KIRINJIライブを見にビルボード東京へ

ちょこっと前、3月26日年末以来のKIRINJIライブを見に家人とビルボード東京へ行ってきました。僕等が見たのはツアー初演、19時スタートのファーストセット。

堀込兄弟の弟が抜けて兄KIRINJI体制へ。新体制の新たなバンドメンバーで作曲、ヴォーカル、キーボードとして才を発揮して来たコトリンゴさんが昨年末で惜しくも脱退。新たに渡辺シュンスケさんがサポートとして加わった初のライブでした。誰しもが心配していた、コトリンゴさんの抜けた穴は大きいのか、音楽性は変わるのか等々、それがほぼ杞憂ともいえるような最高に素晴しいライブでした。それは堀込高樹さんや渡辺シュンスケさん自身がそしてメンバーみんなが一番自覚的であり声に出さずとも今回のお客さんの多くがそこに関心があることはわかっていたはず。そこを演奏と歌で現在進行形で歩みを進めるKIRINJIの素晴しさをガチッと最高の形で聞かせてくれたのはただただ凄いなぁと。

セットは兄のソロアルバム収録の「冬来たりなば」からスタート。高樹さん曰く今日は春っぽい曲を選んできましたと。ポップでやわらかい曲調の続く前半、進水式やネンネコ等々ゆったりよき味わい。進水式はお披露目のライブで聴いたときは異色過ぎてこれからKIRINJIはどこへ向かうんだろうと心配になる感じでした。しかしそれから早数年、メンバーの手になじみ、ステージの演奏になじみ、自分達の演奏の味をしっかり出すとっても味わい深い曲に成長してきており、ライブで育っていく曲を聴く醍醐味をじっくり味わえて取っても感慨深いものがありました。ゆったり春色の白眉にバカラック=デイヴィッド曲のカバー、April Foolsが。ディオンヌ・ワーウィックではドラマチックなこの曲をスィートにメロウにしっとりと。まるで大御所シンガー、ジョニー・マティスがフィリー詣ででトム・ベルとバカラック集を出したかのような趣。兄がいつも以上にヴォーカリストとして細やかに力強く丹念な歌唱を披露、その成長振りがとってもうれしく家人と聞いててにっこり。

それ以降はヴィヴィッドに割りとアップテンポな曲をどんどこ。昨年末発披露の新曲「50歳になれば」は「時間がない」というタイトルでちょっと普遍的に詩を変えてニューシングルになるとの事。ポップでグルーヴィー、とてもキャッチーで新たなKIRINJIの名曲として今分かち合える幸せをひしひしと。アイドルゲーム、アイドルマスターへの提供曲「レモネード」のセルフカバーはじめ演奏にエレクトロで鮮烈な音触りを織り込んでくるところは今の音をしっかり切り取り未来の風景を立ち上がらせるもの。突き進むポップクリエイターたるKIRINJIの素晴しさがぎゅっと濃縮されててほぅっと感嘆することしきりでした。アンコールはParis Matchのミズノマリさんへの提供曲「春の嵐」をセルフカバー。ファンにも人気の高く珍しい選曲に家人も大喜び。KIRINJIのライブは選曲の妙、常に考え抜かれ選ばれたセットでライブをしてきており、毎回いろいろ変えてくるのはほんとに凄いなぁと。常に変化しお客さんを楽しませる姿勢はえらいなぁと。

今回もまた各メンバーの演奏素晴しく。弓木さんのギターロッキンからデヴィッド・Tのようなスィートネス、ビートリッシュなポップまで多彩、ブギマンでは歌いつつ観客席を練り歩くスペシャルなサービスも。メロウや未来派の音像を豊かにする玄さんのスチールギター、矢野さん、楠さん、千ヶ崎さんのガチッと強固なリズム隊。そして土岐麻子さんでそのすごさを目の当たりにしていた渡辺シュンスケさん。めちゃくちゃ高い技量と味わいのアンサンブルの音楽集団にひょっこりサポートで初ライブ。とんでもないプレッシャーなんではと思うところを百戦錬磨の素晴しいプレイ、かっこいいソロを随所にキメてやっぱこの人はとんでもない人だなぁと。心強い方がサポートについたもんだと、これからKIRINJIに対してどんな距離感で役割を担うのかとっても興味深いところです。

新体制のお披露目というにはあまりにもたくさんの感動を届けてくれたKIRINJI。アルバムも出るし、キリンジからデビュー20周年だし、弟堀込泰行さんも活発に活動してるし、どんな展開が彼らに待ってるのか期待とワクワクで家人と一緒ににっこりにこにこになったひとときでした。

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