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No.36 確かめたいこと

彼の営業活動に嫌気が差していた私は
よく彼に当たるようになっていた。

ちょっとした事で彼に突っ掛かり、
口を出さないようにしていた彼のお仕事にまで
だんだん口を挟むようになっていた。

そんなある日のこと、
ひょんな事からいつものように喧嘩が始まり
この家を出て行くか出て行かないかの
討論になった。

疲弊しきっていた私は、
今晩仕事が終わって終電があったら一晩実家に帰る
と言い、仕事場に向かった。

その日は終電ギリギリまで働く予定だったので、
電車に乗って実家まで無事に帰れるかどうかが
微妙な状況ではあったが、
確かめたい事があったのでそう言った。

彼は、わかった。とケータイを触りながら
無愛想に言った。

黙ってラブホテルへ行った事件の後も、
彼には疑わしい行動が幾つもあった。

私が仕事から帰ってくると、
私の荷物だけが綺麗に片付けられていたり
ソファの後ろやクローゼットの中に
ドサっと隠されていたりと
不自然だと思う瞬間が何度かあった。

理由を聞くと、
幹部の人たちが女を家に入れていないか
見回りに来ていた。と言うが、
コロナ禍の休み中にそんな見回りが
実際にあるものなのだろうか。

一度は彼のその言葉を信じたが、
それが2度も3度も続いたので、
私に言えない人を黙って家に
上がらせているんじゃないかと疑っていた。

事前に私が帰らないとわかれば
何かハプニングがあるだろうと
少し期待してあのセリフ(一晩実家に帰る)を
わざと言ったのだ。

仕事中、彼からの連絡は特になかった。

終電に間に合わなかったらそっち帰るからね。と
念を押し、終了時間まで静かに待った。

今日はもう終わりでいいかな?とスタッフの方が
声をかけてくれた時には
ギリギリ終電に間に合う時間だったが
私はわざとそれを見送って、
終電逃したからそっち帰るね。と
彼に連絡を入れた。

何分かして、今日はホテルかどこかに泊まって。と
連絡が入った。

こんな時間に彼女をホテルに追い払うとか
どうかしてるよ、この人。と怒りが込み上げたが
冷静になって

どうして?と聞いた。

それに対し、1人になりたい。と返えしてきた。

出た、拗ねた時によく使う口癖だ!と思いながら

ちゃんと向き合って話がしたいんだけどダメかな?
と聞くと、今日は無理。とだけ返ってきた。

一件普通のやりとりに見えるが
私にはそうとは思わなかった。

私はすぐさま、
ホテルで一晩過ごすのは良いけど
今手持ちが全然ないから部屋に置いてあるお金
取らせてくれない?明日も仕事で着替えたいし。
会ってもなにも言わないようにするから
一瞬だけ中に入れて?と、
自分の立場を精一杯下げて言ってみた。

すると、
それは無理。と返ってきた。

怪しすぎる…!!と思い、
ロビーのインターホンを何回も鳴らしたが
応答はない。

絶対誰かいるよね、と思いながらも
誰か一緒にいるの?と聞いた。

いないよ。と返ってきた。

そんな嘘だと思いつつ彼の言葉を信じるフリして、

わかった。明日も仕事だから朝には帰るね。
何時に帰って来れば機嫌直ってるかな?と聞いた。

わからない。と一言だけきたが、
8時くらいには帰るね。とだけ送った。

ムカつく…!!仕事してる私の気にもなれ!と
思ったが、私がなにを言っても
Noとしか返ってこないので、仕方なく
朝まで待つ事にした。

1人じゃ寂しかったので、近くに住む友達を呼び
ドライブをしながら時間を潰した。

そして朝方6時頃に解散し、
家の前で静かに中に入るチャンスを待った。


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