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2024/07/06『妻を帽子とまちがえた男』

土曜日 くもり時々雨

朝、母の家で地域包括支援センターの担当者さんとの集まり。
介護認定されたことで使えるサービスは増えたけれど、母は予想どおり、あれもこれも嫌だと言う。
あんたは『いやいやえん』のシゲルか。

帰ってシャワーで汗を流したらしばらく放心していたけど、こんなことで1日終わるのは嫌だと思い直し、読んでいたKindle本の続きを読む。
目で読んだり、疲れたらアシストリーダーに切り替えたり。
読み間違いもなくはないが、文字も表示されるし今読んでいるところをフォーカスしてくれるのが気に入った。
このためだけにAndroidタブレットが欲しいくらい。

読んだのはオリヴァー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』。
長い間、電子積読していたものだ。
読み始めてすぐ、これは興味本位で読む本ではないなと思った。
脳神経系の病気の、それも稀な症例を集めたものだけれど、似た症状は身近でも聞くので、その辛さ苦しさがこうして文字にされると露わになる。

例えば、体の感覚がなくなって、視覚によるフィードバックに頼らなければ歩くことが困難、という症例があり、この章(からだのないクリスティーナ)を読んだ時、はっとした。
これに近い話を聞いたことがあった。
当時、突然の病を得て治療とリハビリの後でも脚に感覚麻痺が残ったというその人は、目で見て確かめないと歩けないのだと言った。
海の近くを歩きながら、努めて明るい口調で、でもとても辛いに違いないことを打ち明けてくれた時、私はなんと言っただろう。
たぶん、どう答えれば自分の印象を良くできるかばかり考え、通り一遍のことを言ったと思うと恥ずかしい。
心を寄せるだけでよかったのだ、と今になってわかる。