見出し画像

No.34 内緒の就職活動

ヒラさんの協力の元、
4社から生活資金として借り入れをし
そこから少し経った春頃、
私は同棲してる彼に黙って就職活動を始めた。

コロナ禍でお客さんの足が遠のき、
お給料が格段に減ったせいで
メンタルが壊れかけていたからだ。

だんだんと夜職をしている自分にも
嫌気が差すようになり、
歩合制のお給料での不安定な生活じゃなく、
正社員になって毎月安定したお給料をもらって
安定した生活を送りたい。と、

そう思うようになったからだ。

彼に内緒でした理由といえば、
昼職を始めることを反対されるのが
目に見えてわかっていたから。

同棲してる際の家賃はというと、
実は彼が全て出してくれていた。

光熱費も彼が支払ってくれていたので
私はというと、食費やその他の生活費だけの資金で
大丈夫だった。

でもそれは、コロナ禍で彼のお店が
臨時休業している間だけ。

緊急事態宣言が明け、
彼の店が通常営業となればまた、
生活費だけではなく交際費として
彼の売り上げの為に貢献しなければならない。

俺の売り上げを支えてくれるのはお前だけだという
彼のそんなセリフにもうんざりしきっていた。

お金を使ってくれそうな客を呼べ。

ネチネチとそんなセリフを
よく吐いていた記憶がある。

彼とその場で別れればよかったのだが、
実家を出て生活する必要はないじゃないか。という
親の反対を押し切ってまで家を飛び出し、
彼と内緒で同棲しているので
今更帰るわけには行かなかったし、

他に長く居座らせてくれる人もいない。


そんな思いで
彼の手から逃れようと必死で受けた会社は、
中途採用で見事採用。

晴れて私は正社員として
脱毛サロンのスタッフとなった。

脱毛サロンのスタッフとして店舗に立つには、
1ヶ月間の研修が必要だった。

その研修で会社の理念や業績、
施術の方法や商品説明、
カウンセリング時の対応など
店舗スタッフとして欠かせない知識や技術を
学び、身につけていくのだが、
その研修が東京の本社で行われるという、
東京の生活に憧れている私にとっては
とても嬉しい出来事だった。

が、しかし、悩ましいことが一つあった。

彼にいつ東京に一ヶ月も行くと伝えよう…。

採用メールが届いた時点では、
5月から東京で一ヶ月の研修を行い、
6月から配属店舗で勤務開始と
記載してあった。

前日に伝えるのは不謹慎だし、
かと言って黙って行くのもなあ…。

悩んだ末、採用が分かって3日後に
彼に伝えると決め伝えた。

私は彼に、
お昼のお仕事を始めること、
正社員と脱毛サロンのスタッフとした働くこと、
そして5月から研修として一ヶ月東京に行くこと
この3つを簡潔に伝えた。

彼はそれを聞き、ふーん。と言った。

納得してくれたのかな。と私が
半ばホッとしていると彼は突然、
俺が反対すると思って就活するの黙ってたん?
と冷淡な口調で言ってきた。

私はギョッとしたが、
そう。とだけ言い、彼の目をじっと見た。

あっそ、そんなもんなんや。と彼は言い残し
ぷいっと部屋を出ていった。

やっぱり賛成なんてしてくれないよね…。

予想通りの反応が返ってきたことに、
ほらねやっぱり。という諦めの気持ちもあったが
どうして認めてくれないんだろう、という
悲しい気持ちにもなった。

5月には同棲している家を一ヶ月間開ける。
彼とも一ヶ月疎遠になって寂しい気もするが、
離れる事で返って楽になるかもしれないし、
東京で良い刺激が受けれるかもしれない。
彼の手から離れて好きに生活できる!

そう言い聞かせて
気持ちを落ち着かせるしかなかった。

どこか楽しみにしていた東京研修だったが、
コロナの影響で緊急事態宣言が
延長になったと同時に、
5月からの私の東京研修は
二ヶ月先の7月に延期になってしまった。

ショックだったが中止にならなくて良かったと
安心していたが、
今思えば、あの時の延期がなければ
あんな事にはならなかったんだろうかと
今でも思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?