第8回/或る男の引退~マーク・ノーブル

あけましておめでとうございます。
本年も筆者ならびに本記事を宜しくお願い致します。
2023年もフットボールに感動・幸せをもらえる1年になることを期待してやみません。

さて、本年1回目の投稿だが
お正月休みということ(?)で、
好きだった選手のことを好きに書いていきたいと思う。

以前アリツ・アドゥリスについての記事を投稿した。
コロナ禍の影響で残念ながら現役ラストシーズンを現地観戦できなかった大好きな選手として紹介した。
今回も現役ラストシーズンを現地観戦できなかった選手を紹介したいと思う。


マーク・ノーブル

https://www.independent.co.uk/sport/football/transfers/west-ham-transfer-news-mark-noble-new-contract-2021-captain-deal-a8679686.html



"Mr.West Ham"とも呼ばれる。
若手の頃、ハル、イプスウィッチにレンタルで修業に出た以外ハマーズ一筋。
クラブの生き字引のような選手であった。
筆者が「ワン・クラブマン」と呼ばれる選手が好きなので、というだけでなく
同い年ということもあり、同選手を特別な想いで観てきた。

現在は分からないが、コロナ禍前2019年ロンドン・スタジアム訪問時には
彼のポートレイトが壁画に描かれていた。


プレースタイルに関して言えば
いわゆるアンカーの位置でボールを捌き、また危険なスペースを埋める能力に長けていた。
「ガチャ」と音がしそうな程強烈なタックルを仕掛け、
文字通り「根こそぎ相手を刈り取る」ような守備が印象的だ。
筆者もディフェンダーとしてプレーしているが
味方にしてみると、こんなセントラル・ミッドフィールダーがいてくれると本当に助かる。
また、PK職人、ミドルシュートも得意としており
非常に総合力が高い選手であった(強いて言うならドリブルでボールを運ぶようなことは出来ないタイプで、その辺はやはりデクラン・ライスなどのほうがよりモダンな感じがした。イメージで言うとキャリア晩年の小笠原満男に近いプレースタイル。)

もっとも、プレー以上に印象的なのはそのキャプテンシーだろう。
「どうしたらウエスト・ハムが良くなるか」「どうしたら試合に勝てるのか」
そのことを常に自問自答し続けた言動が目立った。
時にそれが賛否両論となるのだが。。。
そのエピソードをいくつか。


①ディアンガナ事件
クラブ期待の若手グレイディ・ディアンガナがウエスト・ブロムウィッチへ売りに出された際、経営陣を批判した。

”As captain of this football club I’m gutted, angry and sad that Grady has left, great kid with a great future!!!!! https://t.co/oNPPEp8Pt6— MARK NOBLE (@Noble16Mark)September 4, 2020

一選手がクラブの補強戦略について公に意見することは異例である。
下手するとチームの不満分子として自身が干される、あるいは放出の危険性がある。
しかしアカデミー出身の選手が簡単に売られてしまうことに我慢ならなかったのであろう。
例え相手がクラブの上層部に対してでも、「違うことは違う」と言える姿勢が大きな話題となった。

②アンデルだっこ事件
2016年FA杯でウエスト・ハムはマンチェスター・ユナイテッドと対戦。
ユナイテッドがリードしている終盤、ユナイテッドMFのアンデル・エレーラがケガで倒れる。
これを意図的な遅延行為とみたノーブルはアンデルを抱きかかえ、外で治療させた。
ちなみにこの行為は敵だけでなく
味方選手が同じような状況でも行っている(カール・ジェンキンソンが倒れている際も彼を外に出した)。
本当に大きなケガを負っている選手に対して、この行為は危険だが
彼なりに判断し、早く試合を再開・逆転を狙いに行ったのであろう。
良くも悪くも最後まで試合を諦めない彼らしいエピソードである。

自分よりも大きいアンデルをだっこする。
https://www.dailymail.co.uk/sport/football/article-3538682/West-Ham-star-Mark-Noble-loses-patience-Ander-Herrera-FA-Cup-tie-carries-Manchester-United-man-pitch.html


③ポグバ顔面鷲掴み事件
2018年プレミアリーグ。
こちらも同じくユナイテッド戦。
試合終盤ポール・ポグバのプレーに対しノーブルがぶち切れ。
首を絞める・顔面を鷲掴みにするなど大激怒。
意外にもポグバが冷静だったためそれ以上に発展せず。
試合後は仲良く抱擁。

これはよくポグバが耐えてくれた。
https://as.com/futbol/2018/05/11/internacional/1526021549_047091.html


④サポーター投げ飛ばし事件
2018年プレミアリーグ バーンリー戦。
ホームで0-3と不甲斐ない展開にいら立ったサポーター数名が試合中にピッチに乱入。
するとノーブルはサポーターを捕まえ投げ飛ばした。
試合後、
'I can understand the frustrations some of you are feeling. This season has not gone how we'd all hoped it would, but I would ask you to channel your passion to get behind the team, help us get through the season with our Premier League status intact, and we can sit down and reassess things in the summer.'

https://www.dailymail.co.uk/sport/football/article-5550025/West-Ham-captain-Mark-Noble-urges-supporters-team.html?ITO=1490&ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490

と、ファンの行動に一定の理解を示したものの
「その表現方法は違うだろ」と行動自体を断固非難する声明を出した。
迫ってくるファンに対して恐怖心があったはずだが、
毅然とした態度を見せたことは話題となった。

小柄ながら武闘派。
https://www.thetimes.co.uk/article/dont-protest-by-invading-pitch-noble-tells-west-ham-fans-ts25zbw0p


以上、いろいろと話題・問題となる言動が多かったものの
「すべては愛するハマーズのために」という姿勢から来るもの。
ハマーズの旧本拠地アプトン・パークの目と鼻の先に生まれ、
ハマーズでプレーし、キャプテンになることを夢見た少年。
他チームからのオファーを断り
決して強豪とは言えないクラブ(なんなら在籍の間2度もチャンピオンシップに降格している)に、それでも残り続けた。
下部組織から22年間在籍した男は
その名前にふさわしい"Noble=高尚な"キャリアを21-22シーズンにて終了させた。

惜しむらくは現役最終シーズンに躍進したヨーロッパリーグで優勝できなかったことだ。
ベスト4まで進んだものの、フランクフルトに屈した。
タイトルと無縁だった男だけに、獲らせてあげたかった。

イングランド代表歴もなく、プレー面は悪く言えば地味。
それでも多くのサポーターは彼のことを忘れないだろう。

ウエスト・ハム公式Instagramより。引退の日が近くなるに比例し
彼に関する投稿が増えていった。

ちなみに筆者はここ数シーズン、毎年ノーブルのネーム入りユニフォームを購入しているが、
次に誰のネームのユニフォームを購入するか、まだ決めていない。

古参であること、プレースタイルの好みから今シーズン以降はアーロン・クレスウェルにしようと思ってはいるが。。。


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