒャエル・バラック、
フィリップ・ラームといった強烈なキャプテンシーを持ったキャラクターがドイツにはいた。
しかしながら近年、そのような選手が生まれてきていない。
ドイツ人の友人は「アントニオ・リュディガー以外に魂をもった選手がいない」と嘆く。

マヌエル・ノイアーは良いが、少し歳を取り過ぎた。
ヨシュア・キミッヒは適任のように見えるが、味方を鼓舞するようなタイプではない。
リュディガー、イルカイ・ギュンドアンはキャラクター的に良さそうに思えるが、過去の移民系選手の揉め事~メスト・エジルやルーカス・ポドルスキは国歌を歌わないことで一部国民から非難の対象になった~があったため、躊躇する部分があるのかもしれない。

確かに一昔前にくらべ、ドイツ代表選手の技術の質はとんでもなく上がった。
しかし一方で大切にしていた「魂」の部分が抜けてしまっているような状況なのである。


前回大会はやらかしてしまったとは言え
それでも腐ってもフットボール大国。
ここからどのように巻き返すのか見守っていきたい。









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