新規事業は、いったいどのような条件が揃えば進むのか、という考察

『最近やったプロジェクトの泥臭い話が聞きたい。』

noteを始めるにあたり、私なんぞにお話しできる内容に需要はあるのかと思い、周りに聞いてみたところ、一番多かった意見だ。

「こういうのです」と事例まで送られてきたのだが、私のたくさんあった肩書のうち、グループ本体での最後の役職は、「取締役事業会社統括兼国際事業部部長」で、M&Aや新規事業などの責任者かつインサイダー・リスク管理などの責任者と、攻守両用であったことから、社内外問わず、書けることも話せることも非常に少ない。タイトルに「考察」などと書いているが、まろやかに感じていただくことを目的にしたにすぎず、ゴリゴリの実務担当のため、ぶっちゃけ限りなく実体験である。

この記事では、新しい案件の1つを取り上げてみようと思うが、まず前提として、グループ会社では社長も務めるマネジメント職であったにもかかわらず、団体行動やチームマネジメントが極めて苦手なため、新しいことを始める時は、軌道に乗る前から部署を新設されないよう、意図的に一切の予算取りをしていないこと、必ず1人で全部やってみて進めるかどうか判断していることをお断りしておく必要があるだろう。そういった意味で、この記事に、ベンチャーによくある立ち上げメンバーの「友情・努力・勝利」といった少年ジャンプ三原則のような展開は期待しないでいただきたい。

正直なところ、やりたくなかった

入社した時から、役割として責任を負う担当部署の仕事とは別で、思い付いたことを勝手にいろいろやっており、トライアンドエラーの毎日で勝手に多忙なので、命じられるものについては、自分が仕掛けているものと関係がない限り、全く興味がない。

そんな私に、別の担当者が進めていた海外事業について、情報共有をされていたからか、なぜか交代を命じられたのが2016年9月。珍しく、割と具体的に詳細を決められたミッションだったことは知っており、前述のとおり、私が一番興味がない案件、かつ、団体行動が苦手な私にとって前任者からの反感を買う可能性もなきにしもあらずの案件であり、とてつもなく面倒、しかも英語も話せなければ海外旅行も2回しか行ったことがない、とモチベーションも自分史上最低であった。

当時、某国と日本との直行便は1日に2本ほどしかなく、便と便の間も12時間ほどあるのだが、スケジュールを聞いてみると、はじめて某国を訪れる私が先に帰るのではなく、私を置き去りにして同行者(男性)が昼間に先に帰り、私の便は深夜0時を過ぎるものだった。当然、現地のコーディネーターも同行者が帰国すれば去る。「女子なんですけど~」と思いながらも「ちょっとおいしいな」と思い直し、日頃から好き勝手している私は、念のため、自分の安全は自分で守ろうと社外の老若男女の知人を頼り、初めて行く縁もゆかりもない国で3本ほどのアポイントを入れたのである。

え、これおもろくない?

そして、初めて訪れた某国だが、初日、早くも3人での団体行動に疲れた私は、夕食時に「私、この担当できないです。順応性ないんで。」と、全く説得力のない理由をつけてきっぱり言ってしまい、さっそく険悪な雰囲気となる。

翌日の行程も完全にやる気を失ったまま進み、迎えた最終日。この日だけは、私がセットした行程で、日系の大手企業が関与していないローカル企業のみだった。午前中の行程が終わり、同行者が帰国し、現地コーディネーターも去った。この国で仕事をするイメージが全くつかなかったが、とりあえず、行程を消化し、説得力のあるお断りの理由を持って、生きて帰らねばならない。

まず1件目。「あれ、もしかしたら、こんなアプローチもできるかもしれない。」という第六感。

現地のコーディネーターがいなくなったので、移動手段は、それぞれの企業から迎えに来てもらうか、タクシーだけだ。うっかり、Wi-fiを借り忘れ、当時はSIMフリーの携帯でもなかったので、Wi-fiがあるお店やホテルを乗り継ぎ、必要な時に連絡が取れる状況を作り乗り切った。今なら、そんな危険なことは絶対しないけど。

すっかり1人で喫茶店にも入れるようになる。夜ご飯は屋台メシ。最高に美味しいし、最高に楽しい。

あの時感じた可能性は正しかったのか、本当に楽しかったのか検証したい

帰国して思ったことは、見知らぬ国で1人になって生きて帰らねばならないという吊り橋効果的なもので楽しかったのではないか、冷静になって改めて行く必要がある、ということ。

そこで、2か月後の2016年11月に、二度、今度は完全に1人で訪れた。

この時、30日以内入国ビザを取り忘れていたり、深夜便で帰国しようと思ったら前日のチケットだったり、いろんなハプニングが起こったのだが、全て偶然会った人たちにより解決したので、海外で仕事をするイメージがさらに強まった。また、ローカルの友達が一気に増えたことにより、私は、やりたいビジネスモデルを見つけ、帰国後、会社を巻き込んで博打を打つことになる。

