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【インパクトカンパニーを名乗る】

〜マイルストーン3 〜
「創業20年を経てから本格的な成長が始まる」
という文字を本の中に見つけて、
「おお!もう時代は終わったと言われる我らの業界も、まだまだこれからだ。」
と言い切れるかどうか。ということを自身に問うてみた。

宿を開業して運営していく。とにかくお越しいただいたお客様に喜んでいただく。かつては、目の前のことを見て、ただその日その日を走っていた時期があった。
ペンションブームなるものがあり、その風も吹き去った後の現実を、人々は今どう捉えているのだろう。自分たちは、どう捉えていくのだろう。

クラウド活用で見えてきたリゾート地の仕事スタイル

インターネットの普及や、様々な端末類が進化したこともあって、リゾート地での仕事も暮らしも、ずいぶん変化してきている。

ペンション村をつくるという目的で、日本の各所でリゾート開発がされた頃は、おそらく今のような通信環境やリモートワークなどといった未来は、予想されていなかったのではなかろうか。(私が知らないだけで、実は当時から壮大な計画があたりして・・)

学校教育におけるICT活用をはじめ、広くデジタル化が叫ばれている今日この頃、強く感じることがある。それは、私たちのように小さなビジネスで生活をしている仲間たちが、このデジタル変革に取り組んでみたら、さらに別の世界が待っているという希望だ。

実は、この半年の間、宿のお客様が例年に比べて少ない機会にと、ICT活用をサポートする仕事に参画し、全国へ講師として出向く、あるいはオンラインでの仕事をさせていただいている。

そこで実感するのは、より人間らしい創造性を発揮する時間を作り出すために、いかにしてICTを使っていくのかが大切なんだ、ということ。
とかく、デジタルで何ができるか、とか、デジタル化したらこうなる、とか、上手く使える使えない、などというところに意識が向きがちだ。

けれども、使うことから始めるのは良くても、使うこと自体が目的になってしまったら、そもそもの目的とは違うところへ向かってしまうだろう。

講師業を務めながら、小さな宿やお店に、このデジタル活用のうま味をどう活かしていけるかな。ということを旅の移動中に考える。そして、気がついたコトがあれば家業に戻ってためしてみる。ということを日々積み重ねてみている。

情報をあつかう仕事であれば、通信環境が整ったリゾート地での業務も可能だ。宿は宿で、リゾート地にある宿の建物やその現場に来なくてはならない仕事がたくさんあるが、現地に出勤しなくても可能な仕事は、いくらでも創り出すことができる。と気づいたのだ。

里に住む子育て中のスタッフが、自宅でパソコンを使って仕事をしたり、地域の情報をまとめて顧客に配信したりするといったデジタル活用の業務なら、時間や場所を選ぶことなく行えるし、制作物にじっくり取り組んでもらうことも可能だ。さらに必要によってはオンラインでミーティングもできる。
時に、焚火を囲んでアイディアを出し合い、次に個々の都合の良い居場所で作業に取り掛かるといったスタイルも日常となってきた。

築いたものに、気づいた日に見えた景色

ペンションが流行った時代は過ぎ去ったと言われて久しい。
宿には様々な種類があるが、近年はさらに多様化していると私は感じている。まるで生き物のようである。その中で、いい意味でもそうでない意味でも、「オーナーの個性」が活かされている「小規模の宿」がペンションというものだと私は思っている。

新しい旅のスタイルが生まれている今、暮らすように旅をする人や、遊ぶように仕事をする人、仕事とリゾートでの楽しみをバランスよく取り入れている人、様々なスタイルがある。人々が、より多様なスタイルで、もっともっと多く「旅」をするようになったら、もしかしたら、旅館業は更にさらに面白くなるのではないだろうか。

昭和の時代に、家族全員が1台のテレビの前に集まって、一つの番組を楽しんだ頃とは様変わりして、好きな時に好きなことを見たり調べたりという、ひとり一台のスマートフォンを手にしながら過ごす人々。私たちの生活はどこへ向かっているのだろう。私たちの「旅」は、どのように変わって行くだろう。

27年間の宿経営を振り返って思うことは、時代は変化しても、人間の本質はそうは変わらない。ということである。人は喜びを感じたいと思っているし、楽しいことをしたいし、大切なひとと一緒に美味しいものを食べたいし、身体が欲すれば睡眠をとりたいし、生理的にも精神的にも、「ヒト」は何十年経っても「人」である。そのことはきっと、何か少しの変化はあったとしても、未来もずっとそう大きくは変わらないだろう。

ありがたいことである。
私たちが、この仕事を始めて30年近くの年月を経て築いてきたものは何か、と考えた時、いくつかの答えが出てきた。その中でも、もっとも大切だと思ったこと、それは「つながり」である。

「ひと」「こと」「もの」

これらの「つながり」に、デジタルの力が加わったらどうだろう。
事務的な仕事に加えるだけでなく、五感を大切にした実質的な「つながり」を、より大切に、更に価値あることにするために、デジタルを創造的に活用したらどうだろう。
「デジタルおもてなし」や「デジタル変革」がもたらす未来は、より価値ある、人間味や創造性の高い「リアル」へと誘う助けになりそうだ。

築いてきたものに気づいた時に見えたものは、もっと人間らしく、もっと開かれた風景だった。

斜陽産業からインパクトカンパニーへ

ペンションという言葉には、『年金暮らしで悠々自適に生活している人が、自宅の一部を旅人に使ってもらうスタイルだ』という意味もあると聞いたことがあった。20代で開業した私たちはその響きに少々いこごちの悪さを感じていたのは事実だ。建物が洋風だが価格は民宿、旅館でもなくホテルでもない、でも副業兼業はしていない。宿の種別でいえば、旅館業だ。
そんな理由もあってか、「田舎で小さな宿をやっている。」と言いながら、更に踏み込んで詳しく聞かれると、「ペンション経営をしています。」と答えてきた時期が長かった。
こうして過ごしてきた中で、最近気になるのは子供たちの未来だ。日々私たちが生活している中で、ささいなことでも常に選択をしているけれども、我々はその選び方に責任を持っているかどうか。そんなことを思うようになった。

これまでに築いてきたものと、新しいことを組み合わせてみる。それと同時に、今を最大に楽しむことと未来への選択の大切さ。欲しい未来を描いてみてはじめて確信を持って行動できることは多いし、またそれは独りで成せるものではない。
ひとつの宿としての営みを続けることは、私たちの楽しみや喜びもありつつ、これは真に未来への責任ある仕事なのだと考えはじめた。

昔は流行りましたよね・・ペンションって。
という言葉をかけられることもある。

「ぷれじーる」という名の宿をやっています。
(インパクトカンパニーとして・・と心の中でつぶやきながら)
そういうと、不思議と
「大変じゃないですか?」とか、「昔はよかったんでしょ?」
というような質問が全くと言っていいほど来なくなった。

これからは、個性的な宿はどんどんのびていくと思うし、私たちもそう在りたいと願う。そして、様々な人とのつながりから未来へとつながる「コト」を、今また仲間と共に創りはじめようとしている。
そう、インパクトカンパニーへと変化する道を選んだら、あとはその道中を仲間と楽しみながら進むだけだ。





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