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No.26 とんでもないお会計

最近ホストを始めたという彼に連れられて
ホストクラブという世界に足を踏み入れた。

緊張もしていたが、以前から行ってみたい!と
少しばかり興味があったところなので、
心の奥ではドキドキワクワクしていた。

地下にあるガラス張りの扉を開けると、
何人かの男性が迎えてくれた。

身分証を提示して少し待っていると、
席へ案内された。

店内は薄暗く、ソファやテーブルは高級感があり
すごく素敵な雰囲気を醸し出していた。

席へ着くと、システムの説明をされた。

イマイチ理解はできていなかったが、
お店にいればいるほど、セット料金という
席代みたいなものがかかってくるらしい。

今日、私は初回なので、
2時間1000円でドリンクが飲み放題だと
なんとなくそこまでは理解できた。

ザッと説明を終えた後で
彼が隣に来てスッと座った。

少し2人で話した後で、

「仲良い先輩呼んでいい?」

と彼はいった。

うん、と頷くや否や、彼は先輩を呼びに席を外れ
男の人2人を連れてすぐに戻ってきた。

先輩2人がテーブルを挟んで前に座り、
初めまして!とお互いあいさつをして
世間話をちらほらとした後に、
ドリンクもらって良い?と聞いてきた。

何も断る理由がなかったので、飲んでいいよ。と
言い、飲んでもらった。

先輩2人が何杯か飲んだ後、
ありがとうと言って席を外れ、
また別のホストが2〜3人、失礼しますと言って
前に座った。

そしてまた、そのホストにもドリンクをあげ
一緒に飲む。

席についてくれた人全員カッコよかった。

想像していたより、
整形をしているような顔立ちの人は全くいなくて、
ナチュラルで目鼻立ちが整っている人たち
ばかりだった。

学校にいたら絶対に何百人に告られているだろう。
そんな人ばかりがいる印象を受けた。


2時間くらい経った頃だろうか。

シャンパンコールと呼ばれる物が店内に
鳴り響いていた。

どこかの席がシャンパンをおろせば、
その席にホストたちが集まって
コールをするらしい。

初めてみたその光景に、
どこか威圧感などを感じたが、
けれどその反面、華やかそうにも見えた。

へ〜、すごいね!と私が言った一言を
彼は聞き逃さなかった。

やってみる?と言うなり、
彼は安いシャンパンを一本頼んだ。

しばらくするとシャンパンが出てきて
音楽が鳴り、シャンパンコールが始まった。

テーブルの周りにホストたちが集まり、
声を合わせて歌って踊って、面白い光景だった。

けれど目の前でそんなこと、されてる自分が
なんだか恥ずかしくなって、
どこに目を向ければいいのか
キョロキョロしていたと思う。

コールが終わり、シャンパンをみんなで飲んだ後
ホストたちはお礼を言って、
みんなそれぞれに散らばって行った。


しばらくすると、彼がまだいる?と聞いてきたが
気づけばシャンパンコールを聞いてから1時間、
席についてから3時間が経っていた。

2時間で帰る予定だったのに…。

彼に、もうお会計する。と言って、
伝票を見せてもらって驚いた。

え!!9万円?!

そこで気づいた。
ホストのドリンク代は
別途お金がかかるという事を。

あの時、断ればよかった〜。
そう思ったが、最初の説明で
ホストのドリンクは別途料金がかかる、と
そんな事を言っていた覚えもあったので、
何を言おうがもう後の祭りだ。

セット代は、初回料金の2時間1000円と
1時間延長しているのでその延長料、
シャンパン3万円の計5万円くらいで
収まるだろうと思っていたのに、
開けてみるとまさかのその2倍…。

仕方がないと思い、現金を持っていなかったので
カードでお支払いをした。

店内にいた3時間は
初めての経験ばかりで楽しかったが、
20歳で10万円を一気に使うなんて…。

もう二度とできない経験だと言い聞かせ、
彼とお店の前で別れ、駅まで歩いて向かった。

高い経験料を支払ったことを悔やみ、
けれど逆にそれを支払ったことに誇りを感じ、
もう2度とないと決心しながら
また機会があれば行ってもいいかな、と思い、

駅まで歩いている時の感情は何が何だかわからず
もう収集がつかない状況だ。

まあもう2度と行くことはない。
そう思っていたのも束の間、
また彼に呼ばれる事になる。

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