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Judgeしないで!

私には中学生の娘がいる。思春期と言われる年頃だが、ありがたいことに学校であったことを毎日よく話してくれる。
本当に、ありがたいことに、なのだが…
ティーンエイジャーの話を聞くのはなかなかの修行だ。
突っ込みどころ満載にも関わらず、向こうは意見やアドバイスを求めていない。下手に意見しようものなら大抵面倒なことになる。犯罪や命に関わらない限り、聞き役に徹するのが原則だ。「そうなんだ」「なるほどね」「へぇー」など、否定せず迎合しすぎない受け答えで乗り切ることにしている。
子供が幼児期のころは視界にモザイクをかけていたものだが、ティーンエイジャーになったら聴覚にモザイクだ。大体輪郭は分かる、くらいがちょうどいい。

しかしたまに、ふとした拍子にモザイクが外れてしまうことがある。
先日も、クラスメートに関する愚痴につい反応してしまった。
「そんなこと言うけど、あなただって○○ちゃんのことジャッジしてるんじゃない?」
当然、娘も即座に言い返した。
「いや、こっちはジャッジしてないけどさ(云々)」

Judge という言葉。
中学でも習う単語ではある。確認してみたところ、New Horizon 3の単語リストには「名詞:審判員」とあった。スポーツでも審判員を「ジャッジ」と呼ぶし、全く意味を推測できない言葉ではないだろう。
ただ、上記のような文脈のjudgeには独特のニュアンスがある。客観的な基準に従って判断するのではなく、独断と偏見に満ちて決めつける、という感じだろうか。
もし自分がアメリカのティーンエイジャーだったらぜひ使ってみたい言葉だ。親とケンカして、泣きながら
Stop judging me!
と叫んでみたい。

そんな魅力的な使い方もあるjudgeという言葉だが、当然、中学ではこちらのニュアンスは習わない。
Meg usually sits in the back of the classroom just judging her classmates.
なんて例文が教科書に載っていたら面白いのに。

不覚にも娘に意見してしまった私だが、娘の素早いjudge返しに新鮮な驚きを覚えていた。習っていないjudgeのニュアンスを直感的に理解したに違いない。
人はこんな風に言葉を覚えていくんだなぁ、と感心してしまった。
厳かな修行の時間に密かな愉しみを見つけた私だった。


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