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一つの夢と子の将来の決断

赤ちゃんをおろす。

そう決めた。

妊娠がわかった時、ほんとうは
この子を産みたい!と思った。

私のお腹の元に生まれてくれた命だし、
何より好きな人との間にできた子供だし
きちんと産んで育てていきたい!と
思っていたが、

現実的にそれは可能なのかとも
考えていた。

17歳の高校生が赤ちゃんを身籠ったまま
赤ちゃんが産まれるまでの間の
生活費や通院費などのお金を十分
稼げるのだろうか。

赤ちゃんが産まれた後の資金はどうするのか。

そして、お金がない家庭に生まれたこの子は
幸せだと感じてくれるのだろうか。

自分の産みたいという感情を通すのは、
子供の幸せを願うならそれは大間違いで、

でもお金がなくても大事に育てれば
幸せだと感じてくれるので正解ではないのか、

そんな思いが終わりのない螺旋階段を
登っているかのように
ぐるぐると頭の中で回っていた。

そして妊娠がわかって5日経った後、
ようやく中絶するという決心をつけた。

金銭面の問題は最重要項目であったが、
決心をつけたのにはもう一つ訳があった。

それを言えば自分本位すぎる考え方で
自己中だと思われても仕方はないが、
自分の夢を諦めたくないという気持ちが
ほんの少しでも心の中にあったからだった。

将来看護師になると中2の時に他界した
祖父と約束した。

その約束を果たせなくなる事が
私はどうしても嫌だった。

それが大好きな祖父からの遺書だったから。

「一つの夢と子供の将来を思っての中絶」

綺麗にまとめるとこうだが
これは綺麗にまとめて良いものだったのか、
今でもずっと考えている。

しっかりと決心がついたその日、
妊娠したことと中絶する決断をしたことを含めて
両親に話した。

両親は怒りと悲しみと私への情けなさで
体中で感情が踊り狂い
制御できない程にまでなっている様に見えた。

話し合いの最中、両親は何回泣いていただろうか。

後日病院に行き、中絶の手続きをした。

彼は私の両親の意向で不在。
後日書類だけを書いてもらい、
もう2度と私と関係を持たないと約束されたが
彼も私もそこはどうにも納得がいかなかった。

だが、彼はNoと言わずにサッと出て行った。

入院の日が来るまでの1週間、
私はお腹の中の小さな命を大事に大事に守り
今までにないくらい愛した。

お別れまでは笑顔でいよう、そう決めたものの
辛くて涙が止まらず毎日毎日涙をこぼした。

妊娠がわかってから泣かない日はなかった。

子供のことを思うと涙が出るし
自分のことを思っても涙が出る。

私は大罪人だ。何度も何度も自分を責めた。

責めては泣き、自分の未熟さに泣き、
両親のことを考えても泣き、子供を思っても泣き、
どれを考えても涙が止まらなかった。

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