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馬鹿は風邪ひかない

新型コロナの第7波が来て、身近でも次々に感染者が出始めた。特に子供たちの周辺では多発していて、いつ感染してもおかしくない状況が続いている。
…と言いつつ、なかなか罹らない。心のどこかで、ウチは大丈夫、と思っている。家族全員、インフルエンザにも罹らないし、基本的に丈夫なのだ。
そんな話を娘たちとしながら「馬鹿は風邪ひかないって言うからねー」なんて軽口をたたいていた。
すると中学生の長女が「馬鹿は風邪ひかないの意味、知ってる?」と聞いてきた。
意味? こんな使い古された言い回しに意味なんてあるの?
娘曰く「馬鹿は自分が風邪をひいたということにも気づかない」ということらしい。恐らくYouTubeから得た雑学だろう。私は文字通り、馬鹿は物理的に風邪をひかない、という意味だと思っていた。ひと昔前の偏見に満ちたブラックユーモアだと。

でも新たな解釈で考えてみると、なかなか深い言葉だ。
私は昔テレビで観たどこかの少数民族のことを思い出した。彼らが暮らす環境は苛酷だ。子供たちは幼いころから働き、女性は10代で母となり、一生家事と育児に明け暮れる。そうしなければコミュニティの暮らしが成り立たないのだ。彼らの村を訪ねたレポーターが、学校にも行かず、穀物か何かを杵で突いている少女に「何をしているときが一番幸せ?」とたずねる。でも何やら話がかみ合わない。というのも、彼らの言語には「幸せ」という言葉がないのだ。
なんて可哀そうな子たち…と言いたくなるが、それは傲慢だ。「幸せ」がないということは「不幸せ」もない。もちろん「快」「不快」はあるだろうが、それに「幸せ」「不幸せ」という言葉を当てないことは、ひょっとすると天才的な発明かもしれない。仏教的な発想のような気もするし、アダムとイブの原罪に通じるところもある。

言葉は概念を作る。
「風邪」という言葉を知らなければ、多少熱っぽかったり喉が痛んだりしても「風邪」とは思わない。つまり「風邪をひかない」ということだ。
なるほどー。

言葉と概念の関係については、翻訳しているときにもよく考える。
ぜひそのことに触れたいのだが、長くなりそうなので次の機会に!

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