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KAIRIはオレンジ小橋か?黒小橋か?

ターニングポイントだったFD2

6月14日、後楽園ホールにて小橋建太プロデュース興行「Fortune Dream 8」(以下FD)が開催されます。今年もバラエティーに富んだラインナップとなりましたが、個人的に一番注目しているのは、KAIRI選手の7年ぶりのFD参戦です。対戦相手が今もっとも旬なウナギ・サヤカ選手ということもあり、ファンからの注目度も高い試合でしょう。

KAIRI選手は宝城カイリ時代の2014年12月にFD2に参戦し(2016年6月のFD3にも参戦)、女子プロレス界トップの里村明衣子選手と対戦。試合には敗れたものの、里村選手の猛攻に倒されても、倒されても、すごい気迫で立ち上がり、必死に立ち向かう姿を見せ、熱い闘いぶりが高く評価されました。その姿に、ジャンボ鶴田やスタン・ハンセンに立ち向かう、オレンジ時代の小橋健太をオーバーラップさせたファンも多かったのではないでしょうか。

また、ホームリングとは違う観客、関係者が見守るなかでの試合で、いつもは何気なく使っていたダイビングエルボー(現インセイン・エルボー)に対して、絶賛の声が数多く上がりました。これをきっかけにKAIRI選手は、ダイビングエルボーを決め技として使うようになり、躍進していきます。いわばこのFDは、彼女にとって大きなターニングポイントだったのです。里村戦は“出世試合”と言ってもいいかもしれません。

KAIRI選手は日本に帰ってきたときから「FDに出て小橋さんに恩返ししたいと思っていました」と言います。ただ、今回の試合はかなり難しいシチュエーションでもあります。というのも、7年前とは彼女の立ち位置がまったく違うからです。

前述したように、FD2、FD3でのKAIRI選手は、“オレンジ小橋”として強大な敵に立ち向かう姿が評価されました。しかし、WWEでチャンピオンにもなり、多くの経験を積んできた今の彼女は、トップ中のトップであり、“オレンジ小橋”ではありません。

普段からKAIRI選手の試合を見ているファンは別として、FDでのKAIRI選手しか知らないファンは7年前の姿を思い描き、求めている可能性もあります。そうしたなかで、彼女がどんなファイトを見せるのか? そこに注目しています。

”絶対王者”黒・小橋のすごさ

今回のKAIRI選手に個人的に期待するのは、“黒の小橋建太”です。黒・小橋といえば、絶対王者時代。そんな姿を見たいと思っています。

小橋さんの絶対王者時代は2003〜2005年であり、新しいファンの方は呼び名だけしか知らず、その響きから「強さ全面押し」と勘違いしている人もいるかもしれません。

絶対王者時代の小橋さんのすごさは、どんな相手、どんなシチュエーションでも、最高の闘いを見せ続けていたことです。その根本にあったのは“オレンジ小橋”時代の、やられてもやられても立ち向かう姿勢でした。

絶対王者は強靭な心身を武器に、相手のすべてを受け止め、やられても、やられても立ち上がり、そのうえで上回るという完全燃焼型のファイトスタイルでした。トップ選手との対戦だけでなく、中堅レスラーとの試合でも、格下の外国人レスラーとの試合でも、相手の光を消すことはありません。お互いにすべてを出し切るため、試合後にはいつも爽やかな感動があり、両者に賞賛が集まり、ファンが熱狂したのです。

KAIRI選手は根本に“オレンジ小橋”を持っています。だからこそ、相手のすべてを受け止め、やられても立ち上がる、絶対王者の“黒・小橋”になれると期待しています。

対戦相手のウナギ選手は「ギャン期」突入後、男女問わずさまざまな団体で暴れ回っています。そのバイタリティや発信力、自己プロデュース力などは誰もが評価するところである一方で、“これぞウナギ・サヤカの試合だ!”という代表作を生み出すまでには至っていない印象もあります。

タイプはまったく違えど、レスラーとしてさらにステップアップを目指す部分に、FD2参戦時のKAIRI選手と重なるところがあります。KAIRI選手が“黒・小橋”になり、ウナギ選手の秘めたるポテンシャルをどこまで引き出せるか? また、ウナギ選手がKAIRI選手の想像を超えるエネルギーを見せるか? 宝城カイリにとってのFD2が出世試合だったように、この試合がウナギ選手の出世試合になる。そんな予感もあります。

根底にあるオレンジ小橋と、7年の時を経て身につけた黒・小橋。攻める強さと受ける強さ。二つのベクトルが違う強さを併せ持ってこその絶対王者です。かつて多くのファンを魅了した小橋プロレスを体現する、KAIRI選手の闘いぶりにぜひ注目してみてください。

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