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No.37 誕生日の悲劇

彼の機嫌が直るまでという口実で
家に誰かがいるのかを確かめるため
1人寂しくマンションの前で私は待っていた。

2時間くらい経った頃だろうか。

宅配便のお兄さんがやってきた。

チャンスだ!!と思い、
様子を見ながらお兄さんの後についていった。

無事エントランスを通り抜けた私は
平然を装いながら住んでいる部屋の階へ行き、
ガチャっとドアを引いた。

え…、鍵がかかってる!

いつもはドアの鍵なんて一切かけない彼が
ドアにロックをかけている。

いや、絶対何かある!おかしい!そして誰かいる!

と私は確信し、ドア横のインターホンを鳴らした。

少し待っても応答はなかったので、
インターホンを連続で鳴らし
ドアノブをガチャガチャとしつこく引いた。

側から見るとヤバいやつと映っていたかも
しれないが、私にとっては一大事。
その時は周りの目を気にする余裕も何もなかった。

しばらくして、ガチャっと鍵が開き、
バンっと彼が出てきた。
ご丁寧にチェーンもかけている。

少しだけ開いたドア腰に彼は
「近所迷惑やから止めろ」と静かにいった。

そのセリフに怒りを覚えた私は、
「誰か中にいるの?!もしかして女?!」と
気が狂ったように叫んだ。

「お前には関係ない!」と冷たくあしらう彼に
「一緒に住んでるのに最低!!」と
部屋の奥にいる誰かにも聞こえるくらい
大きな声で叫んだ。

世間体などを気にする彼は、
キーキー声で叫ぶ私に痺れを切らしたのか
チェーンを外して外に出てきた。

と同時に、ガッと私の首根っこを掴み
「しつこいねん!!」とキレてきた。

「しつこいってどういうことなん?!
普通に考えておかしいやろ、女入れるとか」と
共有スペースで掴み合いながらワーワーと大声で
揉めている私たち。

怒りなのか悲しみなのか悔しさなのか
この感情は一体なんなのか、
そんなことを気にする余裕もなく
情緒不安定だった。

10分くらい共有スペースで
ワーワーギャーギャーと揉めている隙に、
彼の指示で家にいた誰かは荷物をまとめて
サッと出て行ったらしい。

顔は見ていないので真実はわからないが、
彼が私とその子が鉢合わせる事を
避けるようにしていた点から
女であるだろうと見た。

私はついに痺れを切らし、
同性を解消する決心をした。


もう一悶着あったがなんとか家に入れてもらい、
荷物をまとめて出る準備をした。

その間も彼との討論は続いた。
というよりは、罵倒しあっていたに
近いかもしれない。

お互い悪口を言い合っては殴ったり蹴ったりで
散々だった。

挙げ句の果てには荷物を全部外に放り出されたり
最悪な状況だった。

彼は一貫して自分の非を認めず
自分の意見を全て正当化した。

高校の時からこういう奴だったな、と思いながら
それに対抗する私。

拉致が開かなかった。

なんとか荷物をまとめたが、女の子一人で
一度に持って帰るにはあまりにも量が多い。

これを一気に運ぶなんて無理だ…!

泣きそうになりながら、彼に配車している車まで
手伝ってくれるよう頼んだが
意地悪な彼は答えてくれるはずもない。

渋々一人で大量の荷物を全部運び出し、

なんとか実家に帰ることができた。

帰ってきて気づいたが、
その日は私の誕生日の出来事だった。

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