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出入りするたび施錠する扉の内で床に穴が開けられていく音そして音

11月7日(立冬)

袈裟懸けにしたPHSの鳴らない坂道を転げていく

タイラップでまとめられない暴れん坊を四角く運んでいくゲーム

出入りするたび施錠する扉の内で床に穴が開けられていく音そして音

時間より早くかえりましたというメールが人を介して書置きが残されている

おいしい水の左右があったか~い

ポケットの休日出勤は鍵束のじゃらじゃら

11月14日

片手間に聞いたことなき名の花を選ぶ五十鉢と肥料と

冬日和園芸コーナーは滑りやすいホームセンターと獣医

自動扉を開けない液晶テレビ三台が乗る台車の点字ブロックを越えて

途方に暮れて二本手前を右折すれば目的地付近

見覚えのないズボンは裾直しを終えぴったりの長さ

親指の先の柿色は柿剥く時傷つけた柿色である

隈なく人生相談ブース歩くフードコートと繰り返すモール

自転車のテールランプ破損しジャングルジムを超えれば帰りは上り坂ばかり

11月21日

『ドガ ダンス デッサン』より
絹のドレスの下はすっかり神経質なまでに裸で (p.84)

横切る鴉のサンルーフに影ばかり落ちてくる枯葉枯葉

牛釜飯定食のはためく右折待ちの車列

山積みの人一人隠すのにちょうどよいコンテナは真っ黒で千円

横目でズレないようにする透明のナマコのような眼鏡の装着具を

ヘリウムガスの原油価格の高騰を叫ぶ吸い放題

書き留めておくオレンジとチョコの手帳を組み合わせ

11月28日

『劇的ビフォーアフターより』
既に壊れている家

速いフリック入力のホワイトチョコレートフラペチーノを思考する脳がハートの色と数に逡巡した刹那の

トングのカチャカチャとカレーパンと牛すじカレーパンの隣り合う遅い昼

墓の榊を取り換える墓地公園に小学生の娘と戯れる父親の小学校時代ではなく私のそれは

いくつか当てはまる認知症の症状の本がおもしい読み物でいくつか当てはまる

毎週二日の休みが終わればクリスマスが楽しみで自治会の班長が回ってくる来年度のしかたがない

眼鏡職人のそれはタンバリンも上手さふな髪型で

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