思い切って方向転換

もともと、この海外事業は、「具体的に詳細を決められたミッション」があったのだが、ちょうどその頃、ある法改正が成立し、その手法をたくさんの会社が検討していた。でも、私には、いくら勉強して、現場を見ても、その一般的な手法は、するべきものだと思えなかった。

帰国後、私は、「他社に大きく出遅れる可能性が高いが、この手法は取りたくない。きっと近い将来、別の手法が生まれるから、それまで国内で準備させてほしい。」的なことを伝え、様子見案件として、しばらく寝かせることになる。

近い将来は、思ったよりすぐだった

自分で寝かせておきながらも、法整備と他社動向をヒヤヒヤしながら見ていたのだが、2年ほどである法改正が成立、想像していたとおり、別の手法が認められることになった。この手法が正解かは、正直いまだにわからないけど、やってみたいと思える手法だったので、さっそく着手した。

法整備がなかなか進まないので、関係各所への問い合わせの量と書類の作成量、読み込まないといけない書類の量が半端ない。加えて、事業なので、自分で動いて作ってみたスキームの各工程のボリュームも増えてきた。

全工程を1人でやっていたのだが、ちょっときついなー、でもメンバー増やしてマネジメントする余裕ないし…と思っていたところ、たまたま社外の知人からの紹介でお会いした人のスキルとマインドセットがぴったりだったので、うちで働くことを目的に紹介されたわけではなかったけど、なし崩しに会社の見学に来てもらって手伝ってもらうことになった。人件費予算を取ってないのと本人希望もあり、来れるときに好きな時間の週2勤務。それでも、超絶適材適所だったので、ここで一気に、申請関係が完了できた。

今でこそグループ全社1ヶ所に集結しているが、2020年3月までは、東京にあるオフィスは3ヶ所とバラけており、かつ、管理部門は登記上の本社である大阪だったので、兼務が多い私は、固定のオフィスにいることがどんどん減っていき、オフィスにいると「レアキャラ」と言われるくらいで、2019年には完全にオフィスにいることはなくなった。そこで、必要があるたびに、グループ各社で賛同してくれている役員陣に相談し、最寄りのグループ会社に、都度、協力要請をしていたのだが、そこでスポット的にサポートしてくれた人たちの中から、レギュラーメンバーとして関わってくれる人たちが増え始めた。

またボリュームが増え、新たなアクションが必要になってきた。そうすると、課題は、使える予算がないことと、私のチームマネジメント力の低さである。グループの予算を作成しているのは私、チームマネジメントスキルを付けてこなかったのも私なので、全くもって自業自得なのだが、いかんせんヒト・モノ・カネがあるとなかなか良いアイデアが浮かばないのだ。来世は、恵まれた環境でもアイデアが湧き出る体質に生まれたい。

そこで、私は考えた。狙うは「新卒採用予算」である。人事は、優秀な人材を採用したい。新卒総合職の採用数の1割を上限とする特殊な採用枠「キャリア総合職」の面接担当は社長と私だ。ちなみに、一般的な総合職採用においては、刺激が強いから出てくるなと言われていたので、新卒採用には一切関わっておらず、私は内定者懇親会から登場した。

人事に、「キャリア総合職の集客は私も手伝うよ」と恩着せがましく申し出て、マインドセットが合い、かつ、即戦力となるインターン数名に手伝ってもらうことに成功した。このインターンも、もともと、即戦力の方に厳選しているので、好きな時に好きな時間制だ。しかも、ここから2名、新卒として入社してくれた。すでに一緒に働いているので新卒という感覚は一切なかったが。

こうして、アルバイトとインターン、グループ会社からのサポートメンバーを主力に、メイン担当不在で新規事業は立ち上がり、期中にもかかわらず、2019年12月には国際事業部として、イレギュラーに部署化されてしまい、今は、サポートメンバーだった1人もリーダーとして参画してくれており、兼務者含めて5名体制になった。

私が苦手なチームマネジメントも、メンバーのもともとのマインドセットによりカバー、他のメンバーが不足分は補ってくれるという体制が自然とでき、ギリギリながらクリアした。しかしながら私自身に課題が山積みなので、日々精進したい。

で、新規事業は、いったいどのような条件が揃えば進むのか

このプロジェクトに限らず、トライアンドエラーを繰り返す中で、部署化するまで進む案件というのは、結局、連続して強運が発動されるかだと思っている。中2病をこじらせている私だが、強運は、寝ているだけでは発動されず、行動しないと発動されないことだけはわかっている。

ここまで強運が連続発動されてきた案件なので、私たちがやれということなんだろうなと思って、日々全力で活動していた。

最後に、こんなに長文を読んで、結局、技術的なことじゃなくて運かよ、と思われた方も多くいらっしゃると思うので、お詫び申し上げます。

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