浅間明月記7

  【日常的な旅情】 2023年6月11日

 高崎を過ぎて国境のトンネルに入ると軽い耳詰まりを感じ読みか
けの本を閉じて唾を飲み込んだ。春から晩秋までの軽井沢長期滞在
中東京での所用がある時は新幹線を利用している。この間15回か
ら20回は往復している。
 東京から軽井沢までは1時間余りなので都心での移動のための所
要時間とほぼ同じである。ただ東京駅の新幹線の改札を過ぎると何
時も非日常の世界を感じる。ビジネスパースンもいるが旅人が多い
ことで私も旅を感じてしまうからだろう。昔は旅情を深めるために
缶ビールを飲んだりしたが、コロナ禍もあり今はペットボトルの茶
を飲んでいる。
 車窓から離山が見えてきた。晴れた日にはその先に浅間を見るこ
とができる。ホームに降り立つと多くの旅行者がいた。家族連れが
楽しそうに会話している。「ようこそ軽井沢へ、旅を楽しんでくだ
さい」と心の中でつぶやいた。
 階段を降りると妻が車で迎えに来ていた。礼を言って助手席に座
ると旅情は無くなり家に帰ってきた気分になる。別邸に到着すると
愛犬二匹が嬉しそうに迎えてくれた。「ただいま」と声をかけた。

